第0話

 そうして楕円形の中で何分か足をばたつかせていたでしょうか。時折後ろから、「ねえママ! あの男子平面を飛んでるよ~」なんか声が聞こえるので、テツたちはうまく進めていないようです。

「お~い」こりどうが視界に入ってきました。「海の中みたいに潜るんや~」


         *


 すいっ すいすいっ


 ゼリー状なのか、楕円形の入り口から何メートルか進むと、ゲームのように上下も移動できるようになりました。

「不思議な感覚……」テツが言いました。不思議と腕は疲れていません。

「あれ世界が見えたよ」一見何もない平凡な世界でした。「どこへ来たのかな?」


 そこは――起眞市の近くのどこかでした。

 

      *


 ――そのとき、ある高校で――


「先生! 日本本土へ行かせてください」

 背の高い少年が白髪の先生を見ていた。彼の名はまだない。ネコの分身だからだ。「沼津平成の中で、僕が登場するのいまんとここれしかないからね~」

 実は著者のネーミング力不足で、なんかいうなよタケノコ正三。

「立派な名前だな」

(しめしめ。こりどうの偽名である佐久間正三と美味しい秋の味覚を何とか組み合わせてみただけなんだけどな)

「変なこと思ってない?」

 沼津平成のすまし顔。演技力が皆無のため、すぐにタケノコにばれてしまったが、タケノコはこの名前を気に入っているらしいので、沼津平成は安堵した。

「タケノコくんか。……まあいいよ」

 実はこの猫、学生でもないのだが。保健室かどっかから汚れたときようの制服を拝借してきたようだ。



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