夜桜が散る頃に

真夜中に散りゆく桜

第1話 カウントダウンの開始

薬の匂いが舞っている部屋で僕は目を覚ました。最初に見えるのは見慣れた天井。


そう、ここは病院である。僕はある病気を患っており病院内で生活している。


2年前のある日、体の異変に気がついた僕は万が一を考え病院に行った。その時に僕は病気だと診断された。


最近急に現れた病気らしく、原因不明で致死率99%らしい。…100%じゃないんだ。


誰か生き残った人がいるんだろうか。


初めは自分が死ぬことなんて信じられなかった。今も実感はないけどね。


そうして僕は普通に生活していたんだが、2ヶ月前ほどから入院生活をしている。


急に発作のようなものが起こったからだ。この病気が原因らしい。死ぬのが近いのだろうか。


そんなこんなで何もない病室でただただ進んで行く毎日。


病室にはスマホくらいしか持ち込めず特に趣味もなかった僕は、ハマる物もなく退屈した日々を送っていた。


そんなある日、担当医の吉島さんが病室に入ってきた。定期的に僕の症状を確認するために来てくれる人で親繋がりでの知り合いでもある。


彼は同じ日にちのペースで診断をし、精密検査をする。原因不明の病気であるためその真相解明にために調べられる。それ以外で来てくれたことはほとんどない。


仕方がない、彼はとても優秀な医者でありとても忙しいのだから。なので昨日診察に来たばかりの彼が今日来てくれたことに少し困惑していると、吉島さんは僕の目をしっかりとみてきながら言った。


「…言いづらいんだけど。はっきり言わしてもらう。幸野凉こうのりょうさん、あなたの寿命はあと3ヶ月しかありません。」


「3ヶ月!?」


驚きだ。自分の体のことは自分でわかっているつもりだったけど…残り3ヶ月、か…まだまだ生きれると思ったのに。


「あなたのかかっている病気は死んでしまう2週間前まで驚くほどに進んでいる実感がありません。体は確実に蝕まれているはずなのに。たまに突然、発作が起こるかもしれませんが。それ以外は特に実感することはないでしょう。しかしそこから急激に悪化して、立つこともままならなくなり死に至るでしょう。」


なるほどあと3ヶ月か…


そのことを聞いて少し実感が湧いてきたな。自分が死ぬんだということに。


…死ぬんならやったことないことやりきってから死にたいな。


早くしないと僕は死んでしまう。


だったらどうするか。そんなの決まっている。


今夜僕はこの病院から脱走する。


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