第19話呪怪展開事件から翌日

ナラクは喫茶店アーセナルにいた。

この事件を引き起こした根源がナラクの指環だと知れ渡った。すると指環を求める連中がやって来る。だが領域にすら入れない連中で溢れそれを収める気にもなれずアーセナルに裏ルートから逃げ込んで来た。

ナラクはそこで事務作業に取り組んでいた。もちろんサンドイッチを食べつつ。

そんなナラクを見ながらハヤネはご満悦♡その理由はナラクは今までこのアーセナルには食事をするか精霊鉱の屑を買いに来るぐらいでここに仕事を持ち込まなかった。だが今日、ナラクはこのアーセナルで仕事をしている。それだけでハヤネのテンションは上がっている!しかも他にお客がいない。つまり存分にナラクを見ていられる。それに「ナラク、コーヒーはどうする?」夫婦感も味わえる。それはナラクを独占していると言っても過言ではない!

ナラクにとっては他に行き場が無い訳ではない。ただ何かを要求されるのを知っているから初めてここに仕事を持ち込んだ。苦渋の決断だったのだが仕事がサクサク進むのに内心驚いていた。

「コーヒーですか?はい、頂きます」

この調子なら思っていた以上に早く終わりそうなのをナラクは「こんなに捗るなら事務作業はこれからここでしようかな」本音がポロリ。

その発言にキネルは堪らず「勘弁してくれ。お前なら他の場所でも良いだろ?」訴える。

ナラクは作業しながら「そんなに嫌がる理由は何ですか?」問う。そこにハヤネも「お父さんの言葉なんて聞く必要なんてないから仕事に集中して」甘い声。

ハヤネのお父さんであるキネルは何とも言えない表情。そこから出て来る言葉は「俺は嫌がってる訳ではねぇ。ただ娘の好意が無駄になるのが見てられねぇだけだ」娘の心配だった。

それに娘が反応。

「何が無駄なのよ?お父さん」「よく考えて見ろ。ここでナラクが仕事しているからと言ってお前の評価は上がらないんだぞ」「何を言ってるの?」「こんなに明白なのに何でそんな寝言みたいな発言出来るな。お前はただ利用されてるだけだぞ」「お父さん知ってる?ナラクは興味の無い人の所には行かない。つまり私に少なからず興味があるのよ」

キネルは黙り込む。それを言われると何も言えない。ナラクがハヤネを嫁にもらってくれればこんな不毛な会話をしなくて済む。だがナラクにはその気が無い。キネルにとってこれが一番の問題!キネルはナラクに問いかける。

「ナラク!お前は嫁を取る気があるのか?」

ナラクは事務作業をしながら

「前にも言ったの忘れたんですか?今は恋人や愛人にだってなりませんよ。ここに来る度にそれ言いますよね。何かの呪いにでも掛かってるんですか?」意味不明な心配をする。キネルは渾身の言葉!

「娘の幸せな将来を願うのが呪いだって言うのか?答えろ!」

ナラクは首を傾げつつ作業は止めずに「他の人では駄目何ですか?」素直な疑問。そこにハヤネが割って入る。

「私がお父さんにナラクとしか結婚しないって言ってるからでしょ。そうでしょお父さん?」

「そうだよ!俺なら違う良い男を紹介する度にお前はその縁談を蹴り飛ばすだろ。もう少しナラクに冷徹な目で視ろ。どう考えても報われないだろ!」「そんな心配してたんだ。大丈夫。ちゃんと報われるから」「何で自信満々で言えるんだ?その根拠を教えろ?」キネルの悲痛な声にハヤネは「仕方ないお父さん」と言って「そんなに知りたいの?」煽る。キネルは「そんなの知りたいに決まってんだろ!」

焦燥のキネル。平常心のナラク。そしてハヤネは自分が描いている将来像をバラす。

「お父さんはまずナラクの可能性を測れていない。ナラクはこの前こう言ってた。師匠を確実に倒せるようになったらって。私そう言われてから考えたの。それは師匠を越えたら結婚を考えても良いかなって、違うナラク?」

ナラクは聞きながら作業をしながら「ああそう考えるんですね」思考を巡らす。

ハヤネは「どうなの、ナラク?」気が逸る。

ナラクは事務作業をしたまま「明日は明日の俺に任せるので明日の俺に訊いてください」言い逃れをする。

それにはキネルもボルテージが上がる!

「ナラク!それは駄目だぞ。今答えろ!」

ハヤネも「そうよ、私達の将来をどう考えてるの?」追撃。ナラクは笑う。普通の答えではただの言い訳になる。そう察し言葉を見繕う。そこで思い出す。

「今言えるのは結婚は考えてない。ですがどんな形でもいいなら一つ可能性があります。重婚です」「待て!何だその答えは!?」キネルはその言葉に怒りを剥き出しにする!結婚について訊いていたのに何故重婚なんて言葉が出て来るのか普通に頭にくる。だがハヤネは違った。

「成程、その手は思いつかなかった。うん、それで良いなら私はいいわよ」

ハヤネは何度も頷き何度も納得していた。

キネルは怒りの行き場を失う。ハヤネが何をそんなに納得しているのか、頭が馬鹿になったのではと心配にすらなる。堪らずハヤネに問う。

「良いのかそれで?あいつは何人の女と結婚するって言ってるんだぞ。そもそも重婚はこの帝国五都では許されていないはずだ」「ナラクお父さんはこう言ってるけど?」

ハヤネは甘い声でナラクに問う。

「今の所は無理です。但し師匠に勝てたら変わるはずです」

ハヤネは首を傾げ、キネルは告げる!

「いいかナラク。それは不可能だ!前にも言っただろ、あのバケモノに勝てる訳が無い。なのにお前は何故勝てる気でいる?」

ナラクは首を傾げて「その前提が可笑しいんですよ。俺は師匠に勝つ気でいるんですから。というか帝国五都の法律が追加されて重婚はある程度の所まで行き着いたら申請が通れば出来ますよ。知らないんですか?」不思議がる!

キネルは当然としてハヤネも「嘘!」と声を上げる。その勢いのままハヤネは「なら今すぐ結婚しましょ!」ナラクに抱きつこうとする。ナラクは魔力展開でハヤネの動きを止める。

ナラクは戸惑った顔をしているキネルに声を掛ける。

「どうしたんですかキネルさん?まさかそういう情報は入って来ないんですか?一時期話題になりましたよ。すぐに皆、熱が冷めたみたいですが」「それマジなのか?煙に巻こうとしてねぇよな。というかそんな話題、聞き覚えがないぞ。本当に本当なんだろうな?」「だったら今調べてみたらいいでしょ。俺はいちいち嘘をつきませんよ」

キネルはすぐに自身のネットワークで調べてみると「本当に本当じゃねぇか。いや待て、この条件はほとんどの奴が無理だろ。何でまたこの法律が出来たんだ?」条件が意味不明。

ハヤネはその条件が知りたい。

「その条件をナラクはクリアしてるの?」

キネルはいまだに意味不明状態になっているがその問いには答えられるが

「ナラクでも無理だな。というかこの条件は何なんだナラク?」まだ飲み込めない。

ナラクはその条件の説明を始める。

「条件はたった一つ。それは四色の誰かに実力を認めさせる。それだけ」

ハヤネも意味不明状態になる。

四色自体に会おうとする時点で超難関なのにその存在に認めさせるなんて不可能に近い。

「そもそもそれで重婚してる人っているんですか?」ハヤネは早口だった。それだけ余裕が無い。 ナラクは涼やかに「いますよ二人」問題発言。

キネルは「どこのどいつだ?」意味不明状態は続いているが和らいでいる。ナラクは「翠卿クラスの二人ですよ」あっさり挙げる。

その答えにハヤネが反応。

「他の最高機関にはいないんですか?」「いません。他はハーレムなら作りますが重婚はしませんから」「重婚をする必要が無いからですか?」「重婚が許されても結婚自体に興味が無いからでしょ」

ハヤネは考え込む。キネルはハーレムに反応。

「ナラク、ハーレムなんて簡単に作れるもんじゃねぇぞ」「俺に半ギレされても現状は変わりませんよ」

「待って!」

ハヤネはグダグダな意味不明状態から立ち直っていた。「つまりナラクが翠卿に勝てば重婚が認められる。もしそうなら私の問題は解決するからもういいわ」キネルはナラクに訊く。

「そうなのか?」「もし勝って申請すれば出来るんでしょうね」「なら良し!」

キネルは右手でグッドと親指を立てる。

逆にナラクは不安になり「俺は師匠みたいに重婚しませんよ」今の気持ちをはっきりさせる。

ハヤネは「人の気持ちなんて状況次第で変わるもの。だからナラクは翠卿に勝てるようになれば良いのよ。その後はまだ知らない人達と手を組んで重婚しようって言わせるから!」

ナラクは丁度事務作業が終わり、ハヤネ以外に迫ってきそう女性達を思い浮かべて「まあいいか」呟いた。








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