第19話 共鳴者 ①
『対象者との信頼度が一定数値に達しました』
『対象者:白河祈との共鳴が可能になりました』
突如として出現したそのメッセージに、俺は気を取られていた。
どうやら俺の保有スキルである〈共鳴〉の発動条件『両者の信頼度が一定数値に達した場合のみ使用可』が達成されたらしい。
このタイミングでというのは想定外だったが……正直悪くないタイミングだ。
「佐伯さん? どうかしたんですか?」
不思議そうな顔で俺を覗き込む祈。
その澄んだ瞳に見つめられ、俺は思わず口元を緩める。
「実は、ちょっと嬉しい誤算があってな」
そう切り出した俺は、今の出来事について話すことにした。
今朝、互いのステータスを確認した時点で、俺が〈共鳴〉というスキルを保有していること自体は祈も把握しているため、そこを捕捉していく形で説明していく。
一通り伝え終えた後、俺は改めて内容をまとめる。
「――つまり〈共鳴〉っていうのは、両者の信頼度が一定以上になると発動できるスキルで、俺とパートナーのステータスを恒常的に上昇させたり、特殊な効果を得られたりするんだ」
「……そんな凄いスキルがあるんですね」
目を丸くする祈。
〈共鳴〉はレア度だけで考えれば、〈調律〉以上のランクを誇る。
そんな反応になるのも尤もだろう。
新鮮な祈りの反応を見ながら、俺は説明を続ける。
「それでだな、追加で頼みたいことがあるんだが……祈がその共鳴対象になってくれないか?」
「……え? い、いいんですか? 今の説明だと、共鳴できる人数には制限があるとのことですが、そんな貴重な枠を私が使ってしまっても……」
「もちろん。次のボス戦の仕組み上、持てるスキルは全て活用したいっていうのは本音だ。でもな……」
言葉を切り、俺は真剣な眼差しで祈を見つめる。
「今まで何度も言ってきた通り、俺は祈の可能性を信じている。そんな祈が、共鳴を通じて俺の仲間に……正式なパーティーになってくれたら嬉しい」
「――っ!」
俺の言葉に、祈の瞳が驚きに見開かれる。
だが、その表情はすぐに柔らかな微笑みへと変わっていく。
「佐伯さん……その、こちらこそ、こんな私でよければ、ぜひお願いします!」
精一杯の気持ちを込めて頷く祈。
その言葉に、俺も心から嬉しさが溢れ出てくるのを感じていた。
「……ありがとう、祈。これからもよろしく頼む」
「はい!」
互いの思いを確かめ合うように微笑み合った後、俺たちは実際に〈共鳴〉を使うことにした。
まずは互いに手を合わせる。
そのまま俺が念じると、それぞれの前にシステムウィンドウが現れた。
『佐伯奏多と白河祈の〈共鳴〉を発動します』
『同意しますか? YES/NO』
示される選択肢。
俺と祈は顔を合わせ、同時に口を開いた。
「「YES」」
すると、俺と祈の体がふわりと温かな光に包まれる。
その直後、今回はウィンドウではなくシステム音が鳴り響いた。
『〈共鳴〉の発動に成功しました。発動者と共鳴者の全ステータスがそれぞれ15%上昇します』
『派生スキル〈思念伝達〉を獲得しました』
――――――――――――――――――――
〈
・対象者と、魂の共鳴を行うことができる。
(両者の信頼度が一定数値に達した場合のみ使用可)
・共鳴者との間にパスが生まれ、両者のステータスが15%上昇する。
(上昇率はスキルレベルと、共鳴者の人数によって変動)
・現在の共鳴者数:1/1
・共鳴者:白河祈
――――――――――――――――――――
〈
・共鳴者と思考を伝え合うためのスキル。
一定範囲内であれば、パスを通じて会話することが可能。
※〈共鳴〉の派生スキル
――――――――――――――――――――
「よし、成功だな」
得られた結果を見て、俺は力強く頷く。
無条件での全ステータス15%上昇は言うまでも無く破格の性能だし、〈
「すごいです……その、体中から力が湧き上がってくると言いますか……」
隣では祈が、驚きながら自分の両手を見つめていた。
〈波長乱し〉や〈波動励起〉を覚えた彼女だが、自分自身にバフをかけられた経験はないとのこと。
新鮮な感覚に戸惑っているといったところだろう。
何はともあれ、これで準備はOK。
俺は改めて祈に感謝の言葉と、これからの意気込みを伝える。
「これで、俺たちはより強くなれる。次のボス戦も一緒に乗り越えよう!」
「は、はい! 私、精一杯頑張ります!」
こうして祈は、俺の一人目の
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