先読み

天川裕司

先読み

タイトル:先読み


その日、友達がウチに来て、一緒に映画を見ていた。

ビデオ屋で借りてきたDVD。


「これ前から見たかったんだ♪」

佳奈美「あたしも♪見れて良かったね」

「うん♪」

そんな感じで2人で一緒に見たんだ。

部屋を暗くして、雰囲気を出して、

普通のヒューマンドラマだったけど、

そうやって見るのが好きな私たち。


その作品はかなり有名なもので、

テレビでもインターネットでもバンバン宣伝してた。

だからある程度あらすじは知っていて、

イントロ部分は何度も放送してたから

「あーこれあの場面だよねぇ〜」

なんて2人で言い合いながら見てゆく。


でも見ているうちに、

友達がちょっと変な感じになったんだ。


「え?ちょっとどうしたのよ佳奈美」

佳奈美「ううん、何でもない」

「何でもないって、泣いてんじゃないの?」

佳奈美「ううん泣いてない…何でもないって」


変。このストーリーで泣くところなんてなかった。

のに、何かわからないけど泣いてる佳奈美。

不思議に思いながら佳奈美のほうを

私はチラチラ見ていた。


そしてエンドロールが流れる直前、

佳奈美「由美香!これってね、続編も出るんだよ?私たちそれもう見てきたの。この主人公の女の子はね、このあと、途中で出てきたあの警察の人いたでしょ?あの人と結婚するんだよ…」


「………は?」


泣きながらそんなことを言ってくる佳奈美に、

私は奇妙なものを感じた。

「…な、なんでそんなこと…なんで知ってるの?w」

「…それに、なんで泣いてんのよずっと…」


佳奈美「由美香ぁ、あんたその続編、見れないのよね!?可哀想な由美香!わああん!」

「ちょ、ちょっと佳奈美!!?」


それから佳奈美はすっくと立ち上がり、

佳奈美「ごめんね!やっぱり来るんじゃなかったわ!あたし、あんたを励まそうとか思って、ちょっとでも一緒に居たいと思ったから来たんだけど、やっぱりやめとけば…!」

そう言ってすごい勢いで部屋を出て行った。


「……なんのこと言ってんの…。…え?続編?…私には見れない…?…どう言うこと…」


それから少しして、心を整理してみた。

佳奈美が今いる場所は、私からは到達できない場所?

私は佳奈美が住んでる時間に到達できない。

つまり私の時間は過去にある…?


てことは、私はもう過去の人…?

だから続編も見れない?

だからあのとき佳奈美は、

ストーリーの続きを知ってるような素振りを見せた?

それがもし本当だったら…


佳奈美は少し前、スピリチュアルヒーラーをしていて

結構、それ関係の事柄には精通していた。


「………本当なの、それって…?」

なんだか二度と、佳奈美が来ないような気がして寂しくなった。

でも、もしかすると又ここへ来てくれるかもしれない。

思えば私、あれからの記憶が少し薄いことに気がついた。

何がきっかけでそうなったのかはもう思い出したくない。


ただ、今私はこの部屋でずっと誰かを待って居る。

必ず来てくれると信じて居ながら。

それと同時に、私の方から誰かの所に

行く事はできないものか?それも思ったりしながら。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=qj0tWbtZaN0

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先読み 天川裕司 @tenkawayuji

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