第2話 フライドゴブリンは生臭い
「なるほど、あの黒い液体はソースというのね……」
こんにちは、ヘンリエールです。
今は仕事のお昼休憩で、職場の近くにある揚げ物のお店にやってきました。
この前食べた美味しいコロッケ定食も揚げ物料理のお店だったから、ここも期待できそうだわ。
〝アンラッキーフライドゴブリン〟
「な、なんだか縁起の悪そうな店名ね」
お店に近づくとスィーっとドアが自動で開く。
魔力を込めたりもしてないし、向こうに人もいないのに……一体どういう仕組みなんだろ。
「へーいらっしゃい。テイクアウト? 店内?」
「えっ? あ、あの……」
「持ち帰って食べんの? 店内で食べてくの?」
「あっ……て、店内で食べていきます」
「はいよ。ご注文どうぞ」
「あ、はい……」
ここのお店は席に行く前に注文する感じなんだ。
ちょっと忙しないかも……
「えーと、どうしようかしら……」
フライドゴブリン・アーム、フライドゴブリン・レッグ、フライドゴブリン・チリレッグ……ここのお店はフライドゴブリンっていう料理ばっかりね。
「注文決まった?」
「あっはい、えっと、このフライドゴブリン・レッグの……ダブルセット? でお願いします」
「ドリンクとサイドは? ダブルセットだからサイドは2つ選んでね」
「は、はい。えーと……グリーンソーダと、サイドは……コーンサラダと、ラッキースコーンで」
「はいよ。それじゃあお会計、680エルになります」
「あっはい」
支払いは食べた後じゃないんだ。それにしてもかなり安い気がするわ。
「はい、20エルのお釣りね。すぐできるから横でお待ちを」
「は、はい……」
カウンターの奥にあるキッチンで調理をしているのが見える。
うーん、揚げたてのゴブリンの匂い……な、なんか、あまり食欲をそそられないかも。
「はいお待ちどう。お好きな席へどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
料理の乗ったトレーを貰って、席を探す。
よし、外が見えるカウンターの席にしよう。
「ふう。ようやく落ち着けた」
席について周りを軽く見渡す。
お客さんはドワーフ族と人狼族が半々って感じかな。
エルフ族はまたわたしだけだ。
それにここは人間族の国『イザヨイ』なのに、人間族のお客さんも見当たらない。
「よし、それじゃあ食べようかな。それにしても、ゴブリンかあ」
この世界の生き物は大きな括りでいうと4種類に分けられる。
ひとつはヒューマン。わたしたちエルフ族や人間族、ドワーフ族のような、知能が高くコミュニケーションが可能な人型の種族。
残り3つは、動物と、魔物と、魔族。
動物と魔物の違いは、動物は栄養素が多くて魔素が少なく、魔物はその逆。
魔族っていうのは、知能が高い魔物のこと。
まあこの辺は今は別に良くて。
ヒューマンが食べているのは、動物と魔物。
どっちが美味しいかは種族に寄って好みが分かれる。
で、ゴブリンっていうのは魔物の一種。
ドワーフ族にちょっと似てるけど、知能は低く、畑や果樹園を荒らす害獣として扱われている。
「と、とりあえずコーンサラダから食べようかな。森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……ぱく」
……うん、普通に甘くてプチプチで美味しい。
コーンはエルフの国『タプナード』にいたときも食べていたから、食べるのに躊躇するものではない。
「こっちのラッキースコーンっていうのはシロップをかけて食べるのね。デザートってことかしら」
それじゃあ次は、お待ちかねのフライドゴブリンを……
「うう、なんか色が……よし、た、食べよう」
はぐ。
…………。
「……なんか、生臭くてぐにょぐにょしてる」
正直、美味しくない……肉のまわりについてる衣の味が濃くて、それで誤魔化してる感じ……
「うう、中のお肉、緑色だ……」
なんだろう、この色も良くない気がする。見た瞬間、一気に食欲がなくなってしまった。
「……ふう。グリーンソーダは普通の薬草サイダーだわ。良かった」
とりあえずドリンクで口直しして、ラッキースコーンを食べてみよう。
「シロップをかけて、はぐ……ん! これはとっても美味しいわ……!」
ちょっと生地がパサパサしてるけど、そこにあま~いシロップがジュワ……って染み込んで、なんだかミツバチの巣を食べてるみたい。
ミツバチの巣食べたことないけど。
わたしは夢中になってラッキースコーンを食べ進めた。
―― ――
「ご、ごちそうさまでした。あの、トレーはどちらに」
「そこに回収台あるでしょ。置いといてー」
「は、はい……」
…………。
……………………。
フライドゴブリン、めちゃめちゃ不味いわ。
【アンラッキーフライドゴブリン/フライドゴブリン・レッグ、ダブルセット】
・お店:店員さんがちょっと怖い。
・値段:安い。
・料理:肉が緑色で生臭くてぐにょっとしてる。クソ不味い。ラッキースコーンだけ注文が正解。
ヘンリエール的総合評価:38点。
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