海恐

しょう

海恐 1話 烏賊

夏想 進次郎(げそ しんじろう) ... 男。そこら辺にいる大学生21歳。

凧也 賢人(たこや けんと)... ♂。夏想の釣り仲間。歳は夏想の一個上。

久野肴(くの さかな)... 女。夏想と同じ大学の後輩。夏想のことが好きで、

釣り勉強中。バカで食欲旺盛。


イカ…… 性別不問(女性より)。超能力を持ったコウイカ。



(気温38度。カモメがなきわめく中……)


夏想: あー。暑いなぁ。

んースポドリどこにやったっけ?


凧也: ほれよ。(スポドリをわたす)

熱中症で倒れたら困るよ坊ちゃん。後輩ちゃんが悲しむよ 。

ちゃんと持っとけ。


夏想: 誰が坊ちゃんだ。ガキ扱いすんなよ、歳もひとつしか変わらないじゃんか。

……はぁ、全然釣れないなぁ。


凧也: お前にしては珍しいなぁ。俺はもうアジ3匹にメバル4匹釣ってるよ。

今日は潮の流れが釣りに絶好調なのにな。夏想、運がないな。はは。


夏想: うっせぇ。…はぁ、いつもはアジ5匹、メバル10匹ぐらい釣れるの に……。せっかく見つけた穴場もここまでか……


凧也: そう落ち込むなよ。誰だって毎回大漁に獲れる訳じゃないし、だいたいいつ も俺の方が釣れないんだから、今回は夏想が大凶クジ引いたな。

ドンマイ!


夏想: この野郎……!はぁ、高い竿も買ってきたってのに……台無しだよ。


凧也: HAHAHA……!場所変わるか?


夏想: うん……。あ、トイレ行ってくる。ごめん!


凧也: おい!……って夏想のやつもういないじゃん。

はぁ……はいはい分かりました変えときますよ。


(間)


久野: 遅れましたー!先輩、凧也さんこんにちは!


凧也: おいおいそれが2時間遅刻した人間の態度か〜?

遅いぞー肴。


久野: えへへ、すいません……あれ、先輩は?


凧也: あー。あいつ御手洗に行ったよ。


久野: へー。珍しいですね。釣りしてる時は1日中トイレを我慢できる

あの先輩が。……てことは、2人で夜明け頃からやってるんですか?


凧也: んなわけあるか。俺も俺で暇じゃないんだぞ。

仕事も繁忙期に入ったし、社会人なんてろくでもないよ。

だいたい、夏想のやつ朝が苦手だろ。早朝からの釣りなんて今まで夏想と

やったことないよ。


久野: たしかに、先輩は朝弱そうですもんね。

じゃあ、普通にお腹を下してたのかな?……ってそんなことより

釣果はどうですか?


凧也: ああ。それなら...ほら。(バケツの中を見せる)


久野: おおすごいですね。今回も先輩がこんなに‥?


夏想: ただいま〜...って久野じゃん。お前大学生にもなって遅刻はマズイぞ。


久野: あ、先輩!うふふ、差し入れを買ってて遅れました。先輩たち好きでしょ、

   大量に買ったんですよ。あとメロハス天然水です。


夏想:おお。これドッキリ堂の煎餅じゃん。しかもこれ全部で1・2‥20枚も   買ったのかよ。


久野:えへへ、お腹空いててついつい。でも、先輩好きですよね?


夏想:そりゃドッキリ堂の煎餅は好きだけど。

   …………にしても買すぎじゃないか?今日一日煎餅で過ごすのは久野も

   キツいだろ。


久野:私はだーいじょーぶで〜す。凧也さんは?


凧也:じゃあ俺も貰おう。そしたら煎餅もすぐ無くなるだろ。

   あーでも天然水は遠慮しとくよ。


夏想:そーいえば、珍しいよな。天然水の好き嫌いがはっきりしてるなんてな。

   何がダメなん?


凧也:んー‥‥普通の水よりちょっと塩分入ってるスポドリとかの方がなんか

   いいっていうか‥まぁ、そんなところかな。気にすんな。 


久野:わかりました。‥‥あ、先輩。


夏想:なんだ、久野?


久野:今日も絶好調ですね。アジ3匹にメバル4匹も釣ってるじゃないですか。


夏想:……賢人が釣ったんだよ。


久野:…え?あの毎度フグしか釣れないフグ太郎さんが?


凧也:おいおいひどいあだ名だな。別にいいだろ、むしろフグはそこらの魚と一 緒、いやそれ以上に美味い高級魚だぞ。

   


夏想:いやお前が釣ったフグは…っておおお、俺の竿が。


久野:すごい引きです先輩。これは大物かもですよ。


夏想: ああ。ちょっくら釣ってくるか。


(間)

夏想: あと少し。なかなかしぶといな。


凧也:結構活きがいいってことだ。楽しみだな。


久野:頑張ってください先輩。メシメシ!グッとこーい!


                 (間)


夏想:よしきた…ってこれ…。


凧也:…!。 お前。


久野:わぁ、コウイカだ!早く〆て刺身にしましょうよ。醤油準備しますね。


夏想:おいおいそう急かすなって。俺は腹減ってないけど賢人は?


凧也:い、いや大丈夫。…持ち場に戻るよ。


久野:はぁ、そうですか。私も持ち場に戻りますね…。


                (間)


イカ:…イカイカ。


夏想:ん? 今何か言った?


凧也:いや、何も。


久野:私も、特に。


夏想:じゃあ、気のせいか。


イカ:イカ…。イカイカイカ!


久野:誰かイカイカ言ってます?


凧也:……知らないよ。


夏想:いや、「いってぇ…。あの小童が!」って聞こえたけど。


凧也:…!。 気のせいだよ!。


夏想:そ、そうか。とりあえず、イカ見てくる。


                  (間)


夏想:…にしてもホントにデカいな。何食ったらこんなにデカくなるんだよ。


イカ:…おい。


夏想:…ん?


イカ:おい!。そこの童(わっぱ)!。


夏想:うお!!。イ、イカがしゃべった!。


     (尻もちをついてバケツ倒す)


イカ:痛って…。バケツ蹴飛ばしやがって。

   まぁいい。これでわっちは自由じゃ。


夏想:なんだこいつ!。気持ち悪いなぁ。


イカ:気持ち悪いとはよく言ったものじゃ。わっちはお主よりも200も年上じゃ ぞ。


夏想:…。ホントに幻聴が聞こえ始めたのかな…?。最悪だ。


イカ:……馬鹿たれが!!!!!!!。


夏想:おお…!。


イカ:ふふふ…。お主も薄々分かっておるだろうがわっちはただのイカではない。

   我々頭足族は、500年に一度、特殊な能力を持ったイカとタコが生まれ る。

   わっちが気づかぬうちにあやつは上陸してたみたいだから寂しいがのー…。

   まぁ良いわ。


夏想:その能力ってなんなんだよ。


イカ:別にそなたが知ったところでどうにもならぬだろ…。

   ………… わっちらの言語は基本、同族以外には伝わらない。

   だが、稀に我々の言語を理解できる畜生が現れる。

   我々がもつ超能力は、そんな畜生の体を乗っ取って、永遠の命を手に入れる ことができる!

 


夏想:……は?。ちょっと何言ってるのか分からないけど、

  

イカ:愚かな畜生にも分かるよう説明したつもりだが、ふふふ、もう遅い。


夏想:…!。か、体が…動かない!。


イカ:いつから人間が頂点に君臨してると勘違いした? 念力も使えぬ下等生物が。ふふふ、ではゆっくりといただくとしよう。

   

夏想: う...。やめろ!。ヤ..メ..。



(間)


久野: あ、先輩!。遅いじゃないですかー。もう私メバル7匹釣りましたよ。


凧也: ....夏想。


イカ: やっと逢えたねタコ、かたじけない。さぁ、始めようか。


𝐹𝑖𝑛.

  







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海恐 しょう @shogorila

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