おさかなの髪飾り

北川 悠

 プロローグ

      


 何回もシミュレーションを繰り返した。

 条件が合わず何度も、決行を断念した。

 やっと今夜、全ての条件がそろった。

 もう先には伸ばせない。

 賽は投げられたのだ。

 うまくいくだろうか? 

 問題はタイミングだ。

 タイミング……こればかりはシミュレーション通りにいくとはかぎらない。

 運を天に任せるしかない。

 もし、失敗したら?

 それはそれで構わない。

 死のうが捕まろうが、そんなことはどうでもいい。

 守られるべき者が守られるのなら、なんだってする。

 たとえそれが人殺しでも。

 覚悟はできている。

 後悔はない。

 この時を待っていた。

 ずっとこの時を待っていたのだ。

 眼鏡を掛け、マスクをして帽子をかぶる。

 再度ポケットの中を確かめる。

 心臓の鼓動が早くなり、手から脂汗が噴出してくる。

 落ち着くんだ。

 そう、落ち着くんだ。

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