第2話 トリカブト島
ある時、「突然変異」により「能力」を持つ高校生たちが現れるようになった。政府はこれらの能力者を軍隊や警察に拘束するよう命じ、隔離された島「トリカブト島」へと送ることにした。この島の名前は、能力者が美しい外見を持ちながらも猛毒を持つことで知られるトリカブトの花に由来している。能力者が能力を手に入れると、容姿が美しく変わるため、この名前がつけられたのだ。
担当者の説明によると、トリカブト島には本土と同等の施設が整っており、毎月の初めにお金が送られてくるため、住民は働く必要がないらしい。しかし、本土と異なる点は、島内に厳格な身分制度が存在し、兵役のようなものがあることだという。まず、島に送られた人々には身分証明書のようなデータが作られる。このデータには、その人の能力の強さを示す「能力値」や個人情報が記されており、これによって身分が決まる。能力値は島に来てから測られ、AからEまでのランクがある。Eランクの人は贅沢な生活ができず、必要最低限の生活を強いられる。一方、Aランクの人は贅沢な生活ができるといった社会制度が存在している。そして、これを管理しているのは市役所だという。次に、軍隊になるための訓練を土日以外毎日受けなければならず、これを受けないとお金はもらえない。そして、一番と言っていいほど本土と異なることは、島には老人がいないということだ。この島では一定の基準になると、本土に戻されるらしく、島にいるのは十代の者ばかりで、大人は教師ぐらいだという。そして、政府は本土での被害を減らすために、本土に残っている能力者を減らすためあらゆる手を尽くしているらしい。
ちなみに、僕の能力が開花したのは高校一年生の頃だった。ある日、予兆もなく能力を使えるようになっていた。このころから僕は左目に眼帯をつけるようになった。能力のことを誰かに言うつもりはなかったが、突然変異で能力を手にした者が拘束されるというニュースを見てからは、言ってはいけないという考えになった。それでも能力はやつらにバレてしまった。なぜだろうか。おそらく、三日前に起きたことが原因だと僕は思う。
三日前、僕は夜に散歩をしていた。その時、屈強な男たち三人が一人の女性に暴力をふるっているのを見てしまった。能力のこともあって見過ごそうと思ったが、僕の正義感がそれを許さなかった。「やめろよ」と言って平和的解決を試みたが、無論ダメだった。彼らが暴力をふるってきたので、うっかり能力を使ってしまった。僕は彼らを難なく倒すことができたが、女性に僕の顔を見られてしまった。今考えると愚かだが、僕は彼女が解放されたのを確認して逃げた。
男たちが僕のことを言ったのか、女性が言ったのかは定かではないが、今となってはどうでもいいだろう。担当者の話を聞き終え、目隠しをされた状態で船でトリカブト島に向かっている最中、僕の口からはため息が止まらなかった。
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