第3話 妹ゲーム

「突然ですが、妹ゲームを開催しようと思います!」


 午後八時を過ぎ、風呂から上がった俺が部屋のベッドの上でマンガを読んでいると、優香が突然やって来た。


「妹ゲーム?」

「そう!私が考えたゲームなんだけど、春にぃなら楽しんでくれると思ってさ」

「今はマンガ読んでるから、また今度なー」

「参加してくれないと思って、罰ゲームを考えてきたんだ。——私が勝ったら、明日から私のことを『愛しの優香』って呼ぶこと。春にぃが勝ったら……私、春にぃのこと諦めるね…」

「俺のことを諦める…?よし、ルールを説明してくれ」


 悲しげな表情を浮かべながらそう言う優香の言葉に耳を疑ったが、そんなゲーム一つで俺のことを諦めてくれるんだったら、参加するしかないじゃないか。


「えっとね、ここに割り箸が5本あるよね?それを一本ずつ取っていくの」

「あぁ、それで?」

「……?ルールはそれだけだよ?春にぃが先に取っていいよ」


 こうして、意味もわからぬまま、俺と優香の闘いが始まった。


・ ・ ・


「ほら、最後の一本取ったぞ…」

「そう。春にぃの負けだね」

「……は?」


 突然、笑みを浮かべる優香。嫌な予感しかしてこない。


「あれ?説明してなかったっけ?最後の一本を取った人が負けだよ?」

「いや、説明されてないし、最初に一本取ったヤツが負けるの確定じゃないか!」

「でも、負けは負けだよ?認めなかったら、お母さんたちにバラすよ…?」

「ぐっ、それだけは……。分かったよ、俺の負けだ。これでいいだろ?」


 俺のこの言葉を聞くと、優香は『素直でよろしい♪』と言って鼻歌を歌いながら部屋から出て行った。


「——いつか優香から取り返さなきゃいけないんだよな…俺の秘蔵のエロ本…」


 そしてその翌日、罰ゲームであった通り、優香のことを『愛しの優香』と呼ぶと、『そう言ってくれるのは嬉しいけど、どうしたの急に…デレ期ってやつ?』と思いっきりドン引きされ、しまいには、両親にまで病気にかかったのじゃないかと心配された。


——やっぱりこいつ妹じゃなかったらブン殴ってたわ。

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