幸せになりたいだけなのに

ハルノ

第1話

島を出たのは、父が他界した時だった。元々島で生まれ育った父のもとへ嫁いだ母は、私を連れ実家に戻ることにしたのだ。母は泣いている私を連れて、フェリーに乗り込むとしっかりしなさいと言った。本土に着き、すぐに車で実家へと走らせた。母が握るハンドルは手汗で濡れていて、手も酷く震えていたのをよく覚えている。


私が中学3年生の夏、父は1人で漁に出て戻らなかった。船の上で倒れていたのを仲間の船が見つけてくれたおかげで家には戻ってこれた、冷たい身体だけになって。


父は脳梗塞で、どうやら声も出さずに亡くなったらしい。事件との関与はなく、警察はそそくさと帰って行った。



そうしてまもなく、母の家に引っ越した私は本土の中学を卒業し、東京の高校に入学した。


高校1年生、まだ何もわからない私はすでに『余所者』扱いを受けていた。島から来た、見知らぬ芋女と。


水泳の授業で、初めていじめにあった。それはもう、強烈なものだった。

少人数クラスが普通な島ではそんなことが起こらないように徹底して狭い人間関係で生きていた。


東京は、違った。


水中で溺れかけた私を体育担当の教師が救助したことに対して、クラスメイトの女子たちは良く思わなかったらしい。


教師は、容姿が整っていた。




そんなことでいじめが起こってしまう。

心配なんて感情はないのだ。

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