今は、もう何も聴こえない・・・♫♩♪♫♫♩♫♩♩♩~
綺麗な風景写真が撮りたい
第1話 もう聴こえないメロディー
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かつてこの町では17時になると、防災無線のスピーカーから試験放送「童謡・赤とんぼ」のメロディーが流れていた。
でも今は、もう何も聴こえない・・・
覇権主義を主張し、領土拡大を聖戦だと正当化して自国民を洗脳、他国に侵攻を続ける×国の狂った国家元首が、禁断の終末兵器を起動させるスイッチを押してしまったのだ。
禁断の終末兵器・科学文明破壊兵器である『EMP核爆弾』を搭載した軍事人工衛星は、冷戦時代の遺物として、高度1000kmの衛星周回軌道に放置されたまま、長い間忘れ去られていた。
宇宙軍の管理データ上では、冷戦終結時に人工衛星の大量廃棄処分の一環で大気圏に再突入させ、消滅したことになっているのだから、忘れられていて当然である。
普通の人工衛星であれば、とうの昔に機能停止している所だが、プルトニウムの原子核崩壊の際に発する熱を利用した原子力電池を搭載した軍事人工衛星は、今も稼働状態を維持していた。
しかも、この稼働情報と機動スイッチは、国家元首とその側近にだけ、密かに引き継がれていた。
EMP核爆弾は、高高度核爆発をさせ、強力な電磁パルス(EMP)を攻撃手段として利用し、広範囲での電力インフラや通信、情報機器の機能停止・破壊を狙うものとして、冷戦時代に密かに設計・製造され、軍事人工衛星に組み込まれて打ち上げられていた。
電子機器の基盤を破壊し、家電やコンピューター、スマートホン、自動車などを使用不能にすることができる、禁断の終末兵器・科学文明破壊兵器として、成層圏よりも高高度の電離層で使用することを前提に開発されため、迎撃ミサイルでの迎撃も出来ない。
科学兵器が多用される現代戦において非常に効果的であり、爆弾そのものは人体に少ししか影響しないという非殺傷兵器として、インフラのみを破壊する。
そんな『EMP核爆弾』が、N国〇〇町上空100kmで爆発した。
上空には2つ目の太陽のような眩しい光、そして極めて強力な電磁パルス(EMP)攻撃を町全体が受けた。
そして、一瞬に電子機器の基盤が破壊され、電子部品を搭載したあらゆる機械・機器が作動せず沈黙した。
ほぼ全ての文明の利器を奪われたN国〇〇町は、完全に機能停止してしまった。
本来なら防災無線での緊急放送がされるのだが、放送機器の電子部品が破壊されてしまったので、沈黙したままだ。
通信・情報が全て遮断されたため、〇〇町の周辺の市町村の状況も全く把握できないし、災害救助の要請すらも中々できない。
民度の高いN国民でなければ、暴動が発生していたところだが、〇〇町の町民は、自衛隊の救援が来るのをじっと耐えて待っていた。
電子部品を搭載していないクラシックカーが唯一動いたので、所有者に無理なお願いをして借用し、町の職員たちが防災用品、保存食や保存水等を町民に配布して回っていたが、町民たちは理路整然と列を作って受け取っている。
そろそろ17時だが、何時もなら防災無線から流れてくるメロディーは、もう聴こえない・・・
今は、もう何も聴こえない・・・♫♩♪♫♫♩♫♩♩♩~ 綺麗な風景写真が撮りたい @ALICE1961
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