第5話 大精霊イフリート

【火魔洞窟】

ギンガ

『ここが「火魔洞窟かまどうくつ」か。』


洞窟に着く頃には太陽が西へ沈みかけていた。


ギンガ

『さすがに洞窟の中は真っ暗で何も見えないな。くそ!急いで村に戻らなきゃいけないってのに!』

エステル

『私に任せて!』


エステルは、リュックサックからロウソクを取り出し、杖を構える。


エステル

『精霊よ。火の力を与えたまえ。ファイアボール!』


エステルは魔力量を極限に抑え、火術かじゅつを発動しロウソクに火をつける。


ギンガ

『本当になんでも入ってるなそのリュックサック。』

エステル

『もちろんよ。 「そなえあればうれいなし」って教室で習ったでしょ?』

ギンガ

『とりあえずこれで明るくなったな。急ぐぞ!』

エステル

『うん!』


ギンガとエステルは走り出す。


【走るギンガとエステル】

ギンガ

『特に魔物の気配は感じないな。。。

 何でこんな洞窟が出入禁止なんだ?

 エステル、先生から何か聞いてる?』

エステル

『ううん、まったく。

 こんな洞窟が西の森にあったことすら知らなかった。』

ギンガ

『ふーん、そっか。

 今はとりあえず急ぐか!

 早く戻ってみんなを助けに行かないと!』

エステル

『うん!』


しばらく走るとひらけた場所に出る。

そこは大空洞だいくうどうとなっていた。


ギンガ

『ここが洞窟の最奥っぽいけど、、、』


付近を見渡すギンガ。


ギンガ

『剣なんてどこにもないぞ?』

エステル

『あれのことじゃない!?』


エステルは大空洞の中心部を指差す。

大空洞の中心部は月の光が差し込んでおり、月の光が差し込む先には1本の、剣身の見えないT字型のつかが置かれてあった。


ギンガ・エステル

つか?』


2人は柄の元へ歩み寄る。


エステル

『たぶん、、、これのこと、、、よね?』

ギンガ

『これってもしかして、伝承や言い伝えによく出てくる、伝説の武器「エクスカリバー」じゃないか!?』

エステル

『まさか。

 あれって架空の話でしょ?』


柄の中心部には透明色の丸い水晶玉のようなものが埋め込まれている。

エステルはつかを持ち上げようとする。


エステル

『ダメ、持ち上がらないわ。

 剣身けんしんが地面深くまで突き刺さっているのかも。』

ギンガ

『おい嘘だろ!

 ここで悠長ゆうちょうに構えている暇はないぞ!

 今こうしている間にも村の人たちが、、、』


ギンガはつかを持ち上げようとする。

ギンガがつかに触れた瞬間、柄全体が激しく光り出す。


ギンガ

『な、なんだ!?』


あまりのまぶしさにギンガとエステルは目を閉じる。


光がおさまり、2人は同時に目を開ける。


ギンガ

『うわあ!』

エステル

『キャーっ!』


2人とも仰天ぎょうてんする。

なんと2人の目の前には、赤い巨大な人外の生物がいたのだ。


ギンガ

『な、なんだ!?魔物!?』

???

われを魔物と一緒にするでない。我が名はイフリート。火の大精霊である。』

ギンガ

『イ、イフリートだって!?あの四大精霊よんだいせいれいの!?』

イフリート

左様さよう。』


イフリートは続ける。


イフリート

なんじう。なぜこの剣を欲する。

 この力を得て、汝は何を為そうというのか。』


ギンガはイフリートを力強く直視する。


ギンガ

『俺はただ、大切な人たちを守るだけの力がほしい。』


イフリートもギンガの目を直視しながらしばらく沈黙する。


イフリート

『いいだろう。汝と契約し、ともに戦うことをここに誓おう。この力、使いこなしてみせよ。』


そう言うとイフリートはギンガの体内へと姿を消した。


つかを持ち上げようとするギンガ。


つかが持ち上がった瞬間、ギンガとエステルは驚愕きょうがくする。


ギンガ・エステル

『え?』


なんと、剣であればつばの先に付いているはずの剣身けんしんが付いておらず、つかのみであったのだ。

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