ゲーム世界に転生した俺は自由に生きる

@yyotyo

第1話

 薄暗い部屋に一人の男がいた。その男の周りには、二つの死体と手足を縛られ、ガムテープで口を塞がれている男が転がっていた。


 うぅぅう───


 手足を縛られている男が必死に何かを喋ろうとしているが、ガムテープが邪魔をして呻き声しか出せていない。それに気づいた、もう一人の男が、転がっている男に近づく。


 「どしたん?」


 声を掛けられた男の瞳には、恐怖や絶望そして、怒りが宿っていた。


 「あっ、これじゃあ、喋れないね」


 口に貼られたガムテープを、男が剥がず。


 「ハァハァ、貴様!!何故、妻と娘を殺した!!」


 縛られている男が叫ぶ。一方で、叫ばれた男は何事もなかったように答える。


 「ん?殺した理由?そんなの簡単だよ。ただ、俺が殺したかったから。殺しが俺の趣味だから」


 「はっ?ただの趣味だと、、、そんなもののために何故、妻達が殺されないといけないんだ!!」


 「五月蝿いな〜、別にどうでもいいだろ理由なんて。もう少ししたら、殺そうと思ってたけど、もういいわ」


 そう言い、男は手に持っていた包丁を、身動きの取れない男の心臓目掛けて、振り下ろした。


 「あっぁう、よ、くも゙…」


 男は最後の言葉を残し、永遠の眠りについた。


 「フフッ、楽しかった。さて、ゲームの続きしよ」


 男は何事もなかったように、ソファーに座り、ゲームを再開した。


 「はぁ〜俺もこのゲームの世界に生まれたらな───」


 突如男が倒れた。最初は、苦しそうにうずくまっていたが、次第に動かなくなってきた。


 この日、200人以上を殺害し、世間をざわつかせた、18歳の殺人鬼、火村優介ひむらゆうすけが死亡した瞬間であった。



────────

───


(うぅっ、たしか、急に胸が痛くなって)


 俺は目を開け、周りを確認しようとする。そこには、奇妙な光景が広がっていた。身長180cmはあった俺を軽々しく抱きかかえる女に、メイド服を着た3人の女。それに、体をうまく動かせない。


 ゆっくりと、周りを見渡す。そこで、俺はあるものを見た。姿見に映る赤ちゃんだ。俺はゆっくりと腕を上げる。すると、姿見に映った赤ちゃんも腕を上げた。なるほど、これは…転生したのか。それを理解した俺の口角は、ゆっくりと上っていった。


 あぁ、この世界なら思う存分殺しができる気がする。前の世界では、ただの一般人だったから、人殺しも限界があった。だが、今の俺の体内からは、不思議な力を感じる。この力を使えば我慢しなくて済む。あぁ、俺はなんて幸せなんだ。


 



この世界に、死神が生まれ落ちた瞬間であった─────

 

 


 


 

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