ダンジョン配信してたら人格変化して最強すぎてバズった〜レベル1でレイドボス撃破〜

@re-lu

第1話 レベル1でレイドボス撃破してバズる

「レオ君、一緒にダンジョンにいかない?」


「ユズと一緒なら嬉しいから行くよ」


 ユズは僕の高校の同級生である。一応配信も趣味でやっていて登録者は100人である。


 

 同接20人


「いえーい、今日は序盤ダンジョンの宝箱を狙いに行くよ」


「あ、ゲストのユズさんです」


「どうもレオ君の友達のユズです」


……


「あ、あはははは」


「僕の過疎配信がユズにばれちゃったよ」


 それもそのはず今僕のチャンネル登録者は10人しかいないからだ。


「ま、まあ、気を取り直していきましょうか」


 序盤ダンジョンというと、誰でも通える簡単ダンジョンだ。


 だから十分、ジャンルとしても踏みつくされていて、あまり需要はない。


 だが、僕たちの実力ではこれ以上進むことはできないから仕方ないのである。


「宝箱ってどこにあるのかねレオ君」


「えーとね、何も考えてなかった」


「あ、あははは。まあダンジョンは広いからね。手当たり次第というわけにはいかないわ。時間も限られてるし」


「そうなのか」


 ほぼ、趣味でやっているから、特に何も考えずに安全地帯を回っていたものの、ユズのおかげで情報が大事であると気づいた。


「私も、ちょっとしか知らないんだけどね。ここら辺だとあっち側の宝箱が入手しやすかったよ」


「ありがとう!」


 僕たちの目的地は決まったようだ。


「ねえ、ユズのコメントはどうなってるの?」


「うん、別にいつも通りだよ」


 同接30人


 ワクワクドキドキ


 いけいけ! ゴーゴー!



「あ、あははは」


 コメントで視聴者層は大体ユズみたいな子だなと思った。


「レオ君もまだ配信を始めたばっかりなんだし、自然体が一番だよ!」


「あ、うん。僕もコメントもらえるかな?」



 同接3人


 ……




「……」


 流石にコメントがないのは心に来るものがある。


「あ、でも全然気にしなくて大丈夫、大丈夫! そのうち増えていくから。あれ、でもレオ君っていつから配信していたんだっけ?」


「大体1か月くらいだね。ずっと序盤ダンジョンを30分くらい歩いて無言配信してた」


「無言配信じゃ伸びないでしょ!」


「本当にただの趣味のつもりだったんだよ。でもユズもダンジョン配信してるって聞いたから、僕も興味が湧いてきたんだよ」


「なるほど、じゃあレオ君はこれからどんどん伸びてくる期待の新人ってことね」


「ただの新人だけどね」


「じゃあ、ただの新人さんの実力を見せてもらおうかしら?」


「え? うわああああ」


「ぷるぷる」


 『スライム レベル1』


 気が付けば目の前にスライムが現れた。


「ここら辺って魔物がでないんじゃなかったの?」


 実はまだ魔物と戦ったことはないのである。


「隠しエリアだからね。宝箱を手にいれるには魔物を倒さないといけないよ」







 いけいけー


 ユズ頑張って。






「今日はコラボ相手のレオ君がスライムを倒すよ」






 ええ、ユズが見たかった。


 レオ君がんばって。







「あははは、レオ君、じゃあお願い!」


「し、仕方がないな」


「ぷるぷる」


 ダンジョンに入るプレイヤーには初期装備が備わっている。


 短剣に鎧だ。


 そして固有スキル、各プレイヤーにのみ限定的に存在する固有スキルが強さにおいてもっとも大事になる。


 最も戦闘に興味がなかった僕は全く興味がなかったんだが。


「うわっ」


「ちょっとレオくん、回避回避!」


「えっと、こう……しまった」


「ドカッ」


 レベル1 HP100→89


「うわあ、HPが減っちゃったよ」


「回避しないからそりゃあHPが減るでしょ。回避と攻撃! これ基本よ」


「分かった。やってみる」


「ぷるぷる」


 このスライムの攻撃パターンはよめた。


 体当たりと、加速によるタイミング変化、それを想定すれば回避はできるはずだ。


「スッ」


「おっけー!」


 できた、後は短剣で攻撃を……。


「ぷるぷる」


 分裂? まずい。


「ズドッ」


「うわあああ」


 HP89→40


「ありゃあ、これはまずいかもね。そろそろ私も助太刀するよ」


「待ってユズ」


「え?」


「こいつは僕が倒す」


 なんだろう、初めての戦闘は僕の中に眠る闘争心を呼び起こした気がした。


「ここが僕の始まり」


 その時、僕は固有スキルを発動した。


「へえ、レオ君の固有スキルね。これはお手並み拝見かしら」


「……見えてる」


「ぷるぷる?」


「スッ」


 僕は分裂したスライムの攻撃を全てかわした。思いのほか、どんどん素早くなってる気がする。


「えっ、凄い、こんな動き私にもできないわ」


「ぷるぷるぷる!」


「この魔物スライムの癖に様子がおかしい……もしかして、レオ君撤退するよ!」


「?」


「固有種スライムよ。おそらくダンジョン隠しボス、私達では勝てないわ」


「……」


「レオ君?」


「ユズ、ちょっとうるさいから黙っててくれないか? いま楽しくなってきたところなんだ」


「え?」


「プルプルプルプルブフォおおおおおお!」


 スライムEX レベル20


 ビービービービー緊急避難推奨、緊急避難推奨


 スライムEX(固有種)出現、直ちにプレイヤーは退避してください撤退推奨!


「やばいやばい、緊急避難の警報まで出ちゃったよ。本当についてない。冗談はいいから逃げるよレオ君?」


「ふふふ、冗談? 僕はやりますよ」


「レオ君?」







 なんか真っ赤に画面が点滅してない。


 ユズ~今日はもう帰ろう。


 ユズ?


 なんかレオって子雰囲気変わってない?


 うーん、わかんない、てへぺろ







「ぷろおおおおお」


「レオ君?」


 巨大化したスライムが僕めがけて突進してきた。


「見えてますよ。全てが」


「嘘?」


 僕は全てのスライムEXの攻撃をかわし、急所を貫いた。


「?」


 しかしこれで終わりではなかった。ここから僕にとってのダンジョン配信が全て変化する出来事が起こったのである。







 ねえ、なんか、これやばくない。


 ちょっと流石に見たことないかも。


 一応写真をとって兄ちゃんに報告してみた。


 どんな反応してたの?


 眼鏡が吹っ飛ぶほど、驚いてて、なんかグループラインとSNSに張るからURLを貸せっていってたよ。だから送った。


 へえ、なんかよくわかんない。


 私もよくわかないけど、とりあえずユズちゃん逃げて―!









「あっ、あっ、あっ」


 ふとユズをみたら戦慄した表情でただ立ちすくんでいた。どうやらダンジョンプレイヤーなだけに目の前の状況を全て理解できたようである。


「ぷるぷるぷるぷるぷる」


 どんどん肥大化していくスライム。やがて、アラーム音がより高くなっていることに気づいた。


 緊急避難、格上げ、スライムEX→魔王スライム、測定レベル不明 該当エリアを隔離します。エリア隔離、エリア隔離


「ぐをおおおおおおお!」


 魔王スライム レベル50


 ダンジョン初心者の僕には何が目の前で起きているのかは分からない、だが漠然とやばい敵なのは分かる。だが不思議と恐怖はなく高揚感に満たされていた。


「さあ、ショーの始まりだ」






 おいおい、Bエリア序盤ダンジョンに魔王スライムが出たらしいぞ。


 は? 鬼畜過ぎて草!


 もはや詰み要素じゃん。


 なんか、初心者が魔王スライムと戦ってるらしいぜ。しかも初期装備で。


 嘘だろ? 上級者が戦うような敵だぞ?


 ダンジョン歴数年の俺でも勝てねえよ!


 おいおい、このサイトで配信してるみたいだぞ。


 配信者名 レオ


 これは盛り上がってきた! みんな集まれ!


 同接100→200→1000→2000→……







「ぶるるるっるるるるああああああああああ!」


「レ、レオ君、もうおしまい……だ……よ」


「おしまい? ショーの始まりだよユズ、僕のチャンネルをみなよ」


「ど、同接10000? 一体何が?」


「それに聞いたでしょ、もう逃げ場はない。僕たちはこいつを倒すしかないんだ」


「こ、こんなの、無理だよ」


「ぶるるるるるるああああああああ!」


「いやあああああ!」


 魔王スライムの咆哮は衝撃派を生み、ユズを吹っ飛ばして気絶させた。


「ふふふ、まあユズはうるさかったから、少し眠っててもらいましょうか」




 ユズ?どうしたの?


 配信中断? 逃げたのかな?


 ねえ、こっちのレオ君の方のチャンネルが凄いことになってるよ。


 え? 本当だ。


 ユズは逃げたのかな?


 分からないけど私たちもレオ君chみてみようよ。


 うん、そうだね。





同接20000


 すげええ、マジで魔王スライムいんじゃん


 おいおい、あのレオって奴、レベル1だぜ勝てるわけねえじゃん


 あほかよ。一瞬でやられて終わりだよ。


 馬鹿かお前ら? 普通の装備で倒しても別に何も面白くねえだろ?


 これはいわば究極の縛りプレーに違いねえ。




「さあ、皆さんご覧ください! 目の前には魔王スライム、対するはレベル1で初期装備の弱小プレイヤーこの僕レオ。どう考えても詰みな状況、これを僕がひっくり返してあげます」




 ぎゃははは、釣り乙


 絶対無理だろ


 でも同接こんだけ集めた企画力だけは認めてやるよ


「ぶるああああああああ!」


「ドドドドドどっどどどど」


 魔王スライムは高速で連打を放った。辺りは砂ぼこりで見えなくなった。



 あっけなさすぎるだろ。


 まあ、そりゃあ、そうなるわ。


 っていうか砂ホコリで何にも見えねえけど。


 まてっ!レオって奴のHPバーが減ってないぞ?


 嘘だろ!



「フフフ、全て見えてました。そしてこの難攻不落の魔王スライムの弱点も全て勝利の運命によって導き出されます」


「ぶるるるるるるあああああああ!」


「チェックメイト」


「ドバアああああああああ」


 






 その日、ダンジョン攻略と配信プレイヤーにとって歴史的瞬間が誕生した。レベル1のプレイヤーが魔王スライムを撃破したのである。


 そしてレオは、突如あらわれた新星として、多くの人に知られることになった。









「面白かった、よかった!」


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