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「あー!分かる分かる!それならこれとかどう?」


「あり」


「だよねー!」



気がつけば……。


歩夢とエロ漫画談義で盛り上がっていた。



「やっぱり俺は純愛ものがいいかなって」


「ぬるい」


「歩夢は催眠ものが好きなん?」


「これ」


「ふむ……。なるほどね。催眠で身体の自由だけ奪って意識はそのままにする感じね」


「快楽に感情が蝕まれていくのがヨシ」


「アレでしょ?最終的にもう催眠に掛かってないのに自ら進んで男の元を訪れてテンテンテンーーって奴でしょ?」


「全裸土下座させたい」


「ハードかな?」


「額を床に擦り付けさせて頭踏みたい」


「ドSの所業」


「ち〇ちんビンタもしてみたい」


「ついてないでしょ……」


「なら、おっぱいビンタ?」


「それはタダのご褒美」


「ち〇ちんビンタもご褒美」


「ご褒美だったんだ……」


「おっぱいビンタする?」


「してくれるの!?」


「構わぬ。頬を出せ」


「はい!」



というわけで歩夢がおっぱいビンタしてくれるらしい。やったぜ!何か知らんがご褒美だ!



「媚びろ」


「歩夢しゃまぁ……!どうかこの卑しいクソ豚に何卒お情けをッ……!」


「よかろう」



情けなく縋り付いた俺に対し、歩夢はその場で勢いよくくるりと一回転。遠心力で勢いがついた歩夢の大きなおっぱいが俺の頬へとクリンヒットする。



ぶんっ……!


ゴッ!!!



「ぐべっ……!?」



その破壊力たるや。もう普通に破壊力。


例えるならば、それはまるで土砂が詰め込まれている土嚢袋どのうぶくろが衝突して来たかのような衝撃であった。圧倒的質量。


ただただ純粋に……痛かった。


な、なんか……思ってたのと……違、う……。



「気持ちイイ?」


「ぐぅう…………。いや……これ……普通に、痛い……」


「気持ちよくない? 」


「もっと、こう……ふにゃんっ!ってして、むにゅんっ!ってして、柔らかくて気持ちイイのかと思ったのに……。なんかズドンッ!って感じでボクサーにぶん殴られたみたいな感じだった……」


「おっぱいは凶器」


「使い方次第でそれは人を癒す事も出来るし、人を壊す力にもなる……やっぱりおっぱいはスゲェぜ……」


「崇めよ」


「ハハッー!おっぱい様ありがたやありがたや!」



おっぱいは偉大ってハッキリ分かんだね!



「アオちゃん土下座して。頭踏みたい」


「踏んでくれるんですか!?ありがとうございます!」



俺は迷わず土下座した。


女の子が頭踏んでくれるって言うのに土下座しねぇヤツなんか……いねぇよなぁ!



土下座したことによって視界が床になる。もう床しか見えない。後頭部にそこに何かありそうな気配を感じる。おそらくは歩夢の足であろう。今から俺はこの歩夢の足に頭を踏まれてしまう。きっと歩夢の足裏は柔らかくて気持ちいいだろう。グニグニと頭を踏まれたらそれはもう気持ちイイことだろう。



悪寒。



ふっ…………ダンッ!!!



頭のすぐ横で床を叩きつける衝撃音がした。


俺は恐る恐る首を捻って音がした方を見ると歩夢の足が合った。



「外した」



いや……外したじゃなくて……。



「あの……歩夢さん……?」


「なに?」


「さっきから加減を間違えている気がするんですが……それは……」



明らかに今の一撃は俺の頭を悉く破壊する為の一撃に他ならなかったと思う。もし歩夢のストンピングが俺の頭にクリンヒットしていたならば、頭蓋がスイカ割りされたスイカの様に弾けて床に赤い花を咲かせていたであろう一撃だったと思うの。



「人類は痛みを伴わなければ学ばない」


「それが歩夢の愛なんだね……!」


「愛故に」


「ーートゥクンッ!歩夢三角形あゆむさんカッケー……じゃなくて!危ないよ!?今のスタンピングクラッシュ直撃してたら頭パーンするとこだったんだけど!?」


「破壊衝動が抑えられない」


「なにそれ普通に怖い!?どうしたんだよ歩夢……!オマエはそんなヤツじゃない……そんなヤツじゃないだろ……!」


「貴様に我の何が分かる」


「知ってるさ……俺たちずっと一緒に居た幼なじみだろ……!悪しき心に負けるな!いつもの歩夢に戻ってくれよ……!」


「クッアタマガイタイ」


「歩夢オマエ……今もまだ心の中で戦ってるのか……!」


「ニゲロ……ニゲロ……」


「オマエを置いて逃げられるかよ!絶対みんな一緒に帰るんだ……!」


「アオチャン……」


「歩夢ッ……!」



ガシッ!



俺と歩夢はお互いを強く抱き締めあった。決して離れぬようにと。俺たちは何びとたりとて分かつことの出来ない強くて堅い絆で結ばれている。だから大丈夫。



バーンッ!



「話は聞かせてもらったよ!」



そこで部屋の扉を勢いよく開け放って泊が現れた。



「これはどういう状況だい?」



抱き合う俺と歩夢を見て泊は首を傾げた。



んー……それは俺にもよく分からないなぁ……。



何がどうなってるんだっけ?







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