マベちゃんと私 (親ばか日記)

こばやし あき

1. ニチベイって死んだよね?

「ニチベイって死んだよね?」

 髪を私に乾かされている娘、マベちゃんがテレビを見ながら言った言葉。


 え、日米関係が死んだってこと?

「……死んでないと、思いたい」

 ドライヤーでブオーっと髪を乾かす私。

「って、ニチベイってなんのこと?」


「テレビでさっきニチベイって言った」


 娘の向こうのテレビを見ると『日米プロパガンダ戦』の文字と人の映像。


「え、ニチベイって、ゴンベイさんとか、人の名前だと思った?」


「うんっ」

 こくりとうなずき、髪を引っ張られるマベちゃん。


「そっか。でもこのニチベイは日本とアメリカってことなんだよ~」

 にこにこしながら、色々突っ込みたいのを我慢する私。


「そっかー」

 にこにこしてテレビに戻る娘。


 ニチベイさん間違いは可愛い‼

 可愛いけれども! けれども、なぜいつも殺してかかる⁉

「今生きている?」って聞くなら分かるけれども、何故いつも「死んだよね?」と確認の形できくのか⁉


 某ドリフスターの時も、某有名解説者の時も。

 ご存命ですから‼ 失礼ですから‼


 ……まあ私も、トーベ・ヤンソンさんのこと、まだご存命の時に勝手に亡くなっていると思っていたので、人のことを言えたんもんじゃないんですが……。


「今度から、そういう時は『今生きている?』って訊こうかー」

 ツッコミ欲を抑え、できるだけ穏やかに言おうとする私。多分できている。


「うんっ」

 うなずくマベちゃん。素直で可愛い。


 ガンッ!

「痛い~!」


 ドライヤーがマベちゃんの頭に当たったのは、決してお母さんがツッコミたかったからではないですよ。

 マベちゃんがうなずいた頭をもとに戻して、勝手に当たりにきたのですよ。


 でも少しすっとしたことは、内緒です。

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