甘え上手な妹を追い出す方法

オチャメペンギン

第0話

 気がついた時には住み着いていた。

「ただま~」

「おにい帰りおそーい。ご飯まだー?わたしめっちゃ腹減ってるんですけど」

 家に帰りドアを開けた瞬間、某人気K-POPアイドルの曲をイヤホン無しで部屋中に爆音で鳴り響かせ、寝転びお菓子をバリバリ言わせながらソシャゲを夢中にプレイしている自堕落な女の姿があった。また彼女の周辺を見てみると、飲みかけのエナドリ缶、散らばったポテトチップスetc......現役ニートや大入りの飲料を好むアメリカ人も真っ青になりそうな不摂生極まりない‘THE自堕落女’である。うん、キレそう。

「お前!人の部屋を勝手に弄るなって言ってるだろ!」

「えー?別にいいじゃん減るもんじゃないしー。そんな事よりご飯はまだなの?」

「こんの、クソガキ……」

「えー?聞こえないー」

 まるで反省する様子がないクソガキに、俺は呆れて頭を抱えた。こいつは妹の柏田さえぎ。年は3つ離れており外見は銀髪のスーパー美少女、おまけにずば抜けた天才肌の持ち主である。しかし飽き性かつ怠け者な為、テストは満点だが欠席が多く留年しかけとかなんとか。

 ぐぅぅぅぅぅぅ。

「ほら、早くご飯作ってよ!」

「あー……はいはい、わかったよ」

 空腹を訴えるお腹の音を聞くなり、俺は冷蔵庫から材料を取り出して調理を始めた。料理は自分で言うのもあれだが得意な方である。

 そして10分後。

「ほれ出来たぞ」

「おー!おにい好きー」

「へいへい」

 俺はさえぎの戯言を軽く流しながら、料理がのった皿をテーブルに置く。今日のメニューは肉じゃがに味噌汁とご飯だ。そしてさえぎは早速肉じゃがを一口食べると、

「んー、味薄くない?」

 そう言ってさえぎは醤油を肉じゃがにドバドバかけて食べ始め、

「うん!やっぱりおにいは料理は上手いよね!」

 と笑顔で言った。……コイツは偏食だし別に褒められたくて作ってるわけじゃないからあんまり思わなくなってきたが、俺の繊細な料理が醤油まみれになっていく様は少し傷つく。

 ピロリン。

「ん?」

 と、そんなことを思っていると携帯が鳴った。

「やばっ!配信すんの忘れてた!」

 どうやらさえぎのスマホだったらしい。妹は急いでパソコンを開き配信する準備をする。

「ちょっと静かにしてて」

「いやここでするのかよ」

「皆さーん!こんちゃー!アクだよー!今日はラジオ配信していくよー!」

『こんアク』

『こんアク!』

『アクちゃんきたー!』

 配信を始めると、たちまちコメント欄は大盛況となった。初めは友達とお遊び程度で配信をしていたが今では登録者数55万人のそこそこ人気な個人配信者だ。声も可愛く話が面白いと言われており、男女問わず人気で今一番勢いがある一人と言っても過言ではないだろう。

『そういえばアクちゃんって彼氏いるのー?』

『え!それ気になる!』

 そんな茶化す質問がコメント欄に流れると、さえぎは悪戯そうな笑みを浮かべ、

「へへー、気になる?知りたい?」

 とそんな質問を軽く返す。

「いるよ」

『え』『マ?』『マジか』

「うん、凄く料理が上手でー、真面目でー、いつもわたしのことを応援してくれる優しい人だよ!えへへへ」

『うーわ!これマジの彼氏さんじゃないですかヤダー!』

「あはは。まあ安心してよ!すっごいラブラブだから」

「あ、もうこんな時間だ!そろそろ終わりにしないとね!」

『えー』

『もっと話そうよー』

「ごめんねーじゃあまた来てねー!おつー」

 そう言ってさえぎは締めの挨拶をし、配信を終えた。そして、

「ふぅ。……おにい」

「なんだ?」

「さっきの彼氏の話、どう思った?」

 そう言ってさえぎは照れくさそうな笑みを浮かべた。

「別にどうも思わんよ。ガチ恋遠ざけるための嘘八百だろ?」

「へへへ」

 さえぎはどこか満足そうだった。

「あ!そうだ!今度おにいも配信出てよ!」

「え?いやなんだが」

「いいじゃーん。やろーよー絶対楽しいからさ!」

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甘え上手な妹を追い出す方法 オチャメペンギン @gorou2839

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