第25話 田山花袋ではない布団
一家全員がコロナに罹るという憂き目を負った我が家でありますが、一応多少の活動くらいはできるようになりました。しかしながらこの病、カラリと良くなることがないというのが非常に厄介な部分でして、みんなどこかしら本調子ではない、といった風体で顔色がすぐれないのです。
時間のかかることではあろうと覚悟しているが、さりとて意識的にでも何か身体を動かしていないと気まで滅入ってしまう。折よく、今日は稀に見る快晴。一家全員で布団干しをすることにした。どこまで効果があるかわからないが、布団や身体をお日さまに当てて消毒を図ろうというのである。病み上がりの身には作業量としてもちょうどいいだろう。
さて、この布団干し。
最近では、田舎の方でもとんと見かけることが無くなった。
古い映像を見ると、天気の良い休日ともなれば団地のベランダに一斉に布団が干し出されるのが風物詩だった時代もあるのだが、今では田舎でさえも布団を人様の眼に入る場所に干すというのは憚られるらしい。
最近のご家庭では布団というのは干さないものなのだろうか??
……干すと気持ちいのにね。
花粉だ、ウイルスだと、目に見えないものの方へと関心が向きがちなご時世ではあるが、たまには外に出て自然に身を晒す時間というのも欲しいものだ。特に私は、外の風を浴びないと生きていけない性質なので、閉じこもっていては体調まで悪くなってしまう。そして、浴びるなら天気の良い日に大自然の中で浴びる風が良い。雨の降っている日も嫌いではないが、やはり天気の良い日に浴びるおひさまの光というのは格別だ。
それと意識して風を感じる時間というのは、現代人にとって失われたものなのかもしれない。大抵は、誰かに『休日は◯◯に行ってきました』という話題を提供するための材料に終止したレジャーと呼ばれる何かであろう。
創作の源泉は、他者の存在を忘れた瞬間に生まれると思っている。
オリジナルという名の物語は、必ず経験という苗床があって芽が出るものだ。
体を動かすことが明日を作るなら、今の私は布団を干す。その事が生きることの指針足り得るのだと信じて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます