第2話 *

仕事を終えて、更衣室で私服に着替えていると、先輩の飯島さんが声をかけてきた。


「環ちゃん、暇だよね?」

「そんな決めつけるみたいに言わないでくださいよ」

「ごめん、ごめん。でも何も予定ないでしょ?」

「ないです」

「ご飯奢ってあげる」

「嬉しいですけど、何か裏がありますよね?」

「やだ! 善意よ、善意!」

「前もそう言って、合コンに連れて行きましたよね?」

「そうだったっけぇ? 記憶になーい」

「そうなんですね」

「何?」

「行きません」

「そこに座っててくれるだけでいいの! なーんにも話さなくていい! 何なら話しかけられても無視でいい! だからお願い! ね? 今日は全部、奢りだから」

「奢りって……どことなんですか?」

「お医者さんとそのお友達。4対4なんだけど、来る予定だった子が熱出して急に来れなくなったのよ。それで人数が足らなくなったの」

「4対3でいいんじゃないですか?」

「ダメよぉ」

「だったら他の人を誘ったらいいのに。彼氏欲しい子いると思いますよ?」

「環ちゃんがいいの!」



飯島さんは、美人で、優しくて、尊敬する先輩で、わたしの過去を知っても態度が変わらないでいてくれる人。


そんな飯島さんに笑顔でじっと見つめられて、渋々了承した。


「本当に話しませんよ?」

「ずっと食べてるだけでいいから!」

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