第14話 月明りの夜道を歩く
暮れていく中を街灯もない道を歩く。
ついさっき魔導士の精を受けたからか、身体も軽くて気分も上々だった。
このまま一晩中でも歩けるんじゃないかと思うくらいだった。
それほど暗いと感じないのは、空に輝く大きめの二つの月のおかげだった。
星空もきれいだ。
天の川が空を分断するように南北にかかっている。
少し風がひんやりするな。
感覚的には二時間くらい歩いたかな。
まだ疲れた感じはなかったけど、さすがに一晩中歩くのも何かと危険だろう。
狼とかいるだろうし。
狼の事を思い出して、急に怖くなってきた。
人間の男なら、お尻魔法が使えるけど、動物に効くかどうかはまだわからないのだ。
ええと、武器になるものは何かなかったっけ。
魔導士の部屋から盗んできたカバンの中をひっかきまわしてみたら、刃渡り20センチくらいのナイフが一本出てきた。
それを腰のベルトに付けようとしていたら、グルルルという嫌な唸り声が聞こえてきた。
二匹のでかい狼が、目の前に現れる。
ナイフを抜こうとして転んでしまった。膝をぶつけてズキンときた。
やっぱり戦うなんて僕には無理だ。
近くに川があればそこに飛び込むところだけど、あいにく周りは草原だ。
もうダメかなと思ったけど、ダメもとで狼に向かって四つん這いでお尻を向けてみた。
振り返ってみていると、いきなり狼が立ち上がった。
ガガーと声をあげたかと思うと、そいつの顔が僕のお尻に寄ってきた。
ざらざらした長い舌が僕の肛門を舐めあげる。
こいつら、ただの狼じゃなかったみたいだ。二本足で立った状態、それを見ると、ゲームの中に出てきた人狼らしかった。
狼の頭に人間の体、毛むくじゃらなごつい身体。
獣の匂いをまき散らしながら、太い腕で僕の骨盤をがっちりつかんできた。
僕のお尻魔法が効いたみたいだ。
長い舌が、僕のアナルの中にまでめり込んできて、内側まで舐めあげる。
もう一匹の人狼は、前の陰に隠れて僕のお尻が見えなかったのか、きょとんとしている。
僕に食い掛るつもりだったのに、仲間が僕に欲情してしまって、どうしていいかわからなくなったようだ。
成り行きを大人しく見守っている。
その人狼の張りつめた股間の怒張が、僕のお尻をねじ開けてきた。
人狼のそれは、外見の怖さに反してあんまり大きくなかった。
それを僕はお尻の力を緩めたり締めたりして、五回搾り取った。
一匹終わったらもう一匹、こちらも順調に事はすんだ。
なかなか野性味のあるいいお味だったな。
いびきをかいて寝入ってる二匹の横で、僕は立ち上がった。
二匹の人狼の精液をお尻で吸収した僕は、これまでの感覚とはなんだか違うものを感じていた。
これまでも、お尻で受精すると、元気が戻ったり、強力な栄養剤を飲んだような、気分が高揚する感覚を得ていたのだけど、今の感じはそれ以上に、なんだか身体が軽く感じている。
野原を走り回りたい気分だった。これって、狼の気持ちなのかな。
脚にしっかりと力がみなぎっている。
僕は思い切り地面を蹴りだして身体の望み通りに全力疾走してみた。
途端に周囲の地面、草木などがすごいスピードで後方に吹っ飛んでいく。
大型バイクに乗ってフルスロットルにした加速みたいだ。
大型バイク? 多分前世の記憶だろうな。詳細は思い出せないけど、言葉が浮かんできた。
これまで、二時間歩いてきた道のり以上の距離を、ほんの十分くらいで越えた気がした。
だいぶん距離が稼げたな。
こんなスピード出せるのなら狼に襲われるのも平気だ。
簡単に逃げ切れる。
しかし、人狼の精の効果は、だんだん薄れてくるようだった。
次第にスピードが遅くなって、足もだるくなってきた。ここまでか。
足を止めて少し休憩する。喉が渇いたのでバッグから瓶を取り出して一口飲んだ。
一息ついた後、気を取り直してまた道を歩き出す。
今度は本物の狼に出会うかもしれない。
本物の獣にはお尻の魔法も効くかどうかわからない。
人狼に効果があったから、もしかしたら効くのかなと思うけど、狼に犯されるのはちょっとなあ。
獣姦はあんまりだよなあと思ってしまう。
とぼとぼと歩いていると、後方から蹄の音が聞こえてきた。
走ってた時には追い越した覚えはないから、わき道から入ってきたのだろう。
道の脇の草むらに隠れて後方を見ていると、灯りと共に馬車が近づいてくる。
大きめの幌馬車で、馬も二頭立てだった。
馬車の前後でランタンを掲げた兵士が、馬車を守るようにして歩いている。
山賊ではなさそうだ。商人のキャラバンというところか。
隠れてやり過ごすか、一瞬考えたけど、僕は灯りの中に出て行った。
野獣に襲われることに比べたら、人間の方が断然相手にしやすいのだ。
万一の場合はお尻見せて二人が取っ組み合いしているうちに逃げる、そう決めた。
こういう場合、フードの中にふんどししていないノーパン状態は便利だ。
「すいません。一人旅なんですけど、一緒に行ってもいいですか?」
そう言う僕の前に、前後の兵士二人がざざっと飛び出してくる。
ひとりが剣を抜いて、警戒し、もう一人は驚いて尻もちついた僕の後ろをさっと見て回った。
「本当に一人のようだな。こんなところを一人旅なんて危なすぎるだろ。よく今まで襲われなかったな」
周囲を見回していた兵士から、安全のサインを受け取ったのか、目の前の兵士が剣を収めた。
その兵士が僕の手を引いて起こしてくれる。
「こんな可愛い女の子が一人旅するなんて、あきれるな。それとも、見た目とは裏腹に上位魔法の使い手かな?」
剣士ではないようだ、と彼は僕の持ち物を確認して付け加えた。
いや、事情がありまして、などと言ってると、馬車の幌が持ち上がり、中から女の顔が覗いた。
「本当だ。かわいい娘っ子だね。よかったら乗るかい?」
中から顔を出した中年の女は優しい声で言ってくれた。
これはラッキーだ。
僕はお言葉に甘えて馬車に乗り込む。
大きめの馬車の中には、中年女が二人と、奥の方に子供が四人座っていた。
子供たちは、女の子ばかりの様だ。ランタンの光が届かなくて子供たちの顔まではよくわからない。
「どこに行きたいんだい?」
僕を乗せてくれた金髪のおばさんが聞いてくる。
首飾りの宝石がきらめいている。
もう一人のおばさんの身なりも上品な中に豪華な装いで、まるで貴族みたいだった。
「ホワイトホースの町に行きたいんです」
端的に答える。
「ちょうどよかった。私たちもそこに向かってるんだよ。まあ、これでも飲んで体を温めな」
金髪おばさんは、カップに温かいお茶を注いでくれた。
香ばしい紅茶の香りが馬車の中に立ち上る。
遠い道のりだし、ねぐらもないし不安だったけど、何とかなったみたいだな、ほっとしてその紅茶を一口飲む。
甘い味が口の中に広がる。ふうっと息を吐くと、気持ちがふんわりとなって、急に眠くなってきた。
「馬鹿な娘だね」
「飛んで火にいるなんとやらだ」
眠りに落ちる途中、そんな言葉が耳をくすぐっていた。
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