第29話 疑われた皇妃

「皇帝陛下、皇妃殿下!至急、ご報告が!」

「なんだ、騒がしい」


玉座に座る、夫、皇帝フェイマス。そして、その横に並べるのは私だけ。

だって、死んだ皇后エレナより私の方が相応しいものね。


そんなことを考えていると、遣いにやらせた男が戻ってきた。


「…クレア邸に、祝福ルアーの真珠を見つけました!」

「……!?」


嘘……ええ、嘘よ……。

だって、確かに持ち出したのに。そして、調査をさせたらなかったと報告されたじゃない……!

だけど、皇帝はほとんど気にしない様子で良かったと笑っているだけだった。


「皇帝陛下、皇妃殿下。お目にかかりたいと申しているものが」

「通しなさい」


そこに入ってきたのは、リカだった……。


「皇帝陛下、皇妃殿下にご挨拶いたします、皇妃殿下及びセシリア様付きの侍女、リカと申します」

「用件は?」

「恐れながら……祝福の真珠の盗人と疑わしき方を見つけたのです」

「ほう」


まあ、リカったら。

上手くやってくれるじゃない!さすが、私が手塩にかけて育てた侍女だわ。


「…皇妃殿下でございます」


…………は?

リカ、どうして裏切ったの。どうして?私に、感謝の恩すらないのね…!?許さないからっ!!


しかし、その場では大臣たちが、それとなくリカを信じはじめる。

そして、リカは理由も説明した。


まず、目撃者。クレア邸に入って行こうとする男がいたから、周辺の住民が声をかけたところ、「皇妃殿下に遣わされた者です」と言ったらしい。そして、計画表。手順が書いてある紙を見つけたが、それは1000年以上前に使われていた文字で古代語にも相当する。そして、それが書けるのは皇族。妃も同様だ。


「以上のことから、皇妃殿下を疑わざるを得ないということです」


ここは、私を溺愛してくれる皇帝が庇ってくれればいいのだけど。

皇帝として相応しいのかわからないが、彼は平等性に優れているーー常に客観的に物事を見るから、とても庇ってはくれない。

だけど、皇帝は押しにも弱いのが欠点だ。


「一旦この件は保留にしよう」


このままでは私が罪人になってしまう!



「陛下ぁ…きてくださったのですね」


毎夜訪ねてくる皇帝は、毎日私を抱いてくれる。溺愛されて、早く子供が産まれたらいいな、なんて思い始めた。


「今日も……いい、か…?」

「もちろん♡」


そうだ、ここでお願いしてみようかしら?

皇帝は、容易いちょろいから。


「ん、あ…」

「愛している、ミランダ」

「ん…そう、いえば…今日の件、フェイマスは信じてくれてるでしょ?」

「今日の件…ああ、あれか。ミランダはしていないんだろ?」

「あぁっ…も、もちろん、ですわ」

「なら、信じよう」


ほら、ね。

これで、皇帝は庇ってくれるはずだ。


その次の日、開かれた会議ではーー。



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