第14話:噂をすれば澪。

俺は桃を連れてまた街に出た。

最近は、桃も大家に可愛がられて以前と違って家に閉じこもってることも少なく

なっていた。


シモは相変わらず桃目当てで俺のマンションに遊びに来ていた。

だからシモと澪が来る時は桃には近所のカフェに行ってもらっていた。


そんなだから必然的にシモは澪とも顔を会わす時もある訳で女好きのシモは

澪にまで鼻の下を伸ばしていた。

澪のことは以前にも俺と澪がデートしてる時会ってるからシモはよく知ってる。


「おまえいいな・・・澪ちゃん相変わらず綺麗だわ・・・あんなべっぴんが

彼女でいいよな・・・」

「めっちゃナイスバディーじゃん」


「なんだよ、澪のことが気になるのか?」


今がいい機会だと思って俺は桃のことをバラした。


「あのな・・・いい機会だからバラすけど・・・桃が俺の妹ってのはウソだ」

「いいか、桃は俺の妹じゃないんだ・・・」


「なに、言ってんの?」


「事実を言ってるだけ」


「なんだよ・・・それまじか?・・・え〜・・・つまんねえの」

「なんでそんなウソついたんだよ」


「いや〜澪とのことがあったから桃が俺の彼女だって言えなかったんだよ」

「なんだそれ・・・おまえそれ浮気じゃないかよ」

「二股かけやがって」


シモはブツブツ文句言って帰って行った。

これでスッキリした、こうなったらシモはもう桃目当てで来なくなるだろ。

もしシモのクチから桃のことが澪にバレても今更俺はどうでもよくなっていた。


もう来ないと思っていたシモから意外なお願いが・・・。


「あのさ、おまえ桃ちゃんと澪ちゃん二股かけるつもりか?」


「いや・・・そんなつもりはないよ」

「正直、今の俺は桃に気持ちが傾いてる・・・澪とはたぶん長くないと

思う」

「別れるなら澪のほうだろうな・・・澪がなんて言うか分かんないけど」


「あのさ・・・もしそうなったら俺が澪ちゃんもらっていいか?」

「澪はモノじゃないんだぞ・・・だけど別れたら澪が誰と付き合おうと澪の自由

だからな・・・」


「俺はどっちかって言うと以前から澪ちゃんがタイプだったんだ」


俺はめちゃ打算的になっていた。

シモが澪を持って行ってくれたら、これ以上ないない展開。

やっぱり俺は汚い人間だ・・・だけどどうしようもない時だってあるんだ。


いくら考えたってしょうがない、俺は否定するように首を横に振った。


さて街に出た俺と桃。


「あのね・・・大輔とのデートはとっても楽しいんだけどぉ、こう言う時って

あのスーパーで会った下屋敷さん?みたいに誰か大輔の知り合いに偶然

会ったりするんだわよね」


「ああ、それはあるな・・・なんでこんなところでってやつな」

「今日、火曜日だわ・・・澪さんに会ったりして・・・」


「まさか、それはないだろ」


って呑気にそんなことを言ってたら噂をすれば影ってよく言うよね・・・

まさにそれだったね。

俺と桃が買い物を終えてアパートに向かってる時、背中越しに女の声がした。


「大ちゃん?」


まさかと思って振り向くと・・・まさかの澪だった。


「あは、やっぱり大ちゃんだった・・・」


「澪・・・ここで何してるんだ?」


「今日は美容室お休みだからね・・・でお買い物・・・それより大ちゃん

こそ・・・しかも女ずれで・・・」


「横にいる子、どう見たって男子じゃないよね」

「それともたまたま、同じ方向に歩いてた他人同士?」


「あの・・・これには、深い事情があってさ・・・」


「それってルール違反じゃないの?」

「私だけって信じてたのに・・・大ちゃんってそんなことする人だっけ?」


「ちゃんと話そうと・・・」


​澪は俺の言葉を無視した。


「あなた、お名前は?」


「私「タルンドル・もも」って言うだわ」


「だわ?・・・あんた何人?」


「未来人だわ」


「ふ〜ん、未来人の桃ちゃん」

「あなた、大ちゃんとどういう関係?」


「あの・・・お知り合いだわ」


「はあ〜?・・・ただのお知り合いってわけ?」


「だから、説明させてくれないか?」


「立ち話もなんだから、その先のカフェでゆっくり聞きましょ」


で、俺たちはカフェに入った。


つづく。



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