閉じ込め

天川裕司

閉じ込め

タイトル:閉じ込め


あなたは、密室の中に閉じ込められたらどうしますか?

しかもその密室から抜け出れなかったらどうしますか?

しかもその抜け出れない密室に、知らず内に入ったらどうしますか。

現実に戻ることのできない、

虚無の空間にずっと佇み続けたらどうでしょう?


ある日、俺は道端でやってたガレッジセールに珍しさを覚え

そこで売ってた骨董品を買った。

しかしそのとき店主が

「これを買うのはやめた方が良いかも?君によからぬことがあるかもしれない…」

と言ってきて、それを譲らないような姿勢を見せた。


そう言われるとやはり人間は欲望の生き物。

とりあえずそれが欲しくなる。しかも安い。

でも不思議だった。俺は日ごろから

骨董品なんかそんなに興味はなかったのに、

なぜか欲しくなったのだ。


で、それを買ってアパートに戻った瞬間から

俺に不思議なことが起きた。

不思議な空間に舞い込んでしまった、

と言う方が正確だろう。


「あれ?…」

「……」

何度も部屋からドアを開けて外へ出ようとする俺。

でも出たと思ったのに、また部屋の中に居る。

それをトータルして、7回から8回ほど繰り返した。

「なんでだ!?なんでなんだ!」


そんな現象に合えば、人は訳が分からなくなる。

まさにその時の俺の状態がそれで、

俺は今何を見ているのか何を感じているのか

体験しているの経験しているのか?

全くわからなくなった。


その部屋の中に居る俺の姿勢は、

あの骨董品を手に取り眺めていた姿勢。

部屋に戻るとその姿勢に戻らされている。

そんなだから部屋を歩き回る事はおろか、

部屋を出ることなど到底できない。


こんなのを描いたオカルト本や

漫画本を一気に思い出していた。

「俺は初めから何もして居なかった…?」


でも徐々にその環境に慣れていった俺は

その部屋の中だけなら

いろんな事ができるようになっていた。


そして今ハマっているのはゲーム。

架空の世界で生きている俺。

そのゲームはリアルクエストのようなゲームで

現実のいろんなところを冒険しているかのようだ。

その中には恋愛もあったり結婚もあったり、

また喜怒哀楽を沸き立たせてゆく

様々な出来事さえ含まれていた。そんなゲームだ。


でもやはり俺はずっとこの部屋の中に居る。

外に出て、誰かと会い、実際何かをしたわけじゃない。

ずっとこの架空の世界の中だけで物事を終え、

実際、世間で自分が何かしたかのような錯覚を知り

そのまま日々を経過していく。


あの骨董品を買った時から、

この不思議な現象に見舞われた。

でも良くわかった。

この不思議な現象が起きるきっかけは、

何でもよかったんだ。

別に骨董品じゃなくてもよかった。

本でも、食べ物でも飲み物でも、

楽器でも、生活品でも…。


人にとってこんな不思議な現象は、

いつでも軽くやって来るのかもしれない。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=ZJCAne0ijLE

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閉じ込め 天川裕司 @tenkawayuji

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