第16話 ゲイン

 私は自他ともに認める怖がりである。

 だが、主観と客観ではその恐怖の琴線とも云うべき「怖がるポイント」がだいぶ違うであろうことは自覚している。


 とあるホラー作品を読んだ。


 これまで私は、カクヨム内でことさらホラーを選んで読むことはしなかったため、ホラー免疫というものは出来ていない。そもそも、楽しむために読むのにわざわざ負荷をかける意味がないと思っているからだ。普段の生活でも、それにはことさら気を使う。人混みには行かないようにしているし、最近ようやく分かってきた「関わっちゃいけない奴」には関わらないように力強く距離を取る。


 作品上でも、その傾向ははっきりしておりわざわざ自分で読みにくいと思っているホラーや異世界モノなんかを読もうとも思わないのだが、付き合いのあるユーザーさんの評価に心惹かれて思わず読んでしまうことはある。


 平静だった心の水面にさざ波が立ち始める感じを自覚しながら読み始めるのがとても心地良し。おそらく、ホラー好きの人はこの心の波風を意図的に立ててそのゲインを楽しんでいるのだろうと思う。普段から波立っている人ならより強い波を欲してしまうのも分からなくはない。


 私の場合は努めて鏡のような心境にしているので、ちょっとしたことでも起こると結構しんどい……。だからこそ、そう言うものには近づかないようにしているのだが───


 以前自分で立てた企画に参加していただいた作品群には、ホラーなども結構含まれていた。最初に断っておけばよかったと、読み始めは後悔したほどだった。

 しかし、3作、4作と読み続けていると、だんだんその波に心が慣れてきてしまうものだ。防御本能の強さもあるのかも知れないが、存外私はその「慣れ」が早いように思う。

 そもそも、冒頭にあった私の怖がりの方向性というのが、ヘビが怖いとか、高いところが怖い、あるいはお金にこまるのが怖いといったホラーとは別次元なものに起因する場合が多いため、物語の怖さというものにはあまり動じないのかも知れない。


 そして私は、これは楽しむうえではマイナスなのだが……、ヒントや要素を与えられると際限なく思考が奔るきらいがあるので、ネタバレは厳禁なのだ。

 作品に添えられているタグだけでも、相当なマイナス要素として働いてしまう。あらすじなんか読んだ日にゃ、その作品の魅力を半分ほども奪ってしまったかのようながっかり感を味わうことになる。


 したがって、例えば天川賞応募作品を読むときには、私はその作品がどんな内容なのか一切考えず把握もせず、タイトルと……キャッチコピー的な一文、それだけを見て読み始めるのである。


 必然的に、読み推めている最中で

「あ、これもしかしてホラー……?」

 という、気付きと恐怖を味わうことになる。


 先ほど読んだ作品は、その推薦者によれば「かなりイイ」ホラー味だったらしいのだが、ホラーとわかって読んだせいか私にはやや薄味に感じてしまった。

 その方の紹介文が情熱的で内容に過剰に期待感を持たされてしまったのかも知れない。もちろん、その紹介者を非難するつもりは全く無い。これは、私の目の付け所が悪いだけなのだ。


 どんな作品か、分からないまま手に取り読み始める人は圧倒的に少数派だろう。

 だからこそ、その作品にいざなうきっかけとなるレビューは繊細かつ配慮が行き届いていないといけないのかも知れない。

 カクヨムが、意外なほどレビューが少ないのは、案外この事に気づいている人が多いから、なのかもしれない……と思ったけど、読みより書き優先の人が多いからだよねきっと💦



追記:

言い忘れたが、NTRはこれに含めない。ちゃんと事前に告知してください。

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未完成人~日々の恥は書き捨て 天川 @amakawa808

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