第24話 優しさと約束


 扉を開けると、そこにはウロス様と俺が知っているギルドの受付嬢であるリリナさんとイミリアさんがいた。

 三人とも、こちらを見て驚いたように目を見開いている。


 まぁそりゃあ……こんな登場したらそんな反応になりますよね。


「ウロス様。新しい紅茶を持ってまいりました。どうぞお受け取りください」


「スミーヤ……あなたまさか……!」


 そしてなぜかウロス様のお隣には澄ました顔で三人に紅茶を運んでいるスミーヤさんが……す、すごいあの人、俺達を呼んだくせに場の空気に溶け込めているぞ。


 スミーヤさんがウロス様のことを見ると、ウロス様の顔が少し悲しいものに変わったように見えた。


「……母様。一体どういう状況?なんで受付嬢さんたちがそこにいるのよ?」


 マリー様がそう発言した瞬間、空気が再び重くなるのを感じた。

 主にその原因を作ったのは……なぜかリリナさんだ。普段俺と関わってる時の数百、数千倍の威圧を放って、マリー様のことを睨んでいる。


 な、なんでマリー様を睨むんですかリリナさん?というより……もしかして、怒ってます?


「……ちょうどいいわ。今回の件に最も関わっているマリー様が来たから、話を進めましょ」


「ッ!マリーは関係ありません!私が全て…!」


「ウロス様の意見ももちろん承知なのですが、娘様……マリー様にもご説明していただけないと。それにレクスくんにもね」


 いつもの頼れるお姉さんであるイミリアさんがマリー様と俺に説明してくれた。



 ◇



「……そう。なるほどね」


 マリー様が納得したように頷く。

対する俺は……自分のしてしまったことに頭を抱えてしまった。


 まぁ簡単に言うと……今回の件は俺とマリー様が引き起こした問題らしいです。

 しかも、結構ややこしい話に発展してるせいで問題が大きくなり……今に至ったということで……。


「今は今回の件についての責任はウロス様という前提で話を進めていますけど、マリー様。これは事実ですか?」


「……事実よ。ただ一つを除いてね」


 マリー様はなにかを悟ったかのように表情を少しだけ穏やかなものに変えて、言い放つ。


「母様はなにも悪くないわ。全て私の責任よ」


 その言葉ウロス様は酷く顔を歪ませてしまった。


「マリー!あなたが出しゃばることないわ!これはもうあなただけの問題じゃないもよ!?」


「承知してるわ。これが大きな問題を抱えてることも。でも元はと言えば私が始めたことよ。それに、もう子どもじゃないの」


マリー様がウロス様の方に向く。穏やかなマリー様と焦りを感じているウロス様。

親子なはずなのに、対照的に見えて、それがまたすれ違いが起きたような気がしてならなかった。


「……彼女がそう言っているそうなので、私たちはその意見に尊重するとしましょう。ではマリー様、詳しい話はギルドで」


「ま、待ってください!マリーは……マリーはただ私のためにしてくれただけなんです!」


ウロス様の静止の声は虚しく聞き入れることはなく、リリナさんとイミリアさん、そしてマリー様が部屋に出ていこうし……マリー様が今度はこちらの方に向いてきた。


「……今まで悪かったわね。私の我儘に付き合わせちゃって……あなたとの時間、少しだけ楽しいと思えたわ。


「ッ!?」


彼女の表情が……緩んだ。

笑みを浮かべたのは一瞬なはずなのに、それが俺の脳裏から離れなかった。


(……何やってんだ俺)


彼女の全部を知ってるわけじゃない。過去も何も知らない。ただ、依頼を受けて、数日間過ごした仲なだけだ。でも……。


(マリー様は……)


……ただの子供で、誰かに……親のことが大好きな面倒くさい女の子じゃないか。


それに何やってんだ。今回の件は俺にも責任があるってのに、全てマリー様の押し付けようしようとして……。



「……あ、あの!!」


そう思った時、俺は無意識に大声を上げた。誰もが俺の声に驚き、こちらを見ていた。


「そ、その話……ちょっと待ってくれませんか!!」


それに、ウロス様にも頼まれたはずだ。

マリー様のことをお願いされたんだ。



それで動かなきゃ……何がギルドの冒険者だ。


俺は強い意志を宿し、誰かに助けを求めているようにしていたマリー様の方を見た。






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