第8話 鉄拳のリリアン
大猫の子供ネフェを連れた一行は王都カーライルに向う途中にあるベルク侯爵の治める城下町に入った。
街に入るとクリス達に連れられてリアナ達は宿を得に行く、宿を得るとクリス達はリアナ達四人と一匹を置いてベルク侯爵の元へと挨拶に向かって行った。
ベルク侯爵は国王バイロンの信頼する諸侯の1人で魔物の多い領内で民をよく守りそしてアルテナーハ王国でも名のしれた生粋の武人だった。
そのベルク侯爵には三人の娘がいる。長女のセリスに次女のアシェリーそして妾との間に生まれた末娘リリアン。
ベルク侯爵の跡継ぎは長女のセリスで次女のアシェリーはバイロンの次男である第二王子のエイダンの元へ嫁いでいた。
妾との間に出来た末娘のリリアンには将来何処かの騎士にさせる事を考えていた。
「お父様、国王の近衛騎士達の方々がお見えになられています。」
「分かった、セリスよその騎士達を通しなさい。」
セリスに連れられてベルク侯爵の執務室にクリス達が入る。
「バイロン陛下の近衛騎士達か。この街に何用かな?」
「私はアルテナーハ近衛騎士団の騎士隊長でクリスと申します。バイロン陛下の御息女レティシア殿下を救った村の英雄達を王都の騎士見習いとして連れて行く途中、この街へ宿を得に来ましたのでベルク侯爵閣下の元へとご挨拶しに来た次第であります。」
「王都ヘ騎士見習いを連れてか、、、話は分かった。クリス殿。卿に一つ頼みたい事がある。」
「ハッ!私達に出来る事ならなんなりと。」
「私は末娘リリアンを何処かの騎士にと考えていた。我が娘も王都へ騎士見習いとして連れて行ってはくれまいか?バイロン陛下には私から書状を書こう。」
「承知しました、ベルク侯爵閣下。」
「誰か!リリアンを連れて参れ!」
ベルク侯爵の声が聞こえると衛兵の一人が執務室に入りリリアンの居所を伝える。
「閣下、リリアン様なら今日も街の見回りに行かれてます。」
「直ぐに連れて来るように!」
「ハハッ!」
ベルク侯爵の命を受けた衛兵はリリアンを探しに向かった。その頃リアナ達は初めてくる大きな街の中を見ようと宿屋から外に出ていた。
街の大通りには沢山の人々で賑わっている、市場では美味しそうなお菓子が売られていた。
「うまそうだな、アイリーンお前、金持ってないか?」
「カイル何で私にきくの??」
「お前、村長の孫娘だろ?あったらあのお菓子食いてえなと思ったんだよ。」
「私にもそんなにないわよ!そういえばアルフ、アンタ国王様からの褒美で大量の金貨貰ってなかった?」
「村のおばさんの馬と引き換えに全部わたしたよ。」
「アルフ!アンタあの大量の金貨と馬を交換したの?!」
「うん、お金より皆と一緒に行きたかったから。」
「もう、しょうがないわね。出すわよ!」
アイリーンの持つお金でお菓子を買った四人と一匹は大通りから少し離れた場所でお菓子を食べていた。
「ミャー!」
お菓子を欲しそうにしているネフェにリアナは昨日の料理の余りの鹿肉をあげると
ネフェは夢中で食べだす、そんな時後方から叫び声が聞こえた。
「強盗だ!!!」
後方から三人の男達がリアナ達の方へやってくる。
「邪魔だ!ガキどもっ!」
三人組はリアナ達を押しのけけて前方へと走り去ろうとした時、三人組の前には1人の異国の風貌をした少女が立っていた。
「どけっ!」
三人組の1人が少女にぶつかろうとした時、少女は逆に男に向かってタックルをした。
タックルされた男は思いっきり吹き飛ばされる。
「てめぇ!」
別の男は少女に剣を振り下ろす。その剣を少女は篭手を着けている左手の甲で真横にはらうと男のみぞおちに正拳突きを見舞った。
崩れ落ちた男を目にした最後の1人は短剣で少女を切ろうとするが懐に入った少女は男に背負投げをかけて投げ飛ばした。
悶絶する男達をそのままにして少女はリアナ達に近づいた。
「貴方達、大丈夫か?」
「はい、えーっと。」
「私、リリアンよ、貴方達、名は?」
「私はリアナです。」
「俺はカイルだ!よろしくな!」
「私はアイリーンよ。」
「アルフと言います。」
「四人とも、よろしくよ!この可愛い動物はなんて名前か?」
「ネフェよ。」
「よろしくよ!ネフェ」
「ニャー!」
「貴方達この街でみかけない、何処からきた?」
リリアンの質問に小さな村から騎士や魔術師になるために王都に向う途中でこの街に立ち寄ったことをリリアンに伝えた。
リリアンは初めて街を訪れたリアナ達に街の案内をすると申し出たが、リリアンの元に衛兵がやって来てベルク侯爵が呼んでいる事を伝えると衛兵は強盗の三人組を捕縛してリリアンを連れて城へ向かおうとした。
「また会えとるいい!皆、その時は案内するよ!」
「ありがとう。またね!リリアン!」
リアナ達はリリアンに別れの挨拶すると宿屋に戻る事にした。
リアナ達と別れたリリアンは衛兵達に連れられベルク侯爵とセリスの元へとやって来た。
「リリアン、お前は騎士見習いとして王都へ向かってもらおうと思う。」
「父様から離れられるなら願ったり叶ったりよ。」
「リリアン!!」
リリアンの返答にセリスが諌めるがリリアンは続けた。
「母様、最後まで苦労して逝ったよ!そのこと、私、忘れないよ!」
「、、、、、。」
「もう用はない?さよならよ父様!」
ベルク侯爵達の元から去ろうとしたリリアンにセリスが呼び止めるがベルク侯爵はセリスを止めてリリアンを行かせた。
「お父様、、、、。」
リリアンに言われた言葉にベルク侯爵は黙ったまましばらくその場に座っていた。
「あの子、ものすごい強さだったわね。」
「ああ、素手で武器を持ったやつらを倒しちまったもんな!」
「そうだね。僕びっくりした。」
「また会えるかな?」
宿屋のテーブルで食事をしていたリアナ達はリリアンについて話をしていた、少ししてクリスが戻ってくる。
「お前達、明日の朝早くに出発するぞ。食べたら部屋に行って休め。」
クリスの言葉に従いそれぞれの寝室へとむかう。リアナがベットに入るとネフェが顔の近くに寝転がりノドを鳴らしていた。ネフェの頭を撫でてリアナは眠りについた。
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