第8章: 生徒会長への再挑戦

1. 生徒会長選挙への再挑戦


高校2年生の春、悠斗は再び生徒会長選挙に挑戦する決意を固めた。1年生のときに書記兼会計として生徒会活動に携わり、多くのことを学んだ彼は、次こそ自分がリーダーシップを発揮し、学校全体をより良くしたいという強い思いを抱いていた。前回は会長や副会長の役職にはつけなかったが、その経験が悠斗に自信と成長をもたらしていた。


選挙に向けての準備は、前回以上に念入りに行った。悠斗は自分のビジョンを明確にし、選挙公約を考える中で「生徒が自由に署名運動を行い、自分たちの意見を学校に反映できる仕組みを作る」という具体的なアイデアを掲げた。この公約は、学生一人ひとりが自分の意見を持ち、それを実現する力を育むための取り組みであり、学校全体における生徒の自主性と影響力を高めることを目的としていた。


選挙期間中、悠斗はクラスメイトや他の学年の生徒たちに積極的に働きかけ、自分の公約やビジョンを伝えた。ポスターを掲示し、廊下や教室で生徒と直接話をする機会を増やし、彼らの意見を聞くことにも努めた。特に、「署名運動によって生徒の声を直接学校に届ける」というアイデアは、多くの生徒に共感を呼んだ。生徒たちの中には、「自分たちももっと学校を良くするために貢献できるかもしれない」という希望を持つ者も増えていった。


しかし、選挙結果は悠斗の期待とは異なり、生徒会長の座は同じ2年生の女子に譲ることになった。彼女は生徒たちの人気が高く、温かく親しみやすい性格で、多くの支持を集めていた。一方で、悠斗も多くの支持を受けた結果、副会長に選ばれることとなった。


2. 副会長としての役割と挑戦


副会長に就任した悠斗は、会長となった同級生を支える役割を担うことになった。新しい会長は、優れたリーダーシップを持ちながらも、生徒会活動の経験が浅く、特に実務的な部分でのサポートが必要だった。悠斗はその点で、彼女を支えながら生徒会を運営していく重要な役割を果たすことになった。


生徒会の活動が本格的に始まると、会長と副会長の二人三脚の体制で多くの仕事をこなしていくこととなった。特に、悠斗は生徒会の方針や計画の立案において、彼女をサポートする役割を積極的に果たしていた。彼は書記兼会計としての経験を生かし、予算の管理や資料の作成、会議の進行など、実務的な面でのリーダーシップを発揮した。


最初は、会長が緊張して仕事を進める様子が見られ、悠斗はその都度、彼女をサポートするためにアドバイスをしたり、一部の仕事を分担して引き受けたりした。例えば、生徒会の定例会議では、彼女が議事進行に戸惑った際に、悠斗が自然な流れで会話を引き継ぎ、会議をスムーズに進行させることができた。また、会長が行事の計画や実施に不安を感じたときも、悠斗は具体的な手順やスケジュールの立て方をアドバイスし、共に準備を進めることで彼女の不安を軽減させた。


会長と副会長の関係は次第に信頼を深めていき、二人の協力のもとで生徒会は円滑に運営されていくようになった。悠斗は、リーダーシップを発揮するだけでなく、他者を支える役割を果たすことで、再び自分自身の成長を感じることができた。


3. 山城先生との再会と評価


そんなある日、悠斗は学校の健康診断で、小児科医の山城先生と再び会う機会を得た。山城先生は、以前から悠斗の体調を見守り、場面緘黙症と向き合う彼を支えてくれていた存在だった。健康診断の合間に、山城先生は悠斗と二人きりの時間を取り、彼の近況について話を聞いた。


悠斗が生徒会副会長に選ばれたことを伝えると、山城先生は少し驚きながらも微笑んで「悠斗くん、こんなに変わるなんて思わなかったよ」と感心した様子を見せた。


山城先生は、以前から悠斗の急激な変化に少し心配を抱いていた。場面緘黙症を克服した後、彼が急に多くのことに挑戦し始めたことに対し、無理をして心が折れてしまうのではないかと懸念していたのだ。しかし、悠斗が順調に成長し続けている姿を見て、その懸念は次第に解消されていった。


山城先生は、悠斗の成長ぶりを目の当たりにし、「こんなに変わる子は初めて見たよ」と驚嘆した。そして、「悠斗くんは、他の同じような症状を持つ子どもたちの希望の光だよ」と続けた。悠斗はその言葉を聞いて、自分の努力が周りに影響を与えていることを改めて実感し、さらなる自信を得た。


この言葉は、悠斗にとって大きな励みとなった。彼は自分がただ自分のためだけでなく、他の人々にも希望を与える存在になっていると感じた。それが、彼をさらに前向きにさせ、生徒会での活動や弓道部での取り組みに一層の力を注ぐ原動力となった。


4. 新たな挑戦とさらなる成長


副会長としての日々が続く中で、悠斗は次第に学校生活が以前よりも充実していることを感じ始めた。生徒会での活動は忙しかったが、学校全体をより良くするための仕事にやりがいを感じ、他の役員や先生たちとの連携もうまくいっていた。また、弓道部での練習も引き続き続けており、精神的な強さと集中力がますます鍛えられていった。


悠斗は、周囲の期待や自分へのプレッシャーをうまく乗り越え、心の中に安定感を持ちながら日々を過ごしていた。彼の成長は、自分自身だけでなく、周りの人々にも影響を与えるものとなっていった。そして、その過程で、彼は以前とは異なる新しい自分を発見し続けていた。


悠斗はこれからも、挑戦し続けることを決意し、さらに高い目標を目指して前進していくのだった。

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