第19話 別荘にて

失敗しちまった。


殺す前に金を貰うべきだったな……


焼が回っているのか、錆びついているのか……


車の奴らは燃えちまったし……田中は谷底だ。


駄目だこりゃ。


しかし、結局全部関わってやがんの……


山上建設の人間が関わっていると言う事は、弘毅の後ろ盾は大人だと言う事だ。


噓から出た真じゃねーが……マジで半グレやヤクザが関わって来ている。


そういう事じゃねーか。


やはり、省吾は俺に頼んで正解だったんじゃねーか。


自殺しても揉み消すだろうし、生きていても下手に揉めたら運が良くて潰されるか、場合によっては消されたかもな……


いずれにしても、もうガキの問題じゃ無くなった。


此処からはやったもん勝ちだ。


しかし……まだか……


あいつ等殺す為に車を壊すんじゃ無かったな。


ハァハァ……まだかよ……


車でも通らねぇーかな。


こんな山奥人がとおらねーか……


歩く事1時間弱ようやく『山上天空ハイランド』に着いた。


さて……ここからどうするか……


話しでは向こうで待ち伏せしている奴は4人プラス1人。


此方はもう4人殺しちまったからもう後には引けねー。


山上建設の奴を除いて皆殺ししても良いかも知れねーな。


この話をネタに金を引き出すか?


それとも全員殺すか……


どんな絵を描いたら俺の利になる。


つい殺しちまったから……俺1人。


相当怪しまれそうだ。


別荘の38番……と番号が振ってあるから解りやすい。


車が2台泊まっている。


一台は黒塗りの高級車だ……


キーはと……ラッキー。


高級車の方はカギが掛かっているが、もう一台のワゴン車の方はカギがつけっ放しだ。


このカギは貰って置くか……



他に目ぼしい物は無い。


色々考えても仕方がねー


別荘に近づき様子を見てみる。


なかなか豪華な別荘だ。


恐らくは山上建設の持ち物だろう。


見張りも居ないのか……


まぁ、相手はガキ一人、しかも半グレ4人も送り込んだんだから、安心しきっているのは当たり前と言えば当たり前か?


カギは……空いている。


まぁ、こんな別荘地、不用心で当たり前だな。


そのまま、警戒しながら中に入っていく。


マッドウルフなら、所詮は弱小。


殺しまで出来そうな奴はまず居ないと考えて良い。


とはいえ相手は最低4人。


そう考えたら油断は出来ない。


もう4人も殺しているが……それは気が付いていない。


全員殺すのは本当に楽だが、誰かに怪しまれないだろうか?


考えながら靴も脱がずに別荘の中に入っていく。


結局俺はいつも行き当たりばったりだな。


あっ……目が合ってしまった。


「おい、お前、此処で何をしているんだ!」


「いや……途中まで車で連れて来られたのですが……事故って此処に行けって」


「そんな訳ねーだろう……彼奴らは何処に……えっ、うげぇぇぇ」


取り敢えず軽く腹を蹴った。


どう考えても誤魔化しきれねーよな。


「悪りぃ……考えるのに飽きた! 死んでくれ……」


もう殺すしかねーな。


そのまま口を押えてナイフを心臓に突き立てた。


「うぐっううっ……」


また、殺してしまった……


以前の俺は人なんて殺してない。


尤も『死にたい』と思う位の地獄には沢山の人間を送り込んだが……


それが省吾になってからは、随分と簡単に殺している。


元から殺せる自信はあった。


いざ殺してみたら、あっさりした物でなんの興奮もない。


性欲は少しは満たしているが……暴力は全然満たせて無い。


周りに雑魚しかいねーから……暴力を満たせねーから……殺しちまうのか?


解かんねーな!


こんなオモチャみてーな奴、殺そうが殴ろうが何も満たせない。


「お前……そこで何をしているんだ!」


「お前は……このガキがぁぁぁーー逃げ出そうとしているのかぁーー、お前、一体なにしてくれてるんだぁーー」


見当違いも甚だしい。


俺が仲間に連れて来られて、暴れて逃げ出そうとしている。


そして、自分の仲間が刺された。


そう考えているようだな。


普通に考えてこっちから乗り込んでくるとは思って無いんだろうし、俺が故意に刺したとは思ってないんだろうな……なら。


「いや……うわぁぁぁぁーー刺す気は無かったんですーー刺す気はーー」


パニックを起こした振りをしナイフを見つめながら相手に近づく。


これで良い。


そのまま、一人の男に近づき。


そのまま、ナイフを腹に刺した。


「うっうわぁぁぁぁーーお前、ぐふっうわぁぁぁーー痛ぇぇぇぇーー」


腹を刺しても死なない話もあるが、それは大事な臓器を傷つけない場合だ。


肝臓や腎臓、臓器にしっかり狙って刺せば、苦しみながら死ぬ。


「お前、なにボヤっとしているんだ! 離れろ!」


「はい!」


後ろからスーツの男ともう一人筋肉のあるやたら厳つい男が現れた。


ヤバいな……この状況で3人か……さて、どうした物か……









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