25 プロットを比較しよう! 前編
書けないくせにプロットは大好物。だって下手の横好きだもの。
というわけで、今回は『神に遭う路地』編のプロットについて、オリジナル版とリライト版を比較して語りたいと思います。前回、私は「作品のテーマや大筋を変えずにリライトをしました」と書きましたが、プロットについては違います。特に過去パートのプロットでは大きく変えた部分がいくつかありました。
『神に遭う路地』編は枠物語の構成で書かれた作品です。枠部分の現代パートでは、リライトで付け足した要素があるだけで、大筋に変わりはありません。詳細なプロットを書くと違いが出てきますが、ストーリーの構成というよりシーンの流れにかかわる部分なので、説明は省略します!
私は『上野恭介は呪われている』の一読者です。ファンです。『神に遭う路地』編も楽しむための作品として読んでいました。綾香さんが血を流して化け物を追う姿はかっこいいと思いましたし、化け物の正体が神様だった時には驚きました。
……作者の牛捨樹さんには、リライトについて書くにあたり「お気遣い・忖度無く書いていただくと、とてもありがたいです」というお言葉をいただいています。あえて書きましょう。
読了後に、何か腑に落ちないものを感じていました。
細かい部分は確かに面白い。でも全体を通すと何かが腑に落ちない。それが何か分からず、正体を探るために話の筋を書き出して、頭の中を整理していました。
そこで気づいたのです。起承転結の認識が違うことに。
過去パートの大筋を書き出すと以下のようになります。
幼いころから幽霊を見ることができた綾香は、化け物にとりつかれた幼馴染の杏奈を助けようとするが、逆に祟られる。綾香は祓い屋である大塚と出会い、化け物が神様であったことを知り謝罪する。綾香の謝罪は受け入れられ祟りが治まるが、綾香を信じなかった杏奈はふたたび罪を犯して祟り殺されてしまう。
次に、話数を起承転結に振り分けてみます。
起:第345話『アンタ何したの?』
承:第346話『私が死ぬワケねえだろ』/第347話『噂の化け物女』
転:第348話『センセー』/第349話『当たり前の事』
結:第350話『負け無しの祓い屋』/第351話『聞いた事のない音』
違和感の正体は、この「転」にある第349話『当たり前の事』の扱いでした。この話は大筋で言うと「綾香が神様に謝罪をして受け入れられ祟りが治まる」という部分にあたります。
私の認識では、ここが「結」の部分に入ると考えていました。過去パートのメインストーリー(問題)が「綾香が化け物にとりつかれた幼馴染を助ける話」だと思ったからです。問題の解決となる部分は起承転結の「結」に入るものだという認識を持っていました。
この認識の違いで何が引き起こされるのか?
「転」部分が弱く感じ「結」部分でもうひと展開ある感じがする。
これが「何か腑に落ちない」の正体だと気づきました。あくまで私個人の印象です。私の認識がオリジナル版とズレているだけですが、せっかくリライトをするなら、この部分を自分好みに書き直してみたいと思いました。
上記の理由からリライト版では、過去パートのプロットを大きく変えることとなりました。
まずは「結」の部分を比較してみましょう。
結1【オリジナル版】
・杏奈が信じていなかったことを知る
・杏奈は再び化け物に取り憑かれていた
・杏奈と決別する
・大塚の話「味方を信じる」
結1【リライト版】
・神様に心から謝罪する
・神様から赦される
・杏奈の無事を確認する
・再び化け物の姿を見つける
文章にしてしまうと長くなるので、箇条書きにしました。
「結」の1話目、オリジナル版のシーンは2つあります。「綾香と杏奈の会話」シーンと「綾香と大塚の会話」シーンです。
リライト版では「結」の1話目に「綾香が神様に謝罪して赦される」シーンを持ってきて、後半に「綾香が杏奈の無事を確認する」シーンを新たに追加しました。
オリジナル版で「転」にあった部分を、「結」に持ってきたわけです。
結2【オリジナル版】
・再び杏奈(と友達)が祠へ行く
・杏奈が綾香を嫌う理由
・杏奈が神様から罰せられて命を落とす
結2【リライト版】
・化け物に取り憑かれていたのは杏奈だった
・杏奈が信じていなかったことを知る
・杏奈と決別する
・大塚の話「味方を信じる」
・杏奈が神様から罰せられて命を落とす
「結」の2話目、オリジナル版のシーンは「杏奈(と友達)が祠を再訪する」シーンと「杏奈が命を落とす」シーンの2つで構成されています。この話は綾香の視点(一人称)ではなく、杏奈の視点(三人称)で書かれています。
リライト版ではオリジナル版で「結」の1話目にある「綾香と杏奈の会話」シーンと「綾香と大塚の会話」シーン、2話目にある「杏奈が命を落とす」シーンを入れました。
オリジナル版で「転」にあった部分を「結」に持って来たため、杏奈が祠を再訪したシーンは削る必要がありました。
また、リライト版はすべて綾香の視点(一人称)で書きました(その理由は別の回で説明します)。
続いて「転」を見ていきましょう。
「転」も2話で構成されていますが、1話目に大きな違いはありません。オリジナル版とリライト版の両方とも場所が違うだけで「綾香が大塚の話を聞く」シーンです。
転1【オリジナル版】
・大塚の話「祓い屋」
・大塚の話「魂と血の話」
・弟子になると決断する
転1【リライト版】
・大塚の話「化け物女の噂」
・大塚の話「弟子にするため探していた」
・大塚の話「祓い屋」
・大塚の話「魂と血の話」
・弟子になると決断する
・真偽を確かめる
オリジナル版で「承」の2話目にあった項目を、リライト版では「転」に入れました。新たに「真偽を確かめる」場面を足したことで文量が増えてしまいましたが、1話2,500〜3,500文字とかは、単なる目安というやつです。
少々脱線しますが「真偽を確かめる」場面を追加した理由について語らせてください。綾香が大塚の弟子になると決めた後、オリジナル版ではこのような文章があります。
“
この男が信用に足るかは解らない。しかしそんな事は私に関係ない。騙されていたとか手のひらを返されたとか、そういう気に食わない事があったらいつものようにすればいい。私は私の思うように、後悔しないように生きれば良いだけなのだから。
”
(『上野恭介は呪われている』 『神に遭う路地』編 第348話『センセー』より引用)
オリジナル版では綾香の「後悔しない生き方」を強調する文章ですが、私は「この男が信用に足るかは解らない。」という部分に注目しました。この時点で綾香は大塚のことを完全に信用したわけではないのです。
人を信用するのって意外と難しいことですよね? 「信じるとは何か?」をテーマに掲げたこともあり、綾香が盲目的に大塚を信用したわけではなかったことを示したくて入れてみました。
また綾香は別のお話で、実際に自分の血を使って化け物をおびき寄せる場面があります。このころから、そうした作戦をとる兆しがあったら面白そうだとも思いました。
もっともらしく説明いたしましたが……端的に言うと趣味です!
長くなってしまいましたので、今回はこの辺にしておきます。次回は「転」の2話目からご説明します。
では、次回!
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