無音の旋律は想いと共に
追求者
無音の旋律
ある日、20人の男女が目を覚ますと、見知らぬ場所に閉じ込められていた。彼らの耳には奇妙な装置が取り付けられており、外の音が一切聞こえない。
突然、部屋の中央にあるスクリーンが点灯し、謎の声が彼らの身に着ける装置から響く。「これから始まるゲームに勝ち残った者だけが生き残る。テーマは『聞こえない音』だ。」
参加者たちはパニックに陥るが、すぐにゲームのルールが説明される。彼らはそれぞれの部屋に分かれ、特定のメロディーを見つけ出す必要がある。しかし、時間内にメロディーを見つけられなければ、装置から致死量の”音”が流れ、命を失うことになる。
「ここはどこだ?どうしてこんなことに…」と、ユウタは震える声で言った。
「落ち着いて、まずは状況を把握しよう」と、リーダー格のアキラが冷静に答える。参加者同士は謎の装置を経由して会話ができるようだ。
「でも、どうやって聞こえないメロディーを見つけるの?」と、ミサキが不安そうに尋ねる。
「心の中で感じ取るしかないんだ。自分の内面と向き合うんだ」と、アキラは答えた。
幸いにも三人はお互いに面識があり、ほかの参加者と比べ、心にゆとりがあった。
参加者たちは次々と試練に挑むが、メロディーを見つけるのは容易ではない。ある者は成功し、ある者は失敗して命を落とす。
しばらくして、ユウタたちの番になった。三人は同じ部屋に誘導された。
「この部屋の壁はすべてレンガでできているように見えるが、一つだけ、中にスピーカーが埋め込まれている。それを見つけられたら、そのレンガを強く押せ。10分以内だ。」
先ほどの謎の声から三人に指示が下される。
「このメロディー、どこかで聞いたことがある気がする…」と、カオリは呟いた。
「それは君の過去の記憶だ。惑わされてはいけない。」と、アキラが励ます。
ユウタとアキラには何も聞こえていない。
「怖い」と、カオリは涙を浮かべながら言った。
「大丈夫、君は強い。」と、アキラは優しく言った。
「みんな、壁を触って、音を出すには振動を起こすしかない、もしスピーカーが埋め込まれているなら、そのレンガは少なからず動いているはずだ」
「「うん」」
こうして、三人はそのレンガを見つけ出した。
謎の声から再び指示が出て、三人が部屋を出て次の場所へ向かうと、そこにはすでに5人しか居なかった。
「次だ、迷路をクリアしてもらう。ただし、4番目よりも遅いものはもれなく死んでもらう。」謎の声は短く説明した。
すると、待合室の様だった部屋の壁が崩れ迷路の入り口が現れた。他の5人は半狂乱になって駆け出して行った。
三人は、頷き合うと右の壁に沿って進んでいった。
しばらく進むと、三人はモニターといくつかの扉のあるスペースにたどり着いた。モニターには短い赤い棒とオーケストラの映像が流れており、それぞれの扉には世界的に有な交響曲の曲名が書かれた看板がついていた。
「この映像から曲を割り出すということか。」アキラが苦い顔をしてつぶやく。
「「「…」」」三人は答えを出せないまま、時間が過ぎてゆく。
「指揮者の動きが大きくなってない?」赤い棒が画面の3/4ほど伸びたときに、ミサキが二人に尋ねる。
「確かに!打楽器の奏者も最初より強くたたいているように見える。」
「…そうか、答えは『ボレロ』か!」
三人の答えはまとまり、『ボレロ』と書かれた扉を開け進んでいく。
2分ほど迷路を進むと。開けたところに出る。全体が白を基調としており。清潔感があった。三人が部屋の真ん中まで進むと、迷路への道が閉ざされ。反対側にある扉が開いた。
「ゲームクリアおめでとう。君たちの勝ちだ。」
そういいながら、白衣を着た男が出てくる、表情はやつれていて、眉間には何重にも皺が折りたたまれている。
三人は謎の装置が既に音を遮断していないことに気付くと同時に、その男が謎の声の主…黒幕だと察した。
「安心してくれたまえ、死者は出していないさ。」三人が険しい表情だったため、男が弁明する。
「なぜこんなことをした。」アキラが怒りをあらわにして問う。
「逆に問う。君たちは音楽を聴いたことがあるかい?」
「ええ。この世界は、音にみちあふれていますよ。」ユウタが答える。
「そうか。しかし君が言っているのは聞いたことがあるというに過ぎないのじゃないかい?」
三人は彼の話したい意図がだんだんと分かってきた。
「本来、音楽というものは。
目で、
耳で、
心で、
聴いてこそのものなのである!しかし、インターネットの発達によって、手軽に曲を聴けるようになってしまった今、人々はそれを忘れてしまった。だからこそ、今回のゲームでは、耳以外の感覚で音楽を聴いてほしかったのだよ。」
三人ははっとした。
その後三人はこの出来事を広め、人々は音楽を再び聴き始めたのであった。
無音の旋律は想いと共に 追求者 @pursue
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