第17話 翌朝
「んん……朝か」
翌朝、ボロボロになったベットから起き上がる。
窓の外を眺めると、どうやら今日は曇りのようだ。いつもみたいにいい天気とはいえない。
「……とりあえずあれ、大丈夫なのかな?」
あのときのリリナさん、とんでもない形相と迫力をしていたような……。
でもあの依頼内容、受けたら継続的に続けるように書かれてあったんだよな……。
「……考えても仕方ないし、とにかく今日も支度しないと」
身体を伸ばしてから、俺は今日も自分の生活のためにミルティーユに向かっていく。
なぜが嫌な予感を感じてしまったが……気のせいであってほしいものだ。
◇
いつも通りにまだ朝日が登りきっていないときにギルドに着いた。
普通ならまだ開いていない時間なのだが……リリナさんが来たことでこの時間にも開くようになったのだ。
今更だけど、ほんとにあの人には色々と助けられてきたものだ。
最近は少しだが態度が軟化……いや昨日のことを思い出してみると、そうでもないかもしれない。
と、とにかくなんやかんやあってもリリナさんにはお世話にはなっているものだから今度お礼でもしてみようかな。
そんなことを思いながら、今日も俺はその扉を開いた。
「なんでそうなるのですか!?そんなもの、横暴じゃないですか!?承諾できるわけありません!!」
「そう?でも貴方はこう言ったよね?ギルドに依頼を出さねければいいって。なら私が直接彼に依頼すればいいわ」
「ですからそれは冒険者がこの街から出ないようにするためであってもので!直接していいわけない――」
――一旦、俺はその扉をそっと閉じた。
え?何?何があって言い争ってるの?しかも見た感じあれ、リリナさんとマリー様だったよね?
……もしかしてだけど昨日何かあったとか?
とりあえずもう一度扉を開けて中を見ようとする。
「なによ貴方。覗き見なんていい趣味してるじゃない」
「うわっ!?」
扉を開けたら、目の前にこちらをじっと見ているマリー様の姿がそこにはあった。昨日と同じように威圧感たっぷりの近づきにくい雰囲気を醸し出してる模様で……そういう意味ではリリナさんと似ているかもしれないが。
「ほら、いくわよ」
「え、行くって……どこにです?」
「決まってるわよ。今日もいつも通り、私のお世話」
それを聞いて察してしまう。あぁ、今日もまたあの大変なことをするんだなって。
「じゃあ少し待ってていただけますか?今日の依頼の分を取ってくるので」
「いらないわ」
「……え?」
「聞こえなかった?いらないって言ってるのよ」
「い、いや……」
生活もかかってるし、流石にそれを承諾するには……。
「あーあー仕方ないわねー。もし承諾しないなら昨日のこと全部言っちゃおうかしらー」
「え、き、昨日のこと……?」
何故か背中に冷や汗が……。
「そうね。やっぱりあのことがいいかしら。レクス・オルクスは〜!私に忠実な犬」
「わああああ!!!ストップ!ストップ!ストップ!!分かりました!!言う事聞きますのでそれは言わないでください!!」
あ、あんなこと言われたら俺の世間体が終わる!?
下手したら街の人から変な目で見られて……仕事が貰えなくなる……。
それを見越していたのか、マリー様は澄ました顔をしてから仕方なさそうに言い放つ。
「貴方が言うのなら仕方がないわね。それじゃあ今日もよろしくね……クロ♪」
「……わ、わん」
トホホ……今日は一日中マリー様のおもちゃとして扱われるらしい。
少しだけがっくりとした気持ちとなって俺は悠々とギルドから出ていくマリー様のあとをついていく。
「レクスさん!!」
すると、リリナさんの声が聞こえてくる。
後ろを振り返ると、いつもは見ない必死な様子の姿が見えたような気がする。
「う、受けたらだめです!戻ってきてくださいレクスさん!!」
「……リリナさん」
……ごめんなさい。流石にそういうわけにはいかないんです。
だってもし断ると……俺の世間体が終わる未来しか見えないから。
そんな思いから、俺はとりあえず心配させないように口を緩ませる。
「……心配しなくても大丈夫です……………必ず戻ってきますから」
―――この人が俺のことを言わない限りは。
それを心の中で祈ってから、俺はマリー様の後をついていった。
「レクスくん!!!」
ただ一つ気になったのが……どうしてそんなに泣きそうな声だったのかが今も不思議で仕方がなかったことだ。
……まぁ俺には関係ないことなのだろう。素直にそう思った。
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