第31話 ラーメン屋のチキンライスは美味いのか?


「ラーメン屋のチキンライスねえ……美味しいのかしら」



 こんばんは、ヘンリエールです。

今日はラーメン屋さんでチキンライスを出しているというお店の情報を聞いて、ちょっと夜更かしして食べに出かけています。

実は今日のお昼に同期のメロとお話ししてて……



 ―― ――



「えっラーメン屋でチキンライス? チャーハンじゃなくて?」



「そうそう、珍しいよね~」



「そうね……でもなんか、普通に美味しそう」



「美味しそうだよね~。というわけでヘンリエール、ちょっと食べてきて感想聞かせてよ~」



「いや、メロが自分で行けばいいじゃない」



「なんかお店やってるのが夜中らしくって~メロってば朝型じゃん? それに夜更かしはお肌に悪いからさ~」



「だからといってわたしのお肌を犠牲にするな」



 ―― ――



 というわけで、結局わたし一人で食べに行くことに。

別に1日くらい夜更かししたって大丈夫よ。

エルフ族の人生は30万日以上もあるのだから。



「えーと、メロに貰った地図だと……この辺かな。あっ、あー……あそこか」



 〝どらきゅらぁめん〟



「いや普通に来たことある店じゃないの」



 なんかこの辺り見覚えあったのよね。

前に来た時も夜中で灯りがほとんどなかったからなんとなく似てる通りなのかな? って思ってたんだけど。



「はあ……よし、貧血にならないようにチャーシュー増しとほうれん草トッピングでいこう」



 ここはヴァンパイア族のククルという女の子が店主のラーメン屋で、お金を払う代わりに彼女に血液を吸われるというヴァンパイアならでは(?)の料金形態をしている。

トマトベースの珍しいラーメンだけど、正直貧血を覚悟してまで食べる価値はあると思う。



 ギィ……



「いらっしゃいませ……って、あらヘンリエールじゃない。ようこそ」



「こんばんはククル」



「なあに? またわらわに血を吸われたくなっちゃった?」



「普通にラーメン食べに来たのよ。あ、今日はチキンライスが目的か」



 カウンターに腰かけてメニュー表を確認する。

あ、本当にあった。チキンライス。



「うまトマラーメンのチャーシューダブル、ほうれん草トッピング。あとハーフチキンライス」



「はあい。それにしてもあなた、小食が多いエルフ族のわりにはかなりガッツリいくわね」



「う……気にしていることを」



 世間的なエルフ族のイメージは、肉を食べず、菜食を好み、そして小食。

それはまあ大体合っていて、エルフ族の国『タプナード』で暮らしているエルフは基本的にそんな感じの人が多い。



「イザヨイにきたら美味しいものがいっぱいあって、小食のままではいられなくなっちゃったのよ」



「わらわはいっぱい食べるあなたのこと、好きよ」



「はいはい、ありがとう」



 そういえば、ひとつ気になっていたことを聞いてみる。



「ねえククル。妖精族みたいな小型のヒューマンが来たときはお会計どうしてるの? 前のわたしのときみたいに400も500も吸ったら普通に死んじゃうでしょ」



「ああ、それなら普通に現金で支払ってもらってるわよ」



「……えっ?」



「というかほとんどのお客さんが現金払いね。わらわだってそんなに飲めないし」



 なにそれ。衝撃の事実なんだけど。



「じゃ、じゃあなんでわたしは血液払いだったの……?」



「それはねえ……ヘンリエールが美味しそうだったから♡」



「ええ……」



「はい、うまトマラーメンチャーシューダブルとほうれん草トッピング、ハーフチキンライスお待ちどうさま。あ、この味玉はサービスね。いっぱい食べて美味しい血を作るのよ」



「……なんだかこれから食べられる畜産動物の気分だわ」



 それはそれとして、ラーメンもチキンライスも美味しそうだ。



「森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……ふー、ふー、ちゅるるっ」



 ……うん、相変わらずここのうまトマらーめんは箸が止まらなくなるほど美味しいわ。

あっそうそう、最近ようやくお箸がちゃんと使えるようになってきたの。褒めてほしい。



「チキンライスのお味は……はぐ」



 …………。



「……!! うっま! なにこれ、めちゃめちゃ美味しいんだけど!」



「どうかしら。うまトマラーメンのスープを入れてリゾット風にしても美味しいわよ」



 ククルに言われた通り、レンゲでスープを掬って一緒に食べる。

なるほど、トマトベースのラーメンを売りにしている店だけあって、チキンライスもそれに合うように良く考えて作られている。



「卓上に粉チーズあるでしょ? それ入れても美味しいわよ」



「ククル、天才だわ」



 わたしは夢中になってうまトマラーメンとチキンライスを食べ進めた。完飲完食。



 ―― ――



「ふう……美味しかった。それで、お会計は……」



「現金なら1350エル、血液なら前と一緒の400mLで良いわよ」



「えっ!? うーん…………じゃ、じゃあ、400mLで」



「うふふ、はーい……それじゃあいただきまーす」



「あっちょっと、待って……や、優しくっ」



 かぷっ。




 

 …………。





 ……………………。





 命がけの節約ライフハック、爆誕。





 【どらきゅらぁめん/うまトマラーメン・チャーシューダブルほうれん草トッピング、ハーフチキンライス】



 ・お店:相変わらずのラーメン屋っぽくないオシャレさ。店員がちょっと深夜のテンションになりがち。



 ・値段:ある意味激安。普通に払ってもそんな高くない。



 ・料理:チキンライスめちゃめちゃ美味かった。普通にハーフじゃなくて大盛りでもいける。



 ヘンリエール的総合評価:86点。

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