第15話 筋肉痛


………………

…………

……


 翌朝レンが目覚めると、昨日の草むしりが効いたのか全身の筋肉が痛み出していた。


「い、いてえ」

「どうした相棒?」

「筋肉が、筋肉がああああああっ!」

「筋肉がどしたのよ?」

「痛い……」

「筋肉痛?」

「そうみたいだ。これじゃ西門の草むしりができんぞ。くっ俺としたことが……寝る前のマッサージをサボったからかっ!」

「なんか、女子っぽいな相棒」

「なんとでも言ってくれ、ぐふっ」


 レンが再び床に倒れると、スラのんがその体に乗った。


「どこが痛いんだ相棒?」

「特に足だ」

「よしっ! 僕がマッサージをするよ」

「いいのかっ! スラのんっ! 助かるぜ」

「スラのん、いっきまーすっ!」


 ぽよよーん

 ぽよ

 ぽよよ

 ぽよぽよ

 ぽぽよ ぽよぽよ

 ぽにょーん もにゅもにゅ

 ぽぽん

 ぽっぽーん

 ぽにゅ


「どや」


 スラのんの渾身のマッサージが効いたのか、レンの目に輝きが戻ってきた。


「いいぞその調子だ! もっと頼む!」

「え? もう終わりだよ?」

「な、な~に~っ! せっかく気持ちよかったのによ」

「でもかなり治ったでしょ?」

「そうだな、ありがとうなスラのん」


 レンは陽が高く昇っているのを確認すると、今日は休もうとスラのんに提案した。

 スラのんは西門の草むしりに行きたがっていたが、レンの提案に今日は諦めた。


「相棒? 動ける?」

「あまり動けんな、」

「そか。じゃゆっくりしててよ。 あ、マジックポーチ借りるねーっ」


 レンが床に横たわるとスラのんは一人、外に出かけたのであった。




【ミッドラル王国 ギルド】


 スラのんは一人レンに内緒でギルドにやって来た。


「あら、スラのんさん今日はお一人ですか?」

「はい、そうです、ミアさん」

「草むしりのクエスト、ですか?」

「いえ違います。あそこの掲示板に張り紙があるじゃないですか。前に来た時から気になってまして」

「はい」

「そこに『ベッドを譲る』と書いてありますよね?」

「あ、はい。あれはAランク冒険者のアッシュさんが張った紙です。ベッドはギルドの倉庫にありますよ。持ち帰りますか?」

「お、お願いしますっ」


 ミアが倉庫へとスラのんを案内した。その途中でレンの筋肉痛の話になり、ベッドが必要な理由をミアは理解した。

 倉庫に着くとスラのんはベッドをマジックポーチに入れ込んだ。


「あ、可愛いマジックポーチですね」

「このお花のワンポイントがお気に入りなんです」

「いいですね。他に何か入っているんですか?」

「あかりちゃ、あ、シャイニングスライムのあかりちゃんってがいます。でも今は眠っています」

「シャイニングスライムは夜行性ですものね」

「そうなんです」

「他には何かありますか?」

「ドングリくらいです」

「え? ドングリが入っているんですか?」

「はい」

「さっきお教えしたアッシュさんがドングリを探していました。もし嫌じゃなければ差し上げたら良いのではと思うのですが」

「そうですね、お礼に差し上げようと思います」

「アッシュさんはそろそろクエストから帰る頃です。ギルドに戻りましょうか」

「はい」


 ミアとスラのんはギルドへと少し早歩きで戻っていった。



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