Episode17 晦冥ダンジョン
※
黒い扉には、≪ブラウを
白い扉には、≪ブラウと
陽翔は黒い扉を開ける。扉の先には漆黒の闇が広がっていた。
モニターのスイッチをオフにしたような暗闇に、道を間違えてるのかと不安になる。
どんなに不安を感じても、戻る気になれなかった。
足を一歩前に出すと床の感触が無い。
闇に吸い込まれてしまいそうで思わず足を戻した。
落とし穴があるのかもしれない。
どうしたら先に進めるのだろう。
耳を澄ますと静まり返った中に、微かに水の流れる音がした。
マーキング・スキルを水の気配に向けて発動する。
ぼんやりと染み出る水が暗闇に浮かび上がった。
壁のような垂直面から、岩清水が染み出している。
ぼんやりと発光する水に微かに照らされ、闇に浮き上がった段差をマーキングする。
ザラザラとして白っぽい石でできた、人工的な段差がくっきりと見えた。
階段の一部だ。
横幅は三十センチくらいしかなく、谷側は真っ暗な空間だった。
勘で当たりを付けながのマーキングする。
浮かび上がって来たのは、断崖絶壁のような石壁と幅の狭い階段。
落ちたらまず助からない真っ暗な谷。
振り返ると扉も消えていた。
背筋の凍るような恐怖が
思わず目を
それは初めて
幸せに笑う彼女が見たい。
「ノア。僕はこの道を前に進むよ。ついてきてくれる?」
「もちろん」
「―――危ない道を選ばせてしまってごめん。もう片方の道はもっと簡単だったかもしれないのに」
「
「そうか、そうだよね。だけど、僕は……」
いくら痛みが無いからと言っても、ノアが辛い思いをするのは嫌だ。
ノアは陽翔を安心させようと微笑む。
「オレがここから落ちたら、
「ノア」
「さぁ、
「うん」
コインは音も無く暗闇に吸い込まれる。
不気味な静けさの後、長い黒髪で顔が覆われた白い服のゴースト三体が、闇から浮かび上がってきた。
すさまじい冷気が二人を襲う。
鑑定を発動すると、レベル12のアンデッドゴーストだった。
「
学術書の上に金色の魔法陣が光り、激しい炎を纏った石の塊がアンデットゴースト二体に直撃した。
狙いが逸れた一体がノアに向かってくる。
体当たりをしてくるンデッドゴーストに向かってノアは手を広げた。
暗闇に薄氷色の魔法陣が浮かび上がり、氷の魔法が発動する。
「
接近したアンデッドゴーストに氷点下の冷気が襲う。
FPが三割ほど削れ、アンデッドゴーストは退いた。
遠隔攻撃を得意とする二人には接近戦は難しい。
近付く前に撃ち落さなければこちらが危ない。
また、谷側の
氷の魔法も効果が薄い。
「ノア、アンデットゴーストはなるべく魔法で遠くに弾いて。距離が取れてから僕が弓で攻撃する」
「了解!
氷の
アンデットゴーストが弾き飛ばされ、弓の射程範囲まで遠のく。
火炎属性の魔法が一番有効なようだ。
このダンジョンは、
モンスターは氷属性でノアの魔法は相殺されてしまうし、
底冷えするような闇の底深さに心が萎えるが、最初の一歩を踏み出すしかない。
✽✽✽
二人は全ての力を振り絞って、暗闇のダンジョンに挑んだ。
結果、惨敗し毎回真っ逆さまに奈落の底に落ちる。
その後、視覚が暗転し
またもや、
「ふが、ふがが、ふが」
「
ノアがレギュレーションパネルを操作するとクッションが縮む。
「ぎーーーーー、ぐるしい。壊す。この椅子、壊す!」
「それは、八つ当たりだな。Full Dive
「もう! この椅子に座んなきゃダメなの?」
「駄目じゃないが、UbfOSは試作品だから此処から潜るのがお勧めだ。万が一にも目覚めない時は生命維持装置に切り替わる」
「目覚めないとか、やばいヤツじゃん」
言い訳するわけではないが、ところどころ石壁を触っただけで壁が崩れたり、階段の蹴飛ばしやすいところに小石が転がってたりする。
これでも頑張っているのだ。
だが、暗闇に落ちた石の質量とアンデッドゴーストの数が比例していて、先に進めば進むほど小石の数が増える。
神経を使って石を蹴らないように進むと、闇の先に明かりが漏れている扉が見えた。
そのゴール直前という場所に、アメフトボールくらいの大きさの石が階段を塞いでいるのだ。
卵の形をしていて不安定で、踏むことも跨ぐこともできない。
しかも、ちょっと触るだけでころがって下に落ちる。
これを落とすと、次の瞬間に闇の底からゴーストの群れが現れ、視界がすべて塞がれてペタペタとジットリして気色悪いゴーストに、息つく間もなく攻撃された。
頑張って踏ん張るが、
落下の途中で気絶し、覚醒すると低反発クッションに挟まれているという訳だ。
「はぁー、攻略ブックがほしい」
「無いな!
「えぇーーー、誰のためにぃ?」
冗談はさておき、このままでは絶対に先に進めない。
諦めて白い扉を選べという事かもしれない。
無理ゲーの予感がしてきた。
---続く---
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