第3話 初めての夜

トリカブト島に着くと、ようやく目隠しが外された。眼帯と重なってできる違和感がなくなり、視界が広がった。周囲は全く見当がつかなかったが、その島は非常に美しかった。深夜にもかかわらず、港は賑わい、奥に見える街も活気に満ちていた。


担当者の顔も見ることができたが、意外にも彼女は可愛らしい少女だった。年齢は高校1年生ぐらいだろうか。じろじろ見ていると、「キモイんで見ないでください」と辛辣な言葉をもらった。話してみると、彼女の名前は「ユキノ」だという。仕事や島の詳細については答えてくれなかったが、雑談はできた。


ユキノに市役所に向かうように言われ、向かい始めた。市役所では能力値の測定があると知っていたので、緊張してしまった。歩いて市役所に着くと、すぐに測定が始まった。しかし、測定は機械の上に立つだけの単純なもので、本当にこれで能力値が測れるのか疑問に思った。


機械の上に立つと、すぐに結果が前のパネルに表示された。結果、僕の能力値はEだった。「うん、まあ、そうだよな」と納得するしかなかった。


僕があまり驚いていない様子を見て、ユキノは「はあ…」とため息をついた。僕はあまりそういうことを気にしないので、気にも留めなかった。ユキノに近くの椅子でしばらく待つように指示された。1時間ほど待たされてから、ユキノが戻ってきた。住居の場所が決まり、身分証明書もできたらしい。身分証明書を渡され、車で住居に送ってもらうことになった。


市役所から車で1時間ほど走ると、目的地に着いた。しかし、そこは市役所があった場所とは異なり、ド田舎な場所だった。家はぼろぼろだったが、一軒家なのはうれしかった。現在の時刻は午前2時を回っている。僕は夜行性なので比較的耐性があるが、ユキノは夜が苦手なようで、うとうとしている。彼女は本来住宅の説明をする予定だったが、家の前でよろよろと歩いていたので、「大丈夫か?寝具の使い方はわかると思うから、今晩はここで寝ていったらどうだ?」と提案してみた。「うん…わかった…むにゃむにゃ…」と返事が聞こえた。ちなみに、僕はユキノに対してため口で話しているが、ユキノは僕に対して緩めの敬語だった。しかし、寝ぼけているのかユキノはため口になっている。


かろうじてユキノと一緒に家に入り、家具から衣類まで全てが揃っているのを確認した。寝室と思われる場所について、寝る準備をする。そして、寝る準備が整い、「もう大丈夫だよ」と言うと、彼女はベッドに飛び込んだ。数秒後、後ろから寝息が聞こえた。彼女は今日一日、こんなにヘトヘトになるまで、僕のために準備してくれたのだろう。申し訳ない気持ちでいっぱいだった。まだこんなに幼いのに…。


自分のベッドを彼女の隣に敷くと、流石に眠気が襲ってきたので、寝ることにしたのだった。

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