死を共に
いゆう
第1話「死にたい」
「ねぇ、本当にいいの?」
大きな窓。無造作に建ち並ぶビル街から離れ、人知れず
朝学校に登校するため、学生や通勤する人で埋め尽くされたホームで電車を待っていたときだった。
毎日のように死にたいと思っていたが、今日はその思いが特段に強くなっていたらしく、『死にたい』と思わず声に出していた。
死にたい理由は強いていうなら生きているのが辛いから。
学校では何もしていないのに悪口を言われ、放課後一人で自主的に黒板を掃除していたら、いつの間にかクラス委員長も一緒に掃除しだすし、挙げ句の果てに好きですと告白されて断ったらしつこく付きまとってくるし。
ただ平穏に暮らしたいだけなのに何でこうも上手くいかないのだろう。幸せになるのが怖いのに、どうして幸せを見せてくるのだろう。
その言葉を隣で聞いていた真生が、いつもの冷たい目で『いい所あるよ』と言って、手を引いてくれて乗り込んだ電車。
俺たちの住んでる町から終点の街まで着くと、真生は駅構内にあるコンビニでパーティでもするのかと言うほどお菓子を買い込んだ。どうしてそんなにお菓子を買い込んだのか気になったが、どうせ答えてくれないのだから、わざわざ質問しなかった。
そのお菓子が入った袋を手に、電車を乗り換え早一時間。
一時間経った今でも目的地には着いていないらしく真生はずっとスマホをいじっている。
俺たちが住んでいる場所より、もっと山奥を目指して走っている電車。一つ一つ、駅へ止まるたびに人が降り、今ではこの車両には俺と真生の二人だけになってしまった。
「なにが?」
慣れた手つきでスマホの画面をスワイプしていた手を一瞬止め、怒っているような呆れているような分かりにくい、いつもの声でそう答えた。
「なにが? って死ぬこと」
右隣に座って、黙々とスマホをいじっている真生のスマホ画面が目に入った。そこには俺の写真ばかりあったが、どれも撮られた覚えのない写真ばかりで正直気味が悪かった。
「あー別に。
「ふーん」
真生の言った言葉の意味を理解しようとしたが、真生の本当の想いを理解することは出来ない。そう悟った俺は理解しようとするのを辞め、変わり映えしない景色を黙って見た。
真生は変わった。
雰囲気や表情に至るまで、ありとあらゆる所が変わった。勿論、俺との関わりかただって。
真生が変わったのは高校生になってからだ。小学校、中学校と『二人で一つだね』と周りから言われるほど仲がよく、一日のほとんどを真生と過ごしていた。
高校も同じ高校に入学し、めでたく同じクラスとなった。俺は当然、今までと変わらず『二人で一つだね』と言われるほど、仲の良さで、幸せな日々を過ごすものだと思っていた。
だけど真生は違った。学校で徹底的に俺を避け、話しかけても無視してくる。そのくせ登校は絶対一緒にするという意味のわからないことをしてくるから、離れるに離れられない。
だからこんな名前のない関係がダラダラと一年と半年以上続いている。
でも、もう死ぬんだから別にいいか。
変わらない景色を見ていたせいか、段々と瞼が重力に逆らえなくなって、視界が真っ暗闇になった。
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