ネコガミ

癒月

プロローグ 「全てのはじまり」

その日の午後。私は体調不良により、学校を早退していた。


普段であればこの様な突然の頭痛に襲われる事はまず無い。


理由も分からないまま、帰り道を歩いていると塀の上に白く、とても毛艶の良い猫が居る事に気が付いた。


なんとなくだが、その猫を見ていると頭痛が和らいだ気がした。


当然、“気がした”だけの為、頭痛は今も私を襲い平衡感覚を奪っていく。


それでも、なんとか持ち直し自宅へとたどり着いたまでは良かった。


良かった、のだが…



開け放たれた玄関のドアからしてくる異臭…これは間違いなく鉄の匂いだった。


つまりは、大量の血が家の中で充満している証拠。


頭痛も相まって、更に顔を歪めればリビングの方から物音が聞こえてきた。


ドアをゆっくりと開け、そこで絶句する。


真っ赤に染められた母が倒れており、その傍らには見知らぬ男性が母を恨めしそうに見ていたのだった。


その光景を見た瞬間、思考回路は乱れに乱れ、その場で腰を抜かす以外の選択肢など残されてはいなかった。


私の発した音に気付いた男性は振り返り、手にした包丁を私へ目掛けて振り下ろそうとした。


そして、そこで全てが暗転した。

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