016 感動の再会と思いきや
「……も、モーノ?それにペッロ?どうしてここに!?」
「おいおい。そこは感動の再会らしく”モーノ!会いたかった!”って来るもんだろ?」
「いやいや。そこは”ペッロ!無事だったか!?”だろ!」
忽ち二人でに喧嘩を始めるモーノとペッロの仲介に入るループス。目の前のループスに二人が何処か焦り気味なのは深い訳があるけれど。
「グレイシャ……出来ればこれまでの経由を教えてくれないか?」
レオの要求通り、これまで起こった全てを嘘偽りなく伝える。
始まりは、とある廃坑の一角。巨体な魔物を無双しまくっていたループスとグレイシャの元に、人間らしき声が聞こえた。
その声やループスお得意の嗅覚で順々と辿っていくと、そこにはモーノとペッロが互いの足を踏み躙りながら怒声を上げていた。
「おめぇがノロマだから俺が巻き沿いを喰らってるんだよ‼」
「今更何言ってんだ‼道に迷った原因は、ペッロが道端に転がり落ちてた骨に釣られたからだろーが‼」
「あァ?やんのかオラ?!」
「受けて立つわボケェ‼」
「喧嘩は止めなさいと何万回も言ったでしょう!?」
最終的に怒声を打ち消したのは、微かに瞳が怒りで揺らいでいるループスだった。
突然のループスの登場に慌てた二人は、狼を前にした子羊のように静まり返ってしまった。
「こ、コイツが悪いんだ!俺は何もしちゃいない!」
「いいや先輩!コイツが………」
「あんた達の喧嘩内容とか心底どうでもいいわ。俺が巻き沿いを喰らった?何度も言うけど、巻き込まれてる真の被害者はこちら側だから」
「「ひぃっ……」」
「ごめんなさいね。今回一番被害を受けているのはグレイシャだもの。こいつらにはこの後しっかりと説教を……」
こちらに笑い掛けるループスさんだが、目が笑っていない。いいやこれは笑みと言っていいものなのかどうかも妖しいが。
ご愁傷様、二人共。私には君たちを狼から救い出す術は持ち合わせていないよ。
………ざっと言えばこんな感じで仲間を見つけ出すことが出来た。
まあレオを見つけ出す事を最優先としたループスは、仕方がなく二人とのお話を後回しにしたものの、結局はこの後ループスが待ち受けている事には変わりないだろうけれど。
「また喧嘩を起こしたのか。いつもはこんな感じだが、こいつらも戦闘に入れば人が変わったように真面目なるんだ。今回の件については見逃してやってくれ」
「元々癪に障った訳でもないので心配は不要ですよ。……ですがこちらから一つ、提案したいことがあるのですが」
「……提案だって?なんだそりゃあ」
「この女については何も知らんが、まあ聞いてやってもいいぞ!」
すると即座にキリッと二人を睨みつけるループス。俺のせいじゃないと言いたげな顔を浮かべ、二人は静かになった。
………あれ?モーノは何もやって無いのに怒られてる?
色々と巻き沿いを喰らっているモーノに同情を向ける。
「あなた方は探検者の
私の一言一言を興味深そうに耳を傾ける四人。その期待に溢れた瞳を見つめ、再び口を動かす。
「今回の調査で魔物が現れる事が分かりました。そこで、あなた方に定期的に生態系の調査や魔物の討伐を依頼したいのです。」
勿論、対価として衣食住の確保を致すと付け足し、胸を張って四人の反応を伺う。全員俯いている為、表情は全く読み取れない。
”許可”の一言だけを待ち、私はじっと四人を見つめる。
「その提案、喜んで承りますわ」
「だな!衣食住の確保は私達にとって最大の良点だしな!」
「俺も賛成だな。ペッロはどうだ?」
「……でもなぁ。それだけじゃ対価としちゃ足りないんじゃねぇかぁ?」
「ペッロ!何を言って……」
ペッロの言葉に焦るレオ。
確かに、衣食住の確保だけじゃ流石に対価としては低すぎたか。
「……そうですか。ならば貴方の望みは何でしょうか?」
「………そうだなぁ」
ペッロの、現在悪巧みをしていますとでも主張するような顔に、喉を鳴らす。
都市の占領とか言われた日には、この提案は破棄になるだろう。折角の仲間が出来るいうのに、どうしたら………。
「都市の中心に偉大なるペッロ様の像を建てろ!それならお前の提案を許可してやってもいいぜ?」
「……え?」
自身の口から素っ頓狂な声が出たのが分かった。だがこれを言われて驚かない事などないだろう。
都市の占領とかに怯えていた反面、持ち出された対価が”俺の像を建てろ”?
いやいや。驚かすにも程がある。
「え、っと。構いませんけれど……」
「よっしゃ来た!ならこの提案は許可!早速お前の都市に俺の像を建てるぞー!これで皆から”英雄”って呼んでもらえる……!」
「……はぁ。良いんですかグレイシャさん?こんなくだらない要望なんぞ叶えなくても私達はその提案を承りますけれど」
「いいんですよ。やはり望ましい国造りは多少の苦労が付き物ですから」
まるで太陽を埋め込んだかのように瞳を輝かせるペッロを見つめ、少しの笑みを溢した。
そうか。初めてペッロに会った時は誰かに似ているなと思ったけれど、ソーラの事だったのか。
緩んだ頬を手で抑え、じっと目を瞑る。
「そういえばグレイシャ。世界にはまだ多くの冒険者が存在する。これからの事を考えて、冒険者ギルドのようなものを建設するのはどうかな?」
「冒険者ギルド……どういうものなのですか?」
「うーん……ざっと言えば他国との境界線を無くす界隈みたいなものかな。同盟とそう変わりないさ」
「同盟……!」
そうか。その手があったか。別に同盟自体を結ばなくとも、こちらで造ってしまえばいいのか。
確かに他国と同盟を結んだとして、相手が正式な取引を行ってくれるかどうかは分からない。
……冒険者ギルド。それがこの都市を……氷河を灯す
――――この頃、ソーラも丁度同じ事を考えていた事はグレイシャが知る訳もなかった。
「あ、じゃあじゃあ冒険者ギルドの名前は俺が作るからな!えーっと、俺は英雄だから英雄ギルドなんてどうだ?」
「ほぼ変わってないじゃねえか。ていうか理由が”俺は英雄だから”って、子供の発想か!」
「まあ良いんじゃないですか?英雄ギルド。採用しましょう」
「よっしゃー‼じゃあこの後、俺の偉大さに釣り合うのか、お前の都市をお手並み拝見してやるぜ!」
「……えーっとその前に、二人にはループスさんが待っていますよ?」
「「………え?」」
突如きょとんとした顔を見せる二人に満面の笑みを浮かべるループス。勿論目は笑っていないけれども。
「さて、仲良くお話ししましょうか?」
「「……い、命だけはお助けをぉぉおお‼」」
そんな二人の様子にレオは面白可笑しそうにクスクスと笑う。悪魔の尻尾をはやしたようなレオの笑みに少し引きつるも、それに釣られ笑みを溢している私も大層変わりないかと実感する。
薄暗いはずの廃坑が、一瞬だけ輝いて見えたのは気のせいだったのかもしれない。
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