最近の読書感想文の宿題はプロットを提出するらしい

マイヨ

最近の読書感想文の宿題はプロットを提出するらしい

 小説の世界ではキャッキャウフフな女の子が登場するラブコメを書いていますが、現実世界では小学生2人の子供がいるお父さんのマイヨです。


 この週末は、サザエさんの波平が、夏休みの宿題をまだ終わらせていないカツオを叱りつけつつ、夜なべをして手伝うという、夏休み終わりの恒例回みたいなことを実際にやりました。



「あ~、これアニメで見た奴だ!」



 じゃないんだわ、息子よ!


 実際にやると、ただただしんどいんだわ! こんな経験、お父さんはしとうなかった!



 そして、夏休みの宿題で厄介な奴と言えばそう、読書感想文ですね。


 とはいえ、小説投稿サイト界隈にいる人たちは、読書も文章を書くのも好きだったって人が多そうだから、あまり苦労しなかったんですかね? ちなみに私は、読書感想文は大の苦手でした。


 書けばただのあらすじでしかなく、ちょっとでも字数を稼ぐために漢字をひらがなにして怒られ、冒頭に必ず主人公の名前について『カッコよくていかにも主人公っぽい名前だと思いました』と書き出す毎年恒例の定型文に、成果物をチェックする親を脱力させていました。

(こういう、せこい字数稼ぎの手法は思いつく嫌なガキでした)


 そんな作文嫌いだった奴が、今では自発的に小説を書いてるんだから、人生って分からないものですね。

 なお、私は親には自分が小説を書いていることを伝えていません。


 さて、お父さんの昔話はこれくらいにして、メインテーマである、現代を生きる息子の読書感想文についてです。


 読書感想文の宿題と聞いて、当然のように400字詰め原稿用紙に書いた完成原稿を提出するものと思っていたのですが、実際は違いました。


 読書感想文の設計図、小説で言えばまさにプロットと呼べるような物を書いて提出するのが、夏休みの宿題でした。

 なお、このプロットをもとに原稿用紙に実際に書くのは、夏休み明けの授業で行うそうです。


 では、読書感想文のプロットとは何ぞや? という事ですが、以下の通りの設問がプリントに並んでいて、それに答えていくとプロットが完成するという運びです。

 下に、設問と、私個人が考えた設問の意図や考察も載せておきました。


1 『この本を選んだきっかけは何ですか?』


  感想文を書く際の導入部分になりますね。

  表紙絵が格好良かったからとか、軽い動機の方がむしろ後々の結論への盛り上がりを生むギャップになるかと思います。


2 『この本のあらすじを短く書いてください』


  欄は小さいので、できるだけ短くまとめる必要があります。

  要約する能力って、社会でも結構つかう機会の多いスキルですよね。



3 『印象に残った部分の一言感想を書いてください』


 これは3つ欄があり、作中のキャラたちの印象深い行動や意思決定がどういった内容で、それを読んだ自分はどう思ったのか、それに関連した自分の実体験はないか、という風に掘り下げていきます。

 必ず3つ必要という訳ではないようですが、1つの感想で全文を書ききるのは文字数的に足りなくなるでしょうし、逆に多すぎると文章にした時に書ききれなくなりそうですから、論点の数を絞るという意味でも、3つがいいんでしょうね。



4 まとめ

 3つの一言感想をまとめた物語全体の印象や、主人公への最終的な想いを描きます。

 ここで、1のこの本を選んだきっかけが軽い動機であれば、『いざ読んでみたら思いもよらない感動に打ち震えた』、『社会問題として真剣に考えなくてはという気付きを与えられた』的な、しめくくりを強調する働きをしてくれますね。



 これが現代の読書感想文の宿題です。


 どうです、皆さん。

 自分たちの時とは全然違いますよね。


 ちなみにお父さんが小説を書く時は、プロットって頭の中で捏ねてるだけなんだ……。

 だから、こんなしっかりしたプロットはお父さんも書いたことがないよ。


 すげぇな今の子は。




 しかし、この読書感想文のプロットを書いて提出させるというのは良いですね。

 ただやみくもに原稿用紙を埋めるのに四苦八苦するより、結構な利点があります。


〇利点1

 『読書感想文の設計書があれば、誰でも解りやすい論の展開ができる』


 最初に、この本を選んだきっかけと、あらすじを書くことで、その本を読んだことのない人にも内容を伝える事ができます。

 そうすれば、その後の感想や個別のエピソードトークが頭に入りやすい文章になる。


 これは云わば作文の型です。


 そして、この型は読書感想文だけに止まらず、社会に出た時に色んな機会で応用が利きますね。

 企画書やメール一つとっても、解りやすい論の構成にするだけで、自分の思いや考えを相手に伝えられます。


 型なんて、子供の独創性を妨げるなんて意見もあるでしょうが、まずは基本を知るのは大事なことです。

 それに、独創性の強い奴は多少押さえつけた方が、その反発で、むしろ爆発した時のエネルギーがデカいんですよ。



〇利点2

 『ちゃんと自分の書いた読書感想文になる』


「親に直された読書感想文出したら、賞もらっちゃった~」

「受賞した作品が、実はネットに上がっていた模範例のパクリであることが発覚して騒ぎになった」


 あるあるな話ですね。


 その点、家庭で親が手を出せる部分はあくまでプロットまでに限定し、実際に原稿用紙に作文を書くのは学校の授業で教師の目の前でという形式を取れば、これらのリスクはかなり小さくできます。



〇利点3

 『自分にも文章が書けるという自信につながる』


 私は子供の頃、とにかく作文が嫌いでした。

 なぜ嫌いかって言うと、



 『あ、今、自分が書いてる文章ってクソだな』って、自分で解ってたからなんですね。



 書き終わってから一応、最初から自分の作文を読み返してみるんですが、書いた本人も眉をしかめるような駄文です。


 で、クチャクチャの原稿用紙を見て思うわけです。



 『私って本当、文章書くのが苦手だよな』と。



 違うんだ!


 お前の作文がクチャクチャなのは、単に作文の書き方を教わってこなかったからなんだよ!

 いや、単に当時の私が授業を聞いてなかっただけかもしれないけど、少なくとも読書感想文のプロットを書けなんて課題は無かった!


 教えろよ! まずは基本を!


 一体、何人の文才が読書感想文でつぶれたと思ってるんだ! 国は謝罪しろ!





 ふぅ~、ちょっと興奮しちゃった。


 さて、最後にまとめです。



 教育って結構、進歩してるんだねというのを、子供の宿題の変化を通して感じました。

 たまにはやるじゃねぇか文部科学省!(肩パンしながら)


 『自分の頃にこれがあれば良かったのにな~』とも思いますが、まぁそれは言いっこなしですよね。


 教育だって学問。

 数多の実験によって成り立っているのですから。


 せめて、私たち過去の遺物の犠牲により、今の子供たちには正しい教育が施されんことを、一人の大人として切に願います。



 格好良く締めたところで、これで終わり……。



 と、ここでふと疑問が一つ湧きました。


 仮にこの作文教育を受けた子たちが、小説を書きだしたら一体どうなるんでしょう? ちょっと想像してみましょう。



 論の構成がしっかりしている小説は、今更レクチャーなど受けなくとも書ける。

 プロットは当然のように作成し、複雑に編み上げる奴も珍しくない。

 アマチュア小説全体のレベルが上がり、読みにくい小説は、それだけで不合格! 落選! 読者ゼロ!


 恐るべき子供たち……。

 淘汰される旧世代の作者たち……。






 ……チッ!


文部科学省め、余計な事しやがって!(肩パンしながら)


【おわり】

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