第10話 第二ラウンド

「先生…??」

なんでこんなところに先生がいるんだ…。


「ちょうど指名手配犯を探しているんだ…お前、なんか知ってるだろ。顔に出ているぞ」


「なんのことですかね。急いでるんで、早くどいてくれますか?」


「俺は教師だが、上から指名手配犯を捕まえるよう指示されているんだ。だから、もしそいつを助けようとしているなら、やめておけ。俺も何もできない。なんなら敵になるぞ…な」


「だから、知らないですって」


「…そうか、わかった。早く行け」


その言葉を聞くと、僕は走り出した。わざと違う方向に走って、ついてきていないことを確認してから、目的地に向かう。


「やっとついた…」


そこは、さっきまで僕がいた家だった。

玄関のドアは閉まっている。中に入り、部屋中を探し始めると、寝室の物入れの戸が少し開いていた。


戸を開けると、中でユキノがぐっすり眠っているのを見つけた。

頬をつねると、ふぎゃ!と言って彼女は目を開けた。


「ん…ろん?」


「ああ、お前を助けに来た」


「思っていたより早かったね」


「僕が来るのを知っていたのか?」


「うん、そういう能力だから」


「そうか。それより、事情を説明してくれないか?」


「うん…」


ユキノは事情を話し始めた。彼女が本土に情報を提供していたのは事実だが、それにはやむを得ない事情があったと言う。

「どういうことだ?」と僕が聞くと、


「お前は俺がこの島で殺戮をするという未来を見たんだよな? ユキノ?」


な?! 先生?!


後ろを振り返ると、軍服姿の先生がいた。

僕の腹には先生の拳が突き刺さっていた。僕は抵抗できず、そのまま壁に吹き飛ばされた。


「今のを受け止めるとは、やはりお前…普通じゃないな」

先生はにやにやしながら言った。


「なんで…ていうか、殺戮ってなんだよ…」


「ああ、そうだな。まずは俺がここにいる理由を説明しよう。最初からすべて仕組まれていたんだよ。ユキノが指名手配犯になったなら、お前が必ず探しに来ると予測できたからな。そして、俺はこのタイミングでここに来た。次に殺戮についてだが、ユキノの方が詳しいだろ? そうだな、ユキノ」


ユキノは頷いた。


「どういうことだ?」

痛む腹を抑えながら僕が聞く。


「先生はこの島に軍を送り、能力者を全員殺すつもりよ。そして、あなたは先生に封印されるの」

ユキノはベッドに入ったまま怯えた声でそう言った。


封印…先生はそんな能力を持っているのか。


「ああ、その通りだ、ユキノ。だが、ろんが封印されるタイミングを予測できなかったのが、お前たちの敗因だな」


その瞬間、僕の体は白い糸のようなもので縛られた。

壊そうとしても、その束はびくともしない。


「僕との約束も、僕と距離を近づけるための嘘だったんですね」


「ああ、お前の家にたまに行ったのも、この時のためだったんだ。何より、俺はお前を確実に封印したかった。俺の能力では、一ヶ月に一回しか封印できないから失敗は許されなかったんだよ」


「…」

もうどうしようもない。この糸は壊せそうにない。


先生がナイフを取り出す。僕は目を閉じた。

もう抜け出す術はない。きっと、外には先生と同じくらい強い能力者が待ち構えているのだろう。だから…もう一度…次こそは成功してみせる。


なんてな。


その瞬間、世界は豹変した。

時間は前へ前へと進み、部屋に先生が入ってきた時の配置に戻る。

僕は先生の背後に回り、波動のようなもので先生を吹き飛ばした。


「さあ、第2ラウンドの始まりだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る