第3話

ガラガラと音をたてる磨りガラスの引き戸を壊れないように瀬波さんはそっと引いた。


「いらっしゃい、お二人さん」


優しそうなおばぁちゃんが、嬉しそうに僕を見ると薄ら笑みを浮かべてしわしくちゃな顔になった。


僕はおばぁちゃんと目が合うとペコッとお辞儀をする。


瀬波さん入口付近にあったロウソクとロウソク立てをもつと、こっちと奥の方へズカズカと進んでいき、僕に手招きをした。


僕は瀬波さんにつられて奥の方へ入っていった。


瀬波さんが、表紙に動物の絵がかかれた本を前の方に倒す。


すると、漫画やアニメのように地下室への扉が現れたのだ。


かこん


かこん


と石で作られている階段は静かな空気を揺らす。


「地下室で管理されてる本はね上にあったのと違うんだ。理由わかる?」

「えっと、地下にあるのは値段が高い本とかですかね」

「惜しいね、正解はその人が心の奥に隠している事が書かれた本は地下に保管されてるの」

「心の奥に隠している?ということは僕のお父さんの本は誰にも見られたくないのに書いたっていうことですか?意味がわからない、本は誰かに読まれるためにあるのに」

「書かないと生きていけないんだよ、書き続けなきゃ。だから人は無理やりにでも書かなきゃいけないの」


「わかんないよ」


僕がそう言うと、瀬波さんは微笑んだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る