夏休みにただで旅行に行くのは許されますか?

しいず

第1話ホテルの招待券

間もなく夏休みであるけど、夏休みと言えばやはり旅行!

とくにお金持ちキャラの別荘や福引に当たって旅行に行くのは

ラブコメなどの定番中の定番!


 なのでわたしも......と言いたいが、現実は厳しい。

温海は社長令嬢ではあるが、家は広いし、お小遣いは庶民であるわたしよりも

多くは貰っているけど、別荘は所有してないそうだし

何やより普段の生活は質素とは言わないが堅実。

更にお盆は温海も夕もおばあちゃんのところ行くので、結局のところ

3人で宿泊する旅行に行くタイミングがないんだよね。


 だから夢は既に破れているけど、終業式の前日の放課後

珍しく温海がニヤニヤしてわたしに話かけて来た。


「温海さん、ニヤついててちょっとキモいですぞ」

「な、キモいはないでしょ!?」

「冗談だって、でも、温海がそんなにニヤニヤしてるのは珍しいね」

「そんなに珍しい?」

「温海は基本ツンだからね」

「そ、そうなの?」

「自覚はないの?」

「自覚と言うか、元々こういう表情よ」

「それもそうか。で、何でニヤニヤしてるの?」

「なんでっていうか、文乃にいいお知らせを持って来たのよ」

「いい知らせ?」


温海のいい知らせってなんだろう。


「ほら、夕の誕生日のお泊りの前に、系列のホテルの話をしたでしょ」

「そう言えばしたね」

「そのホテルの無料招待券が手に入ったのよ」

「え、本当なの!?」

「しかも、2泊3日4名分ね」

「4名って事は、夕の親戚のお姉さんの分も?」

「そいうことよ」


温海はドヤって感じで表情をして胸を張るけど、今回ばかりはドヤってもいいよ。


「ありがとうございます、温海様!」

「さ、様はよしてよ、皆こっちみてるから!」

「いや、今回ばかりは本気で温海様ですよ」


わたしは本気で温海に手を合わせて拝む。


「ちょっと、拝むのはやめてよね!」

「いや、今回は拝ませてくださいませ」

「ふ、文乃、頼むからやめてよ!」


温海はわたしの反応に困ってるが、これはからかってる訳じゃないから。


「もう~文乃ちゃんは大袈裟だよ~」

「夕さん、大袈裟じゃないですよ、ラブコメの夏休みの定番でお約束である

お金持ちキャラの別荘や福引で旅行を当てるイベントですよ?

それが実際に発生しから、拝みますよ!」

「ははは~そうだね~」


さすがの夕も苦笑いをしてるけど、流石にやばいか。

でも、今回は本気というか心の底から喜んでるよ。


「そ、それだけ喜んでいるって事にするわ」

「ええ、本気ですから」

「それはわかったから。それで、泊まる日だけど、8月の2~4日よ」

「あれ、結構すぐだね」

「お盆は混むし、外国からも来るから夏休み中の取れたのはこの日だけよ」

「そうなんだ」

「あとね~空お姉ちゃんの都合がいい日も~この日だったからね~」


なるほど、夕の親戚のお姉さんの都合もあるからそれに合わせたんだ。

本当は夏休みだから平日がいいけど、夕の親戚のお姉さん......空さんも

一緒でないならないから、仕方がないか。

それに、ただでホテルに泊まれるんだから構わないよ。


「しかし、優待券でなくよく招待券が手に入ったね」

「そ、そこはほら......末っ子の力よ」


つまり、親にねだったんだな。


「なるほどね。でも、温海さんはそう言う事はしないんじゃないですか?」

「ふ、普段はしないけど、文乃のためなんだからね!

あ、あと……来年は受験で、恋......夕と親友で楽しんできなさいって言われたのよ」


テンプレのツンデレかつ、恋人と言いそうになって夕って言いなおす所がいいですな。

確かに来年は受験だし、夏休みを楽しむならば今年だよね。


「そうなんだ、ありがとうね、温海」

「べ、別にいいのわよ......」


温海は顔を赤くして照れるけど、今回ば心からのお礼だよ。


「これで夏休みが楽しみだよ」

「そうね、今年は楽しむわよ」

「水着を買っておいて~よかったね~」

「そうね」

「水着って事は、プールや海があるの?」

「海の近くで温泉があるホテルよ。海水浴場も近いわよ」

「そうなんだ。まさに夏休みだね!」


わたしは嬉しくてニヤニヤしてるが


「文乃、人の事をキモいって言えないぐらいぐらいニヤついてるわよ」


と温海に言われたが、こればかりはにニヤつくぐらい心から喜んだから仕方がないよ。

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