今日はこんにちは

多奈加らんぷ

一章 これまで

山田小太郎①

 僕は今日世界を救う。時刻は2024年12月31日19時43分である。

 窓を開ける。冷たい空気が一気に部屋を支配した。顔に容赦なく吹き込む風は、もはや冷たいというより痛い。結露で濡れた手が風を受け急速に冷えていった。僕は家の前に溢れかえった何百人もの群衆にそっと微笑みかけた。人々の熱狂は凄まじく、口々に何か叫んでいる。先日までのクリスマスの活気でさえ、これほどではなかった。息を深く吸う。冷えた空気が肺を満たす。嗚呼、世界が僕に優しくなくて良かった。優しかったらきっと何も言えていない。

 「それでは向かいましょう。世界を救いに。」

 

 僕は今日、死ぬ。



       【山田小太郎】



 2003年6月6日。とある掲示板で未来人が現れた。自らをU.Uと名乗り、2100年から未来を変えるためにやってきたという。彼は語った。

《2100年では戦争により地球に住めなくなってしまった。そして、戦争で重要になる取引がこの時代にあるのだ。私はその取引を止めるためにきた。》

 それはご立派なことだが、何故掲示板で書き込みをしたのだろう。しなくても良いだろう。そんなこんなでインターネットに降り立った彼は一部界隈にて持て囃され、質問をするものは後を立たなかった。彼は詳細を語れば世界を歪めてしまう可能性があると前置き、今後の未来を予言した。歪めてしまう可能性があるのなら、戦争で重要になる取引を止める行為も、それをインターネットの大海に晒すのも如何なものかと思う。兎に角、以下がU.Uの予言である。


 ⚫︎2005年、2010年、2015年それぞれ大きな災害があり、起こる場所は「あ」から始まる。

 ⚫︎2006年1月あの国民的番組が終わる。

 ⚫︎2013年8月あの人が暗殺される。

 ⚫︎2017年「ご」から始まる国が大変


 そしてもう一つ、これが僕の人生を狂わせた。


 ⚫︎2024年から2025年になるとき、世界に危機が訪れる。そしてこの問題を解決するのは「山田小太郎」である。


 これらの予言は全て、2003年6月6日の書き込みである。


 





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