世界が色付くまで
与野高校文芸部
世界が色づくまで
生まれた時から、左目が赤で右目が青のオッドアイだった。そんな僕を守るために、親は小さい頃から黒のカラコンをつけさせていた。まるで自分を隠しているようで嫌だった。中学に上がって二年目、幼稚園から一緒だった絆があると信じていた僕は、初めて人前でカラコンを外した。
そこからいつもの生活が狂い始めた。昨日まで一緒に笑い合っていたのに、クラスに存在していないかのように無視されるようになった。たまに向けられる視線は、理解しがたい何かを見ているようで、耐えられずに保健室に通う日々になっていった。それから僕は、自分を隠すように、カラコンで目の色を隠していた。中学三年生の一年間、学校に行かなかった。
高校は無事に入れた。不登校の時、勉強はしっかりやっていたから、平均より少し上くらいの高校に入った。だけど、人との関わり方を忘れた僕は、おそらく三年間1人でいるのだろうと思っていた。外の桜が枯れ落ちた頃、入学式の次の日。
「今日は自己紹介をしたいと思うのですが、時間がないので、隣同士で名前と好きな〇〇、一言を言ってください」
自己紹介……。陰キャな僕には難しいものだ。先生の『始め』の合図も聞かずに隣の人は話し始めた。
「私からいくね! 私は
「えっと、
「じゃあ桜くんだね! あ、私のことは愛ちゃんって呼んでくれていいよー?」
隣はまさかの陽キャだ……。これからの学校生活が一気に不安になる。いやでも、僕みたいな陰キャにはきっと目もくれないから、大丈夫……。
そう、思っていたのに、雨宮さんは授業中寝ているから起こせって言われるし、珍しく起きてると思ったら、文房具類を借りてくる。……だけどそのおかげか、人との関わり方を少しずつ思い出してる気がする。雨宮さんは案の定、クラスの中心にいる人だったから、そこまで多くは話せないけど。
雨が降り、蛙が鳴く時期を超え、夏が始まろうとしている。
「来週花火大会がありまーす! 是非お越しくださーい!」
学校へ向かうため、駅を歩いていた僕に一枚のチラシが差し出される。花火なんて、ここ何年も見ていない。チラシを仕舞うためにわざわざかばんを下すのは面倒だったので、手に持ちながら学校への道を歩く。
「あ、それ私も貰った! 桜くん花火好きなの?」
教室に着いたとき、雨宮さんから話しかけられた。学校の最寄りの駅で配ってたので、この学校の生徒は大体貰ってるだろう……。
「花火は、少し、好きかな」
正直に言うと、そこまで好きじゃない。あの色が複数混ざった花は、どうしたって自分を重ねてしまい、好きにはなれなかった。だけど、こんな雰囲気の中、嫌い、なんて言うほど空気が読めない人間じゃない。
「なら、行こうよ! ここ!」
「え…………」
まさかの提案に思わず固まる。僕が、雨宮さんと……? 花火に対していい反応を示した手前、今更嫌いだから行けない、とか言えないし……。ここで普通に断っても、雨宮さんのことが嫌いみたいに映るんじゃ……。そうなると僕に残された選択肢は一つしかない。
「早く、来すぎた……」
花火大会当日。約束の二時間も前に来てしまっていた。どこかで時間を潰さなきゃな――
「あ! 桜くん!」
「あ、雨宮さん!?」
こちらに手を振りながらやってくる雨宮さんは、お団子の髪形に黄色いユリが描かれた浴衣を纏っている。いつもより大人びた雰囲気にドキドキしてしまう。そういえば、雨宮さんは大分整った顔をしてるよな……。モデルって言われても納得がいくくらい。
「花火はまだ始まらないから、屋台回ろうよ!」
そう言うや否や僕の腕を掴んで走り出す。人にぶつかりそうになってやっと歩き出した。雨宮さんは屋台で結構食べていた。焼きそばとかケバブとか、じゃがバターとか……。ほんとに色々食べてるな……。僕はというと、いちご飴と綿あめを食べていた。
「もうこんな時間! 桜くん、花火間に合わなくなっちゃう!」
花火までまだ時間があるのに、僕の腕を引っ張って走り出す。今度は人にぶつからなかったけど、心臓に悪いのでやめてほしい……。人気がない場所まで来たところで腕を離してもらった。
「ここは……?」
「ここはね、花火がきれいに見える穴場なんだって! ネットで見つけたの!」
彼女がはにかんだ時、ちょうど花火が始まった。一番目に打ち上げられた花火は、雨宮さんの背景になって輝いた。ネオンのピンクは、今日の大人っぽい雨宮さんの普段のかわいい所を引き出しているようだった。
「きれい…………」
思わず口からこぼれた言葉に気づき、咄嗟に口を塞いだ。
穴場と紹介されたここは、普通に見たらある程度は見えるが、場所によっては枝に被って見えなくなってしまう。まあでも、逆に良かったのかもしれない。枝で見えないようにできるから。赤と青が混ざった花火が夜空一面に広がる。木々の隙間から見えた、汚い色。
「わたし、花火好きだな。いろんな色が混ざってて、きれいで」
何気ない言葉が、僕の心に刺さった。僕が汚いと思った物を、きれいと言った。もしかしたら、好きになれるかもしれない。もしかしたら……汚く、ないのかもしれない。
* * *
幼い頃見えていたものが突然見えなくなるのは、どんな気持ちか想像できるのか。物心ついた時、突然色が見えなくなった。それからは、色が見えていないことを隠す生活が続いていた。友達も親も知らない、私だけの秘密。
「紗良ー! 大変! 桜くんに恋しちゃったかも……!」
急に話しかけられたからか、その内容が衝撃だったのか、紗良は目をまん丸に開いて、これから放つ言葉のために深く息を吸った。
「まじで!? 告ってきた男子全員に謝ってたあの愛が!? どした、変なものでも食べた?」
「失礼な! 私だって恋することくらいありますー!」
でも、本当に自分でもびっくりした。今まで恋をしたことがなかったから、どうすればいいのかわからない。そして、鎌谷くんの色だけが見えるようになったことが、何より驚きだった。
学校の最寄りの駅から日課のように学校を目指す。学校に少し近づいたときにふと手元を見たら、見知らぬチラシがあった。記憶を辿っていくと確かに駅前で何かをもらった気がする。チラシをよく見ると花火大会に関するものだった。色の見えない私には関係ないなと四つ折りにして、肩に提げてるトートバックにそっと仕舞った。
教室について一番に目に入るのは隣の席の鎌谷くん。マッシュみたいな黒髪に長い前髪から見える黒目。制服特有の黒、と全体的に黒いけど、私には教室の中の誰よりも鮮やかに見えていた。鎌谷くんの手の中にある、見覚えのあるチラシを見て、一つの可能性が思い浮かんだ。それと同時に鎌谷くんに話しかけていた。
「あ、それ私も貰った! 桜くん花火好きなの?」
なるべく自然に、キャラを崩さずに近づく。こんな聞かれ方をしたら誰だって答えは一つだけ。
「花火は……少し、好きかな」
「なら行こうよ! ここ!」
鎌谷くんへの恋心を自覚した途端に鎌谷くんの色が見えるようになった。もしかしたら、鎌谷くんがこの現状をどうにかしてくれるかもしれない。そのためにも花火大会はチャンスだと思った。
花火大会当日。鎌谷くんとほぼ同時くらいで集合場所に着いた。そこからは時間つぶしに屋台を見て回って、時間になる少し前に、事前に調べていた場所に鎌谷くんを引っ張る。そこはネットで少しだけ見づらいと言われている場所。もし見えなかったときに言い訳できるようにとこの場所を調べた。
「ここは……?」
「ここはね、花火がきれいに見える穴場なんだって! ネットで見つけたの!」
不思議そうに問いかける鎌谷くんに精一杯の笑顔を向ける。その時、後ろから銃声に似た音が聞こえた。後ろに目を向けると、隙間なくネオンの光が漂っている。光でカーネーションの形を表しているようだった。次々と花火が打ち上げられて、夜空は色でいっぱいになった。
「きれい…………」
鎌谷くんの言葉が私の感情を表しているように思えた。私の脳は目から入ってくる花火の情報でいっぱいだ。二色の花火が夜に映った。
「私、花火好きだな。いろんな色が混ざってて、きれいで」
こんなに綺麗なものを今まで見れなかったことなどお構い無しに感動に飲まれていった。
「それじゃあ、男女2人ずつの修学旅行の班を作ってください」
実行委員の合図で教室は一気に騒がしくなる。この学校は一年生から修学旅行に行って、友情を深めようとしているらしい。場所も京都と奈良なので去年行ったところとまったく同じ。無難に紗良とかな……
「ねぇ愛ー。一緒の班になろ。あ、あと燈真も入れて」
幼少期からずっと一緒だった、幼馴染の
「いいけど、条件がある! もう1人の男子枠を桜くんにすること!」
「えっ、そんなことでいいの? むしろ誘おうと思ってたし、ちょうどいいじゃん!」
紗良が悪い顔してる……。これはこの前のこと覚えてるなぁ……。
「鎌谷くんもいいよね?!」
紗良の勢いに押されてか、鎌谷くんも首を縦に振る。燈真に鎌谷くんを誘うことも伝えてあったみたいなので、提出しないといけないプリントに必要事項を書いて提出する。鎌谷くんも来るなら楽しみだな。
1日目はほとんど移動に使い、2日目は奈良の自由行動、3日目は京都の自由行動、4日目はクラスごとの全体移動の予定だ。
2日目の自由行動で、紗良と燈真は2人で行動をすると言って、私と鎌谷くんが残されてしまった。
「行っちゃったね。私達も行こうか」
「う、うん。行こう」
事前に鎌谷くんと行く先を決めていたのでそこに向かう。そこには大きなお寺と奈良の名物の鹿がいっぱいいるところで、お寺を堪能した後、鹿におせんべいを上げた。鎌谷くんの体力的に限界が近かったみたいで、待ち合わせの時間まで待ち合わせ場所の近くの喫茶店でゆっくりお茶をしていた。しばらくしたら紗良たちが帰ってきたので、そのまま合流して宿に帰る。帰ってる途中で悪い顔の紗良に
「鎌谷くんとどこに行ったのー? いい雰囲気になったー?」
と聞かれたことには無視しておいた。
お風呂に向かう道中、化粧水を忘れていることに気づき、取りに戻っていたためみんなより遅れて風呂場へ向かっていた。その時、鎌谷くんが風呂場の逆の方へ向かっているのを見つけた。普段とは違う白黒の部屋着にほんの少しだけ乱れた黒髪。真っ黒な目。
「あ、桜くーん! 偶然だね! お風呂はあっちだよ?」
「あ、雨宮さん……!」
怯えた顔をして私の名前を呼ぶ鎌谷くんに何故か嫌な予感がする。
「え、えっと、忘れ物を、しちゃって」
「…………そっか。あ、そうだ。明日はどこに行く? どうせまた紗良達は行っちゃうだろうからさ」
怯えた顔から疑念を抱くような顔に変わる。鎌谷くんの表情の変化がわからない。
「明日……。何か神社とか調べておくよ」
「分かった。私も調べとくね!」
鎌谷くんとの間に初めて間が空いた。何か言ってはいけないことを言ってしまったのか。
「雨宮さん……。その、変なことを聞くかもしれないけど今の僕どうかな? 目に茶色のカラコンを入れてそれに合わせて新しいの買ったんだけど、似合ってる、かな?」
色に関する質問はなるべく避けないといけない。バレないように。話を合わせて。
「カラコンつけてたんだね! 茶色だから少し気づきにくかったよー! でも似合ってる!」
心に少しの不安を抱えながら慎重に答える。この返事がなんだか大事なものだと感じながら。
3日目の自由行動。相変わらず紗良達は2人で行動するらしい。
「桜くん、何か調べてきた?」
「えっと、この辺は色々神社があるみたいだから神社巡り、とかかな」
同じことを思っていたので、2人で神社巡りをしていた。食べ歩きができるところもあったので、色々と食べながら行動していた。お昼も一緒に食べて、ベンチに座って少し休憩してた時、鎌谷くんの様子が少しおかしいことに気づいた。
「……桜くん、どうしたの? 体調悪いとか?」
「…………もしかして、雨宮さんは色が、分からなかったりする……?」
「え…………」
* * *
「それじゃあ、男女2人ずつの修学旅行の班を作ってください」
実行委員がそう言うと、待ってましたとばかりに周りが騒がしくなる。実の所、去年は修学旅行に行けていない。だから、どんなものか全く分からない。唯一僕と話してくれている雨宮さんも、今は彩葉さんと一緒に話している。
「鎌谷、同じ班になれよ」
唐突に後ろの席の稀賀くんに誘われた。今まで一度も話したことないはずなのに。それと同時に、雨宮さんと話していたはずの彩葉さんに
「鎌谷くんもいいよね?!」
と言われたので勢いに任せて頷いてしまった。
2日目の自由行動で稀賀くんと彩葉さんは別行動をとるそうで、雨宮さんと2人きりになってしまった。
「行っちゃったね。私達も行こうか」
「う、うん。行こう」
事前に決めていた場所に訪れた。その場所だけで僕の体力が限界を迎え、喫茶店で時間まで話していた。2人と合流した後は稀賀くんと一緒に宿に向かった。
お風呂でカラコンをつけたくない。だから皆とは別のお風呂に入ることになっていた。しかし、入ろうとした時に新しいカラコンを持ってきてないことに気づいた。幸いにもまだ皆はお風呂に入っているはず。そう思って部屋に取りに戻っていた。その途中で誰かに声をかけられた。
「あ、桜くーん! 偶然だね! お風呂はあっちだよ?」
「あ、雨宮さん……!」
バレた。誰にもバレてはいけない秘密が。だが、僕の目を見ても雨宮さんは顔色をまったく変えなかった。
「え、えっと、忘れ物を、しちゃって」
「…………そっか。あ、そうだ。明日はどこに行く? どうせまた紗良達は行っちゃうだろうからさ」
たわいもない会話。雨宮さんは気づいてない……?
「明日……。何か神社とか調べておくよ」
「分かった。私も調べとくね!」
ここで聞いとかないと雨宮さんの事が何も知らないままだと感じてしまった。
「雨宮さん……。その、変なことを聞くかもしれないけど今の僕どうかな? 目に茶色のカラコンを入れてそれに合わせて新しいの買ったんだけど、似合ってる、かな?」
案の定、聞いた一瞬だけ、いつもの雨宮さんでは無いような気がした。もしかしたら色が分からないとか……?
「カラコンつけてたんだね! 茶色だから少し気づきにくかったよー! でも似合ってる!」
僕は今カラコンをつけてないし、そもそも茶色のカラコンではない。やっぱり、雨宮さんは……。
悶々とした気持ちで部屋に戻り、目当てのものを持って行こうとした時、外から会話が聞こえた。同室の男子たちの声。もう帰ってきたのだと悟った。急いでカラコンを付け直す。
「鎌谷、もう戻ってた、のか……」
稀賀くんに、見られた。だとしてもカラコンは付けなければ。
「おいお前らまだ待てよ」
「え、なんでだよ燈真。中に誰かいるのか?」
「まあいいから」
意外にも稀賀くんが皆の足を止めてくれたみたいだ。今のうちにぱぱっとカラコンを付け直す。
「ごめんね。終わったよ」
「お前、まだ風呂入ってねぇのか。さっさと行ってこい」
そういえばそうだった。もう一度稀賀くんに感謝を伝えて部屋を飛び出した。今日は濃い一日だったな……。
3日目の自由行動。稀賀くん達はまた2人で行動するので、雨宮さんと2人きりになった。昨日のことがあったから少し気まずい……。
2人で神社巡りをして、食べ歩きをして、と昨日あんなことがあったとは思えなかった。お昼も一緒に食べて、ベンチに座って少し休憩してた時、
「……桜くん、どうしたの? 体調悪いとか?」
と、聞かれてしまった。僕が色々と考え事していたからだろう。もう思い切って話してみることにした。
「…………もしかして、雨宮さんは色が、分からなかったりする……?」
「え…………」
僕の言葉を肯定するかのような声。もう全て、打ち明けてしまおう。
「昨日会った時にね、僕カラコンつけてなかったんだ。そもそも僕はオッドアイなんだ。だから、色に触れないことが少しおかしく感じちゃってさ」
「そっか。そうだったんだ」
「その……。慰めになるかも分からないけどさ、僕は気にしないよ。雨宮さんは雨宮さんだからね」
そう言った時の彼女は今まで見たことが無い顔で笑っていた。
4日目の全体移動は僕と雨宮さんはほとんど話せなかった。稀賀くんと彩葉さんがすごく心配しているみたいだったから、申し訳ないことをしたなと思った。そして、僕の初めての修学旅行はこれで幕を閉じた。
修学旅行から帰ってきてもまだあの夜に起こったことが現実に思えなかった。色々と考えていたら、スマホの通知が鳴った。稀賀くんからだ。
『お前、普段カラコンしてんの? もうやめてみたら?』
予想外のメッセージだった。あの日の記憶が呼び起こされる。
『なんか言われたなら俺が言い返すし』
味方が出来たのは初めてだった。確かにこのままこんな生活を続けていたら、もう普通に戻れない気がする……。そう、決心をした。
次の日、カラコンを付けずに登校していた。歩いている途中でも色々な人の視線が酷く痛かったけど、それでもここで引き返しちゃいけないと、自分を奮起して教室に入った。皆びっくりしていたが、中学の時とは違い、僕を遠ざけようとする人はいなかった。思わず泣きそうになる。そして、僕がこうなれたのも雨宮さん達のおかげだ。本当に感謝してもしきれない。雨宮さんに伝えたいことがあると放課後の教室に残って貰うことになった。
* * *
鎌谷くんが全てを話してくれたあの日、今まで鎌谷くんに関するものしか見えなかったのに、全ての色が見えるようになった。目の色だけ分からなかったのは未だに謎だけど、段々と色が見えるようになってきているのはいい事だと思う。
ある日の朝、教室は騒然としていた。紗良に話を聞くと、鎌谷くんの目が青と赤になっているそうだ。私は鎌谷くんのことを見ても目は黒のまま。
鎌谷くんの目の色だけが見えないまま時が経ち、進級が近づいていた。このクラスでいるのもあと少し。鎌谷くんに放課後の教室に来て欲しいと言われて待っていた。春と言えるような暖かい日差しの入る教室と、蕾から花びらが見えている桜。
「あ、雨宮さん……!」
そんなことを思っていたら鎌谷くんが教室に入ってきた。
「えっと、僕、中学の時とか目のことでいじめにあってたりして、塞ぎ込んでたんだけど……雨宮さんの持ち前の明るさに、救わ……れてたんだ……」
急に褒められてなんだかムズムズする。
「それで、いつの間にか雨宮さんに対する気持ちが変わっていって……その……」
鎌谷くんは言いづらそうに目を逸らしている。告白の前置きにしか聞こえないことを言っていたのに。
「……もう、鎌谷くんは格好がつかないなぁ……。付き合って、でしょ?」
「……! う、うん……! こんな僕でいいなら……!」
桜の花が咲き乱れて風に揺れる。風に乗って花びらが舞い散り一瞬だけ私の視界を支配した。花びらが無くなった時、鎌谷くんの目の色が、見えた。ガーネットとラピスラズリをはめ込んだような綺麗な色。
私の世界は初めて色付いたのだった。
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