第12話 僕

 次の日、僕はレイがいる海へ向かった。

 レイはまだいない。いつも会うのは放課後だったから、こんな早い時間にいるはずがなかった。

 しかし、それでいいのだ。

 僕はレイの貝殻のペンダントを鞄から取り出す。


「僕を、人魚にしてください」


 願いを言いながら、僕は貝殻を開けた。

 その瞬間。

 僕はまばゆい光に包まれた。足が痺れる。とても痛い。

 僕はあまりの痛みに気を失った。


 目が覚めると、目の前にはレイがいた。


「……どうしたの。その、足……」


 レイは僕を見て戸惑っていた。

 僕は足を見てみる。するとそこには、足はなく、七色に光る尾鰭があった。僕は願い通り、人魚になっていたのだ。

 そこで僕は思い切って、レイに告げた。


「レイ、好きだ。だから、僕は人魚になったんだ」


「そんな……」


 レイはやはり戸惑っていた。しばらく沈黙が下りる。

 やがて、レイは口を開いた。


「ごめんなさい。私、今日は帰る。さようなら」


 レイはそう言ってさっと海へ潜ってしまった。

 取り残された僕は、呆然としていた。


「さようならってことは、僕は振られた、んだよな。……ああ、僕は人魚になってしまったのに」


 これからどうすれば良いのだろう。僕は途方に暮れて、レイが去っていった方向を見つめ続けた。


 海だというのに、遠くからケロケロと鳴くカエルの声がした。

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