第3話 闇医者と最初のターゲット

幾ら背丈や体型が同じでも流石にこのままじゃバレてしまう。


省吾の家に帰る前に俺は闇医者の黒木を頼った。


「おや、竜二さん……まだ生きていたのかい?」


「なんとかな……それで悪いが、この顔に整形して欲しいんだが」


「この顔ね……まぁ骨格も似ているようだから、簡単だが、組織からの追撃は躱せないぞ……僅かな形跡からすぐに調べあげてくる」


「それなら大丈夫だ! 俺の代わりに死んだ奴が全部被ってくれたからな……迷惑はかけないから頼む」


「そう言う事なら解ったが……金は払えるのか?」


「ああっ、特殊詐欺で儲けた奴らから霞めとったのがある……大丈夫だ」


「なら、問題は無い……ソックリに変えてやる」


此奴は金を積めばなんでもやる。


そして腕は確かだ。


だが、果たして身内に通用するのか……バレたら殺せば良い。


最悪孤児になれば……絶対に安全だ。


◆◆◆


ちっ、顔が痛い。


「しかし、随分と顏が腫れるものなんだな……」


「結構な手術だからな、暫くは包帯を巻いた状態だ」


「そうか……」


さてこのまま行くか、それとも顏が治るまで待つか……


省吾には母親は居ない。


父親はいるようだが、基本家族には無関心の仕事人間。


洋子という中学生の妹が居るようだが、兄である省吾を嫌い、ごみの様に扱っており、口もきかない。


これなら戻っても問題ないだろう。


しかも、省吾は引き篭もりで基本は部屋からはトイレと腹をすかせた時しか出ない。


充分だな。


この中学生の妹も省吾は嫌っている。


バレたら復讐相手の一人として始末すれば良い。


俺はヒラヒラと手を振り、闇医者を去った。


◆◆◆


泉家と書かれた表札。


此処が、泉省吾の家、これから俺が住む家だ。


車は年式は少し古そうだが、ベンツが止まっている。


家は普通より少し大きい位の家。


省吾の話では4LDKで2階部分に俺の部屋がある。


今の時間は11時。


妹の洋子も今は中学にいる時間。


だれも、居ない筈だ。


あらかじめ貰っていたカギでドアを開けた。


当たり前だがガチャリと音を立ててドアは開いた。


当たり前だ。


家族が居ない間に、家の中の間取りを調べた。


キッチンに入り、食器は何処にあるのか? 冷蔵庫の中身。


トイレ、風呂場、ダイニング……何処に何があるのか? 


妹の部屋に入り……情報収集。


これで大まかにこの家は把握した。


そして……最後に省吾の部屋に来た。


パソコンにテレビ、ベッドに本棚……高校生の一般的な男の子の部屋だ。


省吾の話では、虐めの証拠は机の中にあると聞いた。


省吾の日々の日記にボイスレコーダーでとった音声。


そしてパソコンのフォルダには写真もある。


『これだけあれば充分』


いや、無くても俺が有罪……そう決めたら終わりだ。


最初に復讐する相手は……


山上弘毅(やまがみこうき)と三上祥子(みかみしょうこ)この二人だ。


この二人が省吾の虐めの始まりとも言える相手だ。


山上家は地元の名家で地元の大企業、山上建設を経営している。


そんな山上家の跡取りである弘毅には同級生は元より教師すら忖度していて何をしても注意しない。


東青(とうせい)学園に父親が莫大な寄付をしているからという噂もある。


そんな弘毅の居るクラスの委員長に運悪くなってしまったのが祥子だった。


祥子は正義感が強く、弘毅にも、ものおじしないで注意していた。


その結果、祥子は弘毅の虐めの対象になってしまった。


幼馴染の省吾は仲の良い祥子を虐めから守るために弘毅相手に矢面に立ち守っていた。


省吾は普通には強かったから、どうにか祥子を弘毅から守っていたが……弘毅は此処で切り札をきってきた。


『お前が俺に逆らうなら祥子を攫って犯す』と。


省吾は一人……それに対して弘毅には仲間が沢山いる。


この状況で逆らう事は出来ず……そこから省吾はサンドバックになった。


此処までなら、まだありそうな話だが……


此処からが救われない話だ。


省吾がサンドバックにまで守った幼馴染の祥子は弘毅とつき合い、完全の弘毅の女となった。


そして……守っていた省吾を弘毅と一緒にイジメる側に回った。


まぁ、聞いた話と今ある証拠からそんな感じだ。


この二人は確実に地獄に落とさないとな……


特に祥子という女。


ガキっぽいがなかなかの女だ。


俺は女癖が悪い……此奴は是非とも頂かないとな。



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