プロローグ⑧
なんだかよくわからない。仮にこもれびの杜の建物の耐震構造が凄まじく優秀にできていたとしても、事務所の中が全く荒れていないことなんてあるのだろうか。
俺は、目の前の光景が信じられなかった。
「今、めちゃくちゃ揺れましたよね?」
「うん、揺れた」
きょとんとしているのは、筒原さんも同じだった。大きな揺れがあったことは間違いないようで、やっぱり俺の気のせいではなかったようだ。
「俺、ちょっと外の様子を見てきます。ばあちゃんを見ててもらえますか?」
「うん、わかった」
事務所が平気なら、外も大丈夫かもしれない。きっとこの近くで、何かが爆発したとか、地割れが起きたとか、それくらいの規模の災難だったのだろう。
俺はそう思って、軽い足取りで事務所の出入口を出た。
「はあっ!?_」
思考が止まる。一旦扉を閉めて、また開ける。さっき見た光景がやっぱり目の前に広がって、俺の頭の中は疑問符でいっぱいになった。
「筒原さん……」
「なあに?」
「ちょっとこっち来てもらっていいっすか……」
ばあちゃんを見てろと言ったり、こっちに来いと言ったり、人遣いの荒いやつだと思われたかもしれない。筒原さんはよっこいしょと言って立ち上がり、ペンギンのような歩き方で俺の元へと歩いてきた。
「あれま!」
筒原さんはそれだけ言うと、事務所の外に出た。「あっ、危ないかもっすよ!」
「これが噂の、異世界転生ってやつ?」
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