26 プロットを比較しよう! 後編
前回に引き続き、オリジナル版とリライト版のプロットを比較しながら、変更点についてご説明していきます。
起承転結の「結」からスタートしたプロットの比較は、前回「転」の1話目で終わりました。今回は「転」の2話目から見ていきます。なんで「起」から始めないのかと問われると非常に困るのですが、「結」の認識の違いがプロットの改定理由だったため、このような説明になっております。
言い訳も無事に済んだので「転」の2話目を見ていきましょう。オリジナル版で「転」にあったシーンの半分を、リライト版では「結」に持って来ました。それにより「転」に空きが出来ています。
転2【オリジナル版】
・退院して祠に向かう
・杏奈たちの行いを目の当たりにする
・神様に謝罪する
・神様から赦される
転2【リライト版】
・退院して祠に向かう
・神様に謝罪する
・杏奈たちの行いを知る
・再び神様から怒りを向けられる
オリジナル版とリライト版で変えたのが「恋のおまじないの話」です。杏奈は恋のおまじないをした友人に付き合ったことで、神様の怒りを買います。オリジナル版ではおまじないの話を「承」でしていますが、それをリライト版では「転」に持って来ました。またオリジナル版では杏奈から打ち明けられたのを、リライト版では第三者から教わるように変更しました。
少し脱線しますが、その理由を説明させて下さい。
リライト版で「転」を埋めるのに、当然ですが何か出来事が必要です。最初は大塚から弟子なるよう言われた綾香が、拒否するという展開もアリかと考えていました。一度は拒否したけれど、心変わりをする出来事があって大塚と話をする……。
この展開を検討してみた結果、オリジナル版が鉄壁すぎて太刀打ちできませんでした。どう考えても、綾香はあの場面で弟子になるのを即決します。拒否する理由がありませんでした。
そこで、杏奈が化け物にとりつかれた理由を隠すことにしました。
綾香は化け物(や悪霊)に対して強い嫌悪感を持っていました。街で見かける化け物を問答無用で殴る(退治する)ことからそう窺えます。杏奈が化け物に取り憑かれた理由を、綾香が訊ねなくとも不思議ではありません。また、おまじないの話を後で開示することで「化け物の正体を神様だと知ろうともせずに殴った」という綾香の「過ち」を強調できると考えました。
話を戻します。リライト版では、さらに綾香の謝罪を2回に分け「転」に出来た空きを埋めました。
「空きを埋める」と書くと無理やり展開を伸ばしたように感じるかもしれませんが、理由(言い訳)はあります。
前回で説明した通り、リライト版では大塚の話を聞き終えた綾香に「真偽を確かめる」という行動をとらせました。ここで綾香は大塚の話が真実である、つまり化け物の正体が神様であることを理解しますが、彼女には化け物に対する強い嫌悪があります。大塚から神様だと教えられていても、目の間にいる化け物を神様だと「心から信じる」のは難しいと考えました。
綾香が本物の神様だと信じられるよう、お参りに来たお婆さんと男の子を登場させました。この二人はオリジナル版にも登場していますが、お婆さんには「恋のおまじないの話」を、男の子には「本物の神様であること」を、それぞれ綾香に教えるという大役を担ってもらいました。
「承」も見ていきましょう。
「承」も2話で構成されていますが、1話目に大きな違いはありません。オリジナル版とリライト版どちらも「綾香が杏奈と話す」シーンと「綾香が除霊を試みる」シーンです。ラストで綾香は後に師匠となる大塚に出会い、気を失います。
承1【オリジナル版】
・杏奈から祠で恋のおまじないをした話を聞く
・公園で化け物を殴り祟られる
・大塚と出会う
承1【リライト版】
・化け物に取り憑かれたのは幼馴染の杏奈だった
・公園で化け物を殴り祟られる
・大塚と出会う
オリジナル版では杏奈から綾香に声をかけましたが、リライト版では綾香から杏奈に声をかけました。この理由は長くなるため、次回に回します。
2話目に移りましょう。
承2【オリジナル版】
・病院で目を覚ます
・大塚と再会する
・大塚の話「化け物女の噂」
・大塚の話「弟子にするため探していた」
承2【リライト版】
・綾香のバックストーリー
・病院で目を覚ます
・大塚と再会する
プロットでは分かりにくいですが、オリジナル版の「綾香が大塚と再会する」シーンを、リライト版では大きく変更しました。
オリジナル版で大塚が綾香に会うため病室へ来るのを、リライト版では綾香が大塚を偶然見つけることにしました。
これは私の好みを反映させた結果です。綾香にもっと動いて欲しかったのです。
またオリジナル版で「起」にあった綾香のバックストーリーを、リライト版では短くして「承」の冒頭に入れました。母親とのエピソードに重点を置き、綾香が家族に愛されている様子は、「病院で目を覚ます」シーンに織り込みました。
最後に「起」を見ていきましょう。
起【オリジナル版】
・綾香のバックストーリー
・化け物に取り憑かれた幼馴染の杏奈から相談される
起【リライト版】
・悪霊に取り憑かれた男子生徒を殴り、校長室に呼び出される
・化け物に取り憑かれた女子生徒二人を見つけ、声をかける
オリジナル版は綾香のバックストーリーとなる幼少期のエピソードに重点が置かれています。綾香の性格や、彼女が愛情あふれる家族に囲まれて成長してきたことが分かります。バックストーリーの後、高校一年生になった綾香は幼馴染の杏奈から声をかけられ、彼女の足元に化け物が這い回っているのを目撃します。
リライト版では、バックストーリーを「承」へ回して出来た空きに「悪霊に取り憑かれた男子生徒を殴り、校長室に呼び出される」というエピソードを新しく入れました。これは、綾香の化け物に対する姿勢を印象付けたかったからです。またオリジナル版で杏奈から綾香に声をかけたのを、リライト版で綾香から杏奈に変更したため、綾香が声をかける理由が必要だったこともあります。
「結」の認識の違いから始まったプロットの比較はいかがでしたでしょうか?
文章にすると分かりにくいかもしれませんが、頭の中でパズルをしているみたいで楽しかったです。構成力が身についたかは不明ですが……。
次回はキャラクター編です。綾香が怪異と関わるきっかけの部分について、変更した理由(言い訳)をキャラクターの観点からご説明したいと思います。
では、次回!
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