【完結】イピトAIは仮想空間をイネーブルする~未確認AIに高校生活を乗っ取られたら、もふもふワンコが助けに来てくれました。なぜか美少女アサシンに好かれてます~
Episode32 エラーだらけのフルダイブ
Episode32 エラーだらけのフルダイブ
ノアは凍結される寸前に、アグリが
だが、おかしい。
『misora』空間の管理はシアンがしていた。
ノアではアグリをゲームに参加させることはできない。
そのことをアグリにぶつけるように聞いた。
もし最初からシアンとノアがグルなら、
答えは簡単だった。
アグリはシアンともノアとも協力関係にある。
アグリと最初にコンタクトを取ったのはブラウだった。ブラウはノアとシアンを、それぞれ別々にアグリと引き合わせたのだ。
今回『misora』にフルダイブする直前に、ブロウからメッセージが届きノアの知るところとなった。
ノアはアグリの行動の裏付けを取ってから、
「そうだ! いっくんと
アグリは
陽翔は不思議に思いその事を尋ねようとしたが、アグリの言葉でそれは遮られてしまった。
「
「
一瞬アグリは動きを止めた。
瞳に悲しみの色が映る。
アグリは
気になるが、聞いてはいけない事のように思えた。
アグリは、静かな、とても静かな声を出した。
「身柄は拘束するよ」
アグリは
外に出ると
アグリは振り返る。
僅かに顔を曇らせポケットから出したのは、モノトーンカラーの古びたテディベアだった。
✽✽✽
居なくなった理由は、はっきりとしない。
姿を消したことにより彼女も捜査対象になった。
キッチンとダイニングが中心にあり南側はリビング。
広めのベランダには、
東側が
この共用のリビングで、
三人でコーヒーやお茶を飲み、食事をして、これからの事を話し合った。そんな日も確かにここにあったのだ。
鍵は掛かっていない。
部屋は何の痕跡も無く片付けられていた。
髪の毛一本、指紋一つ、残っていないだろうと思うほどに。
寝袋も無くなったベッドサイドにテーブルがぽつんと置いてある。
(
最後は気まずくなってしまったが、
何を間違えた。
もう一度だけでいいから、顔を見て話がしたい。
階段を下りノアの住処であるスタジオの扉を開けた。
自然光が差し込まないように設計されているスタジオは、真っ暗で静まり返っている。
広い空間は濃紺の壁に囲まれ、なんの変哲もないグレーの床が敷き詰められている。
きらきら輝く青い海も、ノアの好きな星空も、そこにはもう存在しなかった。
がらんとしたスタジオの奥に、フルダイブ用のコックピットが六台並んでいる。一番奥のコックピットからココアが顔を出した。
「ココアと僕だけになっちゃったね。これからどうしようか?」
あの仮想空間で過ごした日々は、夢の世界の出来事のように全てが消え失せた。膝を付きココアを抱きしめる。ココアは大人しく
ノアは
頼り切っていた。心細さが襲ってくる。
シアンも敵では無く、何かの理由で一時的に
しかし、ノアは凍結され、シアンは得体のしれない物理教師の仲間となっている。ブラウも敵の手に渡っていた。
ICSPOが解決するのを待っている間、何もしないなんてできない。
「ココアもみんなに逢いたい?」
こげ茶の瞳をクリリとさせコテンと首を傾げる。
そう、それしかないのだ。
「ココアのおかげで少し元気になったよ」
✽✽✽
「なぜ、ハルが一緒じゃねーの? どうして俺だけ家に戻されんだよ」
書斎の机で仕事をしていた林健太郎は、ノックも無くドアを開けた息子の方向に椅子を回転させた。
家に戻されたことについて、何度も説明したが納得できないのだろう。
「
危ないというなら
狙われる確率は
「
「ちげーよ。俺が言っているのは、なんで迎えに行ってやらねーのかって事だよ」
「『李下に冠を正さず』だよ。こういう時は、疑われるような行動は控えるべきだ。警察からみたら我々だって容疑者だ。こういうことは
これ以上、話し合っても無駄だと分かった。
父親の言うことはわかる。
しかし、わかるのと納得できるのは違うのだ。
すぐに
✽✽✽
鈴菜の母親である鈴子を『misora』限定でフルダイブできるように修正したのだ。
倫理監査連との約束は、『閉鎖的領域(広域ネットワーク)での使用』だ。
『misora』はゲームとしてリリースされているわけではない。なので、約束違反にならない。
シアンが管理していたときは、使用済みの招待状のアドレスは二度と使用できないようになっていた。
しかし、
「
鈴子が不安そうにしている。
彼女は「misora」の事を良く知らない。
アシストは期待できないが、ダイブできればいいのだ。
幸いマッピングしていた地図も使用できるし、研究者ハルトの情報もそのまま使用できる。
「大丈夫です。問題ないですよ」
モンスターはやけにリアルになっているし、おどろおどろしい毒の沼や枯れた大木などがデザインを無視して配置されている。
「趣味悪いな」
思わず声に出して呟いた。
これから
また、ノアを自由にしてシステムを取り返す方法を相談したい。
そのためには前回の最終地点である、枯れたオアシスの国に行かなくてはならなかった。
---続く---
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